【コラムvol.43】
業種業界という『蜃気楼』

「ハッテンボールを、投げる。」vol.43  執筆/伊藤英紀


昔、『ギョーカイの人々』、
という言い回しがあった。

同じ産業や商売で働く人々を
カテゴリーとしてくくり、
各ギョーカイ独特の服装や生活スタイル、
行動や思考法のクセや生態などを、
おもしろおかしくエグリ出すための言葉だ。

わかりやすい例を挙げると、
不動産といえばワイルドで稼ぎがいい。
羽振りよく豪勢に、夜のネオン街へと繰り出す。
そんなステレオタイプな性格づけです。

しかし時代を経て、
これらのカテゴライズの輪郭は、
どんどん瓦解しています。

だいたいが、『サラリーマン』という
巨大ギョーカイというかカテゴリーからして、
副業が認められるなど、
いまでは『自営業者』との線引きが
ドロドロと溶け始めていて、
サラリーマン自体の顔つきや価値観、
収入も相当にバラつき始めている。

ここ20年のGDP伸び率が
ずっと1%という無成長経済の中で、
伸びている会社、
停滞している会社の格差も
バラつきが露わになり、
日本の“経済ギョーカイ(産業界)”は豊かだ、
というカテゴライズからして、
神話の終焉を迎えているのが
不都合な現実ではないですか。

認めたくない不都合な現実だから、
日本スゴイ!とちょっとみっともない合唱で
覆い隠そうとするのかもしれません。

あ、話がそれました。

金融がフィンTECHに、
農業がアグリTECHに、
教育がエドTECHに変貌しつつあるように、
不動産も不動産TECHへと
地殻の変動を起こしている。

“ワイルドで夜のネオン街な
不動産ギョーカイの人々”という大づかみは、
あまりに古ぼけていて無効です。

人工知能時代の入り口に立ったいま、
いっくら“産業”という街並みを
“業種業界”という壁で仕切って、
わかりやすく区画整理しようとしても、
足元の地下では、すべての業種業界が
デジタル情報産業化・AI化の水脈によって
縦横無尽につながっているのだから、
そのような“くくり”は
どんどん曖昧模糊とした『蜃気楼』
のようなものになりつつあると思います。

取引き先の老舗の百貨店グループも、
いまでは不動産・施設開発スキーム、
金融スキーム、ビッグデータ活用スキーム
などを有機的に噛み合わせることで、
“業種業界”という
エリアとバリヤを突破して、
ワイドな領域で新しいビジネスを
次々と生み出しています。

教育サービスにまで乗り出し、もはや
『小売り百貨店グループ』というカテゴライズは、
不正確で現実理解に役立ちません。
むしろ、理解を妨げることもあります。

組織は、同質の“ギョーカイ人”で
構成されてなどいないのです。
小売り流通のプロもいるが、
不動産開発・施設プロデュースのプロもいるし、
金融のエキスパート、マーケティングや
データ解析活用のスペシャリストもいる。

それぞれ気風も生い立ちも違うプロが、
各業界で磨いてきた技術をコアにしつつも、
業種業界を突破し、
業種定義のしにくいフィールドに
集まって協働している。

学問でいう『学際的』に
ちょっと似ているかもしれません。
プロとしての専門域だけではなく、
隣接する領域も理解することで、
新しくやりたいことの全体を俯瞰でき、
結果、噛み合わせと連動を
促進していくことができる。

僕はコピーライターという職種が出発点なので、
業界属性としては、
“広告ギョーカイ”なわけですが、
そのようなくくりは、
デジタル情報化の波がくるずっと以前から
僕の中ではなんとも馴染めず、
違和感がありました。

社長は、まだ、自社を知らない。
社長は、自社の魅力や可能性を、あんがい知らない。30年、中小企業を見てきて、つくづく思う。社長のお考え、事業の過去・現在・未来。伊藤英紀と若いのがパーティーを組み、ワイワイ質問したおす2時間半。会社丸ごと、棚おろしです。棚からボタモチのように、気づかなかった自社の魅力がドサリと手に。
ブランド・理念経営・事業戦略・組織強化のみなもとを、再発見・再定義するパーティーに、ぜひ。

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