赤い出口、青い出口 第29回「インプットとアウトプット」

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自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

第29回 インプットとアウトプット

【教科書は正解か?】

小学5年生の子供を塾に行かせています。
なんでも、私立の中高一貫校に行きたいとのことです。
小学生の時は、鼻水垂らしながら野山で虫採りしていた私からすると、
そんなに急いでやらなくても、とは思います。
しかし、東京では結構普通のことで、私立中受験はトレンドなのだそうです。

子供と一緒に勉強していると、正解を求めてきます。

問題をよく読んで、問題そのものを数式にする。
設問者はなにを求めているのかを考える。
問題にヒントがあるので、それを読み解く。

いつのまにか、
正解を求めるテクニックを
教えているのに気づき、これじゃいけないなと。
もっと勉強は面白いものなんだよと、
時代背景や言葉の意味や成り立ちを伝えようとしたら、
子供は近寄ってこなくなりました。
正解が欲しいのです。

子供のときは、
正解の確率が高いものをインプットしています。
正解率を上げるということ自体が、
人生の正解に近づくものと教えられます。
それでも、大化の改新も鎌倉幕府の設立も、
なんか正解が変わったとのこと。
石油なんて全く枯渇しないし、
豊かになっても少子化は進みます。
うなぎと梅干しを同時に食べても、お腹なんて壊しません。

教科書に掲載されても、絶対的な正解なんてありえないのです。

【正解を求める私たち】

一方、社会人になったら正解がない事に気づきます。
上司からの指示も、自身が行動した結果も、
再現不可能なことしかありません。
それが正解かどうかなんて、わからないし、
検証のしようもありません。
目標を達成できたら、正解。
達成できなければ、不正解。
5年後はそれが逆転することも、たくさんあります。

そんな事を考えていると、正解がないとはわかっていながら、
正解らしきものにまだ寄りかかっている自分に気づきます。

正解を欲しがることは、
どうしようもない人間の性(さが)なのでしょう。

【正解とは「思い込み」】

私たちは、どうしても正解を追い求めて行動してしまいます。

学校で教えるような、先人の知識で確かなものに対しては、
インプットするのが正解に近づく手段のようです。
しかし、
未来に対する行動など、社会人になっての仕事については、
インプットすれば正解に近づくことというのは格段に減ります。

社会も経済も変わっていきますし、立場や見方によっても正解は変わります。
ましてや自分自身の生活も変わるので、絶対的な正解なんて存在しません。
絶対的な正解がないなら、正解と思う自分自身しか存在しません。

そうすると、正解とは「自分の思い込み」であることがわかります。
ここで問題なのは、「思い込み」をしたままだと、
世界は広がっていかないし、変わりゆく正解にも近づかないということです。

【アウトプットが正解に】

私たちは小さな頃、学校で正解をインプットし続けたことが、
正解を求める行動だと勘違いしています。

そして、私たちは他者との関係性でのみ、
喜びや存在を実感できることを考えると、
周りの人たちと自分との正解の確認をし続けることが、
唯一の正解を求める行動になると考えます。

ということは、
アウトプットし続ける、
正解と思うものを唱え続ける、微調整し続ける、
その微調整の回数が多ければ多いほど、より正解に近づいていきます。

それが正解の出口であり、アウトプットそのものが正解とも言えます。

 

知識を詰めこめば、正解。
知っているから、正解。
教えたことをすれば、正解。
上司の指示に従ったから、正解。
私たちは、もうその幻想を抜け出す必要があります。

たとえ、知らない領域であったとしても、
自分の意志を明確にする。
上司の指示と違う意見があれば、それを伝えてみる。
自分自身のアウトプットとその回数が、
正解を求める唯一の手段であるように思います。

 


- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

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