【コラムvol.26】
多くの経営者は、
成長より、
王国をめざす。

「ハッテンボールを、投げる。」vol.26  執筆/伊藤英紀


素直な耳をもち、
上司や先輩の助言を吸収して、
まっすぐがんばる社員。

中小企業のトップの多くは、
こんな人間が好きだ。
トップが描いた事業計画と
ブレイクダウンした個人目標の実現に、
邁進してくれるからだ。

会社がまっしろな新卒採用に
こだわる理由も、これだ。
新卒は比較的、素直でピュア、
疑う心や問題意識が少なく、
マネジメントしやすい。

会社にそんな人材が
必要なのは確かである。
トップが描いた成長スキームと
事業フレームの中で、
組織の雰囲気を守りながら
効率よく生産性を高めやすいのだから。

しかし、逆にいえば、
素直でウブな人材には、
そのスキームとフレーム自体に
変化を与え、想定外の発展形へと
躍進させることはさほど期待できない。

トップが願っていることが、
あくまでも既定路線の枠組みの
中における社員の成長であり、
推進力なのであるから、
当然といえば当然である。

会社も人間もおなじだが、
大きく成長したいと思えば、
想定のフレームを超えなければならない。
今のフレームやレベルで成長したとしても、
それは結局、背がちょっと伸びた、
といった類の増減の話である。

レベルが一段あがった成長とは、
『増減』ではなく、
規定のフレームや考え方の『変貌』である。

これは、会社だけではなく、
人間個人だっておなじだと思う。

人がぐんと伸びるときというのは、
今のがんばりの延長線上にあるのではない。

考えや価値観を新しく発見したり。
エネルギーを注ぐ
ポイントが変化したり。
会社の要求や視界を超えて
めざす高みが新たに獲得され、
予定調和を壊して
ギアチェンジしたときである。

素直でウブが取り柄の人材に、
そんな変貌を期待するのは、
おおむね過度だと言えるだろう。

そして、このようなことは
多くのトップは、内心でうすうすわかっている。

「大きな成長をめざす」と
言うかもしれないが、
じつは自分の描いたフレームは壊したくない。
決定した規定路線を守りながら、
“そこそこの成長”を手に入れたいのである。

多くの会社は、クチでいうほど、
成長を求めていないのだ。
自分が支配する王国に
ひびが入るような成長は、
いらないのである。

“そこそこできる扱いやすく思いやりある人材”と、
“発想力と実行力に秀でた扱いにくいはみだし者”。
どちらを採用したいかと問えば、
多くのトップにとって前者がホンネであろう。

変貌を遂げるような成長には、
規定のフレームを超える“はみだし力”を持つ、
扱いにくい人材の採用が
不可欠である。

しかし、多くのトップは、
そんな人材を本気では求めない。
自分が仕切る“自分の王国”を
壊したくないからだ。
社内に、いろんな意志を持つ
強い王をたくさん育てることが
トップの仕事だとは考えていない。

支配欲は、もちろん悪いことではない。
会社はガバナンスがなければ、
空中分解する。

しかしもし、トップが
『変貌』を求めているのであれば、
社員の“はみだし力”を排除する支配欲は
その性格を変えなければならない。

はみだそうとする社員たちに、
助言しながらやらせてみる。
強い王=ヒーローがたくさん誕生する。
そんな会社をつくるのだ、と規定する。
自分はそのダイナミズムを統率する、
いわば“王を育てる下支え王”になるのだ。
そんな支配欲へと変えるのである。

気分のいい自分の王国づくり、
を放棄するのである。
若いやり手が、
自分より求心力を高めてもよい、
と腹をくくるのである。

社長は、まだ、自社を知らない。
社長は、自社の魅力や可能性を、あんがい知らない。30年、中小企業を見てきて、つくづく思う。社長のお考え、事業の過去・現在・未来。伊藤英紀と若いのがパーティーを組み、ワイワイ質問したおす2時間半。会社丸ごと、棚おろしです。棚からボタモチのように、気づかなかった自社の魅力がドサリと手に。
ブランド・理念経営・事業戦略・組織強化のみなもとを、再発見・再定義するパーティーに、ぜひ。

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