【コラムvol.40】
明けない夜は、ある。

当時は、現在より規制がとても多く
社会主義的な世の中だったと言われるが、
それでも、資本主義による競争原理は
働いていて当然、貧富の差はあったのです。
あすへの希望、を見いだせるかという点では、
まだ社会は人口も増え上り坂で、
貧しい家庭は貧しいなりに
希望を抱けた社会ではあった、
ということでしょうね。

してみるに、
「一億総中流というアレは、
社会の現況を短く言い当てたものというより、
言ってみれば、人心を
”大差ないよ、ほぼ平等だよ”と
落ち着かせるための
スローガンみたいなものとして
機能していたんだろうな」と
今さらながら思われるのであった。

そして、
「あんたもウチも総中流なんだから、
あまり社会の暗部を見て批判するのは、
単なる不平不満分子だよ、大人げない。
全共闘世代のヒトビトみたいなかんじって、
なんでもかんでも政治意識がでちゃって
なんか気持ち悪いヤツらでしょ。」
という色メガネが、僕ら下の世代に
すりこまれたのではないか、と思うのである。

ふつうの市民が社会や政治を批評批判するのは、
曲がりなりにも近代先進国の一員として
至ってふつうであり、
近代国家だと自称するのであれば、
ふつうに必要なことだと思いますが、
今、空気を読まずに、言ってみたりすると、
僕のことを“あ、こいつ気持ち悪いヤツ”って
見ているな、という空気を
ひしひしと敏感に感じてしまうことがあり、
やっぱり僕も空気に支配される日本人だな、
と強く再認識させられる昨今です。

政治や社会を語るヤツは気持ち悪いヤツだ、
という空気の方程式は、
もしかしたら一億総中流社会というスローガンが
世の中にじわじわと浸透しだしたあたりから
始まったのかもしれない。
あれで、日本人は
『政治や社会問題は自分の人生に
直結しているのに、他人事』という、
ニブくて冷めた感性の坂道を
順調に転がりはじめたのかもしれない。
冷めて距離をとるほど、賢くカッコイイと。
これを書きながら、
僕にはなおさらそんな見方もあるな、
と思えてきました。

社会全体に発せられたスローガンを
細かく点検せずに、鵜呑みにしてしまうと、
そのスローガンの奥の方によろしくない
意味合いが滲んでいたとき、
社会意識はしらずしらずに、いずれ
そのよろしくない方向に変化し定着してしまう。
こういうのを、洗脳と呼ぶのだろうと思います。

誰かが誰かを洗脳するというより、
なんとなくみんなで鵜呑みにするから、
なんとなくみんなが一丸となって洗脳され、
お手手つないで洗脳された状況が空気となり、
その空気の縛りが、強い拘束力支配力を
持つ怪物に育ってしまい、
異論反論がものすごく言いづらい
統制状況を自らがつくりだし、
自らを苦しめてしまう。日本人の
近代化以降のパターンじゃないですかね。

「まあ、そうはいってもウチは
中流の類だからネ。まあ、幸せなんだよ」と、
日本中のお父さんお母さんが、
一億総中流という
スローガンみたいなものに依拠しつつ、
平凡な幸福のありがたさを、牛の胃のように
何度も反芻して味わい直したことだろう。
みんな、中流になってよかったね。
と社会の暗がりにフタをして、
家族でピクニックに出かけ
タコウインナーを食べたことだろう。

幸せなら、それでいいじゃないか。
という意見もあろうかと思うが、
僕はやっぱりこういうスローガン的なもんに、
洗脳されちゃうのはイヤです。
やっぱり不愉快で、気持ち悪いです。

一億総活躍社会。
ん?するとあれか、活躍というのは
人間の生産性うんぬん、というあれか。
僕の母親は78歳で病も抱えていて、
経済的な生産性とやらはないぞ。
僕の見守りも必要だから、
むしろ非生産性がバッチリ高いぞ。
総活躍から、先頭を切ってこぼれ落ちるぞ。
つまり、落伍者か。そうか、
このスローガンで、人に経済的優劣を
つけたいのか。確かに手のかかる母で、
僕も手に余って男のヒステリーを
起こすこともあるが、あなたに母の価値を
軽んずるようなことを言われる筋あいはない。

あなたはどなたですか。そうですか、
政権のみなさんですか。総理ですか。
また総理案件ですか。
そんなスローガンに納得しているのは誰ですか。
国民ですか。いや、国民の一部ですよ。
だって僕も国民ですから。僕は嫌いです。

社会は会社じゃないのに、
会社みたいに経済生産性で人をぶったぎるのは
あまりに愚昧じゃないですか。
12歳の中学生じゃないんだから、
転職できる会社と、脱けられない社会(国)の
性質の違いを無視し混同して、
国民から特定の国民を
村八分にするような愚昧が潜んだスローガンを
うかつにしろ確信犯にしろ、
国家の名のもとに発信するなんて悪質というか、
邪悪ではないですか。

敗戦後、ダグラス・マッカーサーに、
アメリカ上院の公聴会で、
「日本人の近代精神は未成熟で、12歳くらいだ」
と言い放たれてしまいましたが、
あれから70余年経ち、いろいろ近代精神を
学んだはずなのに、1歳も進歩していないなんて、
あまりに残念無念すぎます。

一億総活躍社会。
もしこのスローガンに違和感を覚えることなく、
大脳の皮質からじわじわと潜む毒を
浸潤させていってしまうとしたら、
私たちは5年後10年後どんなダメージを受け、
いったいどんな人間になるのだろうか。

明けない夜はない、
とスローガンみたいに言いますけど、
ありますよね。明けない夜。
人間の寿命や死ぬ年度はそれぞれです。
仮に20年暗い時代が続いたとしたら、
その20年の間に死んだ人は、
夜明けを見ることなく、
闇の中で死んだことになります。


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中小企業に、発展のきっかけを投げかけたい。だから、ハッテンボールです
【ハッテンボール・グループ 代表取締役 伊藤英紀】
企業表現コンサル/コピーライター 1961年生
広告学校と大学をダブルスクール。㈱リクルートで、バイトなのに制作チーフを務めたのち、同社契約コピーライターに。1990年 前身 伊藤英紀事務所を創業。※元ワイキューブ取締役
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