人間交換日記 122通目「上善は水の如し」大野

人間交換日記

「すべての人は、すごい可能性を秘めている」と信じる大野と、「多くの人は目的などなくただ存在しているだけ」と断ずる安田。人間の本質とは何か。人は何のために生きているのか。300文字限定の交換日記による言論バトル。


122通目/大野からの返信
「上善は水の如し」

普通の人では会社を潰せません。そこまでの会社を作れないですから。つまり、そこまで築き上げた人だから潰せるとも言える。そして、どの局面においてもいっときの状態にすぎない。今頂点だとしてもどん底だとしてもいっときの状態。どちらも未来を保証し得ない。保証された人生などのぞみたくもない。ほぼ何も持たない時こそ偉そうに言うべき。多くを与えられ始めたら注意が必要。老子曰く水は四角い器なら四角に丸い容器なら丸になる。また、万物に恩恵を与えながら自分は常に低い位置へと。それでいて急流ともなれば岩をも押し流す屹立した意思を内に秘める。蒸気にもなり氷にもなる。自由自在なその在り方は無為にして成す。僕の憧れです。

前回121通目/安田「私の人生目標」

大野さんへ

私は言ってしまうほうですね。離婚経験も会社を潰したことも。軽く見ているわけではないし、克服したわけでもありません。ネタとしてうまく使ってると思われがちですが、本当のことを言うとなかなか辛いです。それをあえて表に出しているのは隠すのが嫌だからです。一生の愛を誓ったのに前言を撤回して離婚した。世間に偉そうに言っていたのに会社を倒産させた。それが事実です。だから私は事実を背負って生きていきたい。しんどいけどそのほうが心地よい。気が楽なのではなく本当の自分でいられるということ。ありのままの自分を受け入れて、そんなに嫌いにならず、できればちょっと好きになって死んでいく。それが私の人生目標なのです。

ー安田佳生より

 

前々回120通目/大野「人生はいつだって自分が記述している以上の何かがそこにある」

安田さんへ

僕は二回離婚している。是れはあまり自分からは言わない。僕を守る為ではなく、妻やその親族に軽々しい前提を持ってもらいたくないからです。誰の真ん中にも悲しみがある。これは僕が最も敬愛する石井裕之さんが言った言葉です。人生が想像を絶する局面を僕に与えてきたとしても、それでも僕は人生にYesと答えたい。人生はいつだって自分が記述している以上の何かをそこに残してくれている。にもかかわらず僕たちは現実の全てを正確に格納していると思い込む。それは決して避けられないしそれでいい。但し人生との共同作業である事を忘れさえしなければ。人生が意図することを彫刻家にして、自分は粘土になるくらいが丁度いいように思います。

ー大野より

 

これまでのやり取り

交換日記をする二人



火曜日
安田佳生(やすだ よしお)

1965年生まれ、大阪府出身。
2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

●金曜日
大野栄一(おおの えいいち)
株式会社一番大切なこと 代表取締役
https://ichibantaisetsunakoto.com/
https://www.sugoikaigi.jp/coach/eiichiono/

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