日曜日には、ネーミングを掘る #029 台風24号

今週は!

このブログは、
出張先の大阪で書いておりますが、
来てますねぇ、西から。
大型の台風24号。関西は
いまのところまだ嵐の前の静けさ
といった感じですが、
これから日本列島を縦断するようです。
先の台風で大きな被害を受けた地域に
これ以上の被害がないことを祈りながら、
今回は以前から気になっていた
台風のネーミングについて
掘ってみることにしました。

なにが気になっていたかというと、
「日本では数字で呼ぶ台風を、
アメリカではなぜ人間の名前で呼ぶのか」
ということです。
調べてみると、単なる名前の領域を超えて
意外に深い背景があることがわかりました。

そもそもアメリカで台風(ハリケーン)に
名前を付けるようになったのは、
1941年にGeorge R. Stewartという作家が
『Storm』という小説を書き、
そこに登場するハリケーンに
“Maria”と名付けたことが
軍や気象学者に影響を与えたからだと
言われています。

国立ハリケーンセンター(NHC)によって、
実際に名前が付けられるようになったのは
1953年から。
現在でもいわゆるネーミングライツは、
同センターが管理しています。

『WIRED.jp』は、
2009年10月8日号で
「ハリケーンや台風の名前は、
どう決まるのか」という記事を
組んでいますが、そのなかでNHCは
ハリケーンに名前を付ける理由について、
「書くにも話すにも、
短くて特色のある名前を使う方が、
緯度経度で同定する以前の複雑な
やり方よりも迅速に
コミュニケーションでき
ミスも少なくなることが、
経験からわかっている」
と答えています。

面白いのは、
名前はあらかじめ決められており
6つのリストに整理されていること。
例えば、今年(2018年)の場合、
大西洋ハリケーンのリストは
Alberto、Beryl、Chris、Debby・・・
(以下21個まで)となっていて、
これらは6年ごとにローテーションされ、
繰り返して使用されます。
つまり、2018年の人名リストは
2024年に再び使用されるということです。

さらに、2005年に発生した
『カトリーナ』のように生命や財産に
甚大な被害をもたらした場合、
その名前はリストから抹消されます。
日本的に言えば、
縁起が悪いということなでしょう。
リストから抹消された名称は、
別の名称が選定され補完されます。

 

ところで、
(小説のなかではありますが)
最初に付けられた名前が
Mariaだったことで、
ハリケーンにはずっと女性名が
付けられていました。
しかし、そこは民主主義の国アメリカ、
「女性の名前ばかり付けるのは
不公平ではないか」という意見が出ます。
そこで1979年、NHCは意見を受け、
ハリケーンの名前を男女均等に
割り振ることになります。

ところが、
問題はこれで収まりませんでした。
2003年、シェイラ・ジャクソン-リー
という下院議員が、
ハリケーンの名称は白人に偏りすぎている
と不満を表明したのです。
「すべての人種グループを
代表するものであるべきだ」として、
同議員は当局に
「アフリカ系アメリカ人の名前が
含まれるように取り組むこと」を求めました。
いかにもアメリカらしいエピソードですが、
その後の人名リストには
アフリカ系はもちろんスパニッシュ系や
アジア系も含まれていくことになるのです。

以前広告の仕事を中心にしているとき、
アメリカ資本の会社の
キャンペーン広告などで人を扱うときには
すべての人種を入れなければいけないので、
キャスティングが大変
という話をよく聞きましたが、
ハリケーンのネーミングにも
しっかりと反映されているわけです。

このようにハリケーンと名前を巡る話には
なかなか深いものがあるのですが、
前述の『WIRED.jp』には、
ひとつの見解として
『AccuWeather.com』のコラムニスト、
カトリーナ・ヴォス氏の言葉を
紹介しています。
「ハリケーンに名前をつけることは(中略)
自然を制御したい、
あるいは何とか理解したいという、
われわれの願望の表われなのかも知れない」
なるほどねぇ。ここまでいくと
人類が近代以降に確立した
人間至上主義の問題も入ってきて、
話はもっと複雑になってきます。

ところで話は冒頭に戻り、
「日本の台風はなぜ数字なの?」
ということですが、
じつは日本にやって来る台風にも
固有の名前が付けられているのです。

気象庁のウェブサイトによれば、

「台風には従来、
米国が英語名(人名)を付けていましたが、
北西太平洋または南シナ海で発生する
台風防災に関する各国の政府間組織である
台風委員会(日本含む14カ国等が加盟)は、
平成12年(2000年)から、
北西太平洋または南シナ海の領域で
発生する台風には同領域内で
用いられている固有の名前
(加盟国などが提案した名前)を
付けることになりました。
平成12年の台風第1号に
カンボジアで「象」を意味する
『ダムレイ』の名前が付けられ、
以後、発生順にあらかじめ用意された
140個の名前を順番に用いて、
その後再び『ダムレイ』に戻ります」
とのこと。

ちなみに今回の台風24号は、
ベトナム語で花に当たる『チャーミー』
(140個のうち28番目)と
名付けられています。

気象庁がなぜ固有の名前を
使用しないのかのはっきりした
理由はわかりません。
日本人に耳慣れた長年の呼び名を
変えたくないこともあるでしょうが、
鉄人28号とか、背番号3ナガシマとか、
日本人にはもともと番号そのものに
親しみがあるという背景も
あるのかもしれませんね。

ブルー・オーシャン戦略は、未知の新大陸を探しだす作業ではありません。
新たなブルー・オーシャンは今いるレッド・オーシャンの中に無数に存在するのです。

2件のコメントがあります

  1. POPSや映画から、typhoon,hurricane,cycloneという単語が飛び込んできて、何がどう違うの??のところに、今度はカトリーナとかサンディが飛び込んできて、ますますややこしい頭の中でした。佐藤さん、スッキリをどうもありがとう。

  2. 伊藤さん、コメントありがとう。僕も前から?だったので、ちょっとスッキリです。こんなところにも国柄が出るんだなと、そこはちょっとビックリ。

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