【コラムvol.44】
度が過ぎるSM、新卒就活。

「ハッテンボールを、投げる。」vol.44  執筆/伊藤英紀


新卒就活するうちに、
気持ちを病んでいく大学生が
けっこういると聞きます。
就活鬱、と呼ぶらしい。

苦難の新卒就活をくぐりぬけて
ようやく就職したと思ったら、
入社1年目で鬱になってしまう新人も
少なくないらしい。

仄聞であるから、実数は知らない。
が、1980年代前半に新卒期を迎えた僕にも、
僕なりに思い当たる節がある。

「そういえば、新卒就活って
ホント恐ろしかったなあ」と、
30年以上も前の個人的な心情を
ダラダラと振り返ることをもって、
今回のコラムとさせていただく次第です。

僕は、大学新卒での就職活動を
ほぼしていません。
一社だけ訪問したことがある。
クルマの雑誌を本屋で立ち読みして、
興味をひかれたので、思い切って
裏表紙に記された出版元に電話をかけた。
この行動からして、素っ頓狂です。
電話先は採用窓口ではありませんから。

経緯は忘れましたが、
それでも人事に会うことができました。
話すうち、だんだんわかってきました。
「この会社はどうやら出版社ではないぞ」と。
実体は自動車メーカーの戦略子会社で、
新ブランドの販売を推進しようとしていた。
「きみ、すごいカン違いだなあ」と
人事が困った顔で苦が笑いしていました。

役員面接までいきましたが、案の定、落ちた。
企業が欲しがる上位校ではないし、
僕の受け答えも、やはり素っ頓狂だったから。

最終面接は、5人くらいの集団面接で、
ある学生の歯の浮くような、
取り入るような受け答えに、
ゾワッとしたことを覚えている。
重役はまんざらでもなさそうだった。

これで僕の確信は深まりました。
「俺は新卒就活には向いていない。
あんな受け答えを暗に要求されているなら、
いや、たぶんに要求されているのだから、
こりゃやりきれない。」
たった一回の会社訪問ながら
自分の中でハッキリしました。
「新卒就活はもうやめだ。」

就活に必死の形相の学生たちもブキミで、
ああはやれないし、
大学名で振るいにかけられる不利な場所に
わざわざ飛び込んでいくのもどうかと思い、
新卒就活を放棄しようとしていたわけだが、
不安にビクついて一回だけやってみたら、
「ほら、やっぱりな。言わんこっちゃない」と
“確信”を突きつけられたわけです。
内心は、これからどうしたもんかと
ふさぎましたけど。

大学生にとって常識の就活がどうしても苦手。
俺はダメな奴だなあ、
という自己嫌悪を払いのけるために、
一回こっきりの会社訪問をアリバイにして、
「やったんだから、俺は臆病者ではないぞ」と
言い聞かせ、
申し込んでいた広告学校に通いながら、
食っていく道を模索することにしました。

言葉や文章が好きだったので、
コピーライターってやつで
なんとか打開できないもんかと。

新卒は職種採用ではないから、
どんな場所で、どんな部署で、
どんな仕事をするか、原則的にわからない。
だから、
「御社の理念に興味があるんです!」とか、
「御社のここに惹きつけられます!」とか、
“会社惚れ”を基本的態度として
臨まなければならない。

今年中に絶対内定をもらわなきゃ
不幸になってしまうという強迫観念があり、
だから、学生は必死でその会社に
気に入られるように、“当てにいく。”

そういうのからは逃げたかったので、
大学生なのに転職情報誌を見て、
就職先を探したりしたこともあった。
転職情報誌は、仕事内容もわかりやすいし、
学歴不問も多いし、いつでも応募OKで
気軽な感じがよかった。

新卒就活の極意は、
『じょうずに当てにいくこと。』

社長は、まだ、自社を知らない。
社長は、自社の魅力や可能性を、あんがい知らない。30年、中小企業を見てきて、つくづく思う。社長のお考え、事業の過去・現在・未来。伊藤英紀と若いのがパーティーを組み、ワイワイ質問したおす2時間半。会社丸ごと、棚おろしです。棚からボタモチのように、気づかなかった自社の魅力がドサリと手に。
ブランド・理念経営・事業戦略・組織強化のみなもとを、再発見・再定義するパーティーに、ぜひ。

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