日曜日には、ネーミングを掘る #030 全員野球内閣

今週は!

10月2日、第四次安倍内閣が発足しました。初入閣者が最多の12名となった布陣に対して、安倍首相は記者会見の席上「全員野球内閣で、可能な限りのチャンスをつくっていく」と述べています。

『美しい国づくり』から始まって『アベノミクス』『三本の矢』『一億総活躍』などキャッチ―なネーミングづくりが上手な安倍内閣にしては、なんとも冴えない印象を受けましたが、現内閣で「憲法改正」「消費税増税」「東京オリンピック」のトリプルプレイを完成させる狙いが後ろにあるのかもしれません。

そんなわけでは今回は、歴代内閣のネーミング(というよりスローガンと言った方が良いかもしれませんが)について掘ってみることにしましょう。なんだか疲れそうですが(笑)

内閣にスローガンらしきものが付けられたのは、安倍首相の祖父にあたる岸信介内閣(1957.2~1960.7)からと思われますが、以来、現在まで27の内閣が誕生しています。それぞれのスローガンは以下の通りです。

岸信介内閣1957.2~1960.7「民族発展と世界平和への貢献」

池田勇人内閣1960.7~1964.11「寛容と忍耐」

佐藤栄作内閣1964.11~1972.7「進歩と調和」

田中角栄内閣1972.7~1974.12「決断と実行」

三木武夫内閣1974.12~1976.12「対話と協調」

福田赳夫内閣1976.12~1978.12「協調と連帯」

大平正芳内閣1978.12~1980.7「信頼と合意」

鈴木善幸内閣1980.7~1982.11「和の政治」

中曽根康弘内閣1982.11~1987.11「戦後政治の総決算」

竹下登内閣1987.11~1989.6「調和と活力」

宇野宗佑内閣1989.6~8「改革前進」

海部俊樹内閣1989.8~1991.11「対話と改革」

宮沢喜一内閣1991.11~1993.8「品格ある国家」

細川護煕内閣1993.8~1994.4「対話と改革」

羽田孜内閣1994.4~6「改革と協調」

村山富市内閣1994.6~1996.1「責任ある変革」

橋本竜太郎内閣1996.1~1998.7「改革と協調」

小渕恵三内閣1998.7~2000.4「対話と実行」

森喜朗内閣2000.4~2001.4「日本新生」

小泉純一郎内閣2001.4~2006.9「聖域なき構造改革」

安倍晋三内閣2006.9~2007.9「美しい国作り」

福田康夫内閣2007.9~2007.9「背水の陣」

麻生太郎内閣2008.9~2009.9「安心と活力」

鳩山由紀夫内閣2009.9~2010.6「友愛政治」「新しい公共」「政治主導」

菅直人内閣2010.6~2011.9「奇兵隊」「最小不幸社会」

野田佳彦内閣2011.9~2012.12「希望と誇りある日本」

安倍晋三内閣2012.12~「危機突破」「一億総活躍」「未来チャレンジ」「全員野球」

ふぅ、書き写すだけで疲れますね。27のスローガンをざっと見渡してまず目立つのは「○○と○○」というスローガンが多いことです。27内閣のうち13内閣、約半数の内閣がこのパターン。そして、麻生内閣を除く12が20世紀の内閣です。さらに詳しく見ていくと、○○に入る言葉として3つの大きなかたまりがあることがわかります。「和」と「改革」と「実行」ですね。

内閣というのはその国の将来を決める組織なわけであり、掲げるスローガンはその国が抱える課題を反映します。従って、20世紀後半の日本は「みんなで力を合わせて、この国の仕組みを変えていこうね。ほんと口ばっかりじゃなくてさ、絶対やろうね」という掛け声を延々と繰り返していた時代ということができます。

こうした状況に業を煮やし、「おらおら、いつまでやってんだよ。国民はもうぶちぎれ寸前なんだよ」と登場したのが、政界の異端児 小泉純一郎氏です。『聖域なき構造改革』を掲げた小泉内閣が、熱狂的な支持を受けたのも当然のことだったのですね。

小泉首相によって破壊された日本は、創造へ向かいます。その後に誕生した安倍内閣は、向かうべき方向を『美しい国』と表現しました。しかし、自身の体調もあって1年で退陣。その後、内閣は『背水の陣』(福田内閣)と目先のことになり、次いで『安心と活力』(麻生内閣)という20世紀型に逆戻りしてしまいます。

そして、政権交代があり、3.11が起こり、社会が混沌するなか内閣は『最小不幸社会』(菅内閣)『危機突破』(安倍内閣)といった後ろ向き路線になり、ようやく「活躍」「未来」といった前向きな言葉が出てきたところでした。だからこそ、今回の安倍内閣の『全員野球内閣』の空虚さには、がっかりしてしまいます。

以前から、そして心ある国民から「ビジョンがない、ビジョンがない」と言われ続ける日本。そのことが内閣のスローガンから浮かび上がってきました。

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