変と不変の取説 第12回「右肩上がりはもう古い」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第12回 「右肩上がりはもう古い」

前回第11回は「お金に囚われているのは誰」

安田

平成が終わるじゃないですか。

はい。終わりますね。

安田

昭和って右肩上がりだったでしょ。で、平成は「魔の横ばい時代」って言われてまして。

「失われた何十年」とか、ずっと言われてきましたからね。

安田

この間テレビを観てたら、平成しか知らない人たちが出てまして。

平成生まれではなく?

安田

はい。平成10年以降に社会人になった人たち。彼らは昭和との比較で平成を語られるのが、とても腑に落ちないそうです。

平成には平成なりの良さがあると?

安田

良さもあるし、悪さもあると。

当たり前ですよね。

安田

当たり前なんですけど、言われてみれば「昭和と比較せず平成を語る人」ってあまりいないんですよ。

確かに。

安田

国のトップも、マスコミのトップも、みんな昭和を経験した人間ばかりなんですよ。

テレビや新聞でコメントする人たちが、昭和のじいさんばかりだと。

安田

そうなんですよ。政策を考える人も、番組を考える人も、コメントする人も、みんな頭が昭和のまま。

「右肩上がりが当たり前」みたいな感覚が、完全に固定化していると。

安田

そうなんですよ。「横ばい=悪」という図式が大前提。

「昭和と比較せずに平成を語れ」と言いたいわけですね。

安田

その通りなんですよ。ちなみに平たく成ると書いて平成じゃないですか。

いみじくも。

安田

成長できなかった時代ではなく「成長しないことを選択した時代」とも言えるんじゃないかと思うんです。

成長しないことを自ら選択したと?

安田

まあ自覚はないでしょうけど。たとえば最近の若者って、デブになるほど見境なく食べないじゃないですか。

昭和のサラリーマンはガツガツ食べたイメージですよね。20〜30代ですでにちょっとお腹出てるみたいな。

安田

それが社会人のイメージだったじゃないですか。でも今の若い子は太るの嫌がるし、必要以上に高い物とかも持ちたがらない。

昔はみんな、無理してブランド品を買ってましたもんね。

安田

物に執着しなくなった時代とも言えるし、一段成長した時代とも言える。

GDPで計れない「見えない資産」も増えましたよ。ITインフラが誕生して、リテラシーも高まって、SNSも普及した。

安田

テクノロジーに関しては、完全にそうですよね。100倍以上はすごくなってます。

平成って、いろんなものがコツコツと蓄積された「準備期間」みたいな気がします。

安田

次の時代に向けての準備期間ですか?

何となく、そんな感じがしますね。

安田

昭和の人たちって、ものを捨てなかったじゃないですか。だから家の中にいらないものがいっぱいあった。

ものが無いところから、スタートしていますんで。

安田

平成は完全に断捨離の時代ですよね。余計なものを持たない時代。

完全にそっちに向かってますね。

安田

「持てば持つほどハッピー」だった時代から、「これだけあれば十分」という時代になって、最近は「必要以上に持つことが不快」な時代。

所有するという感覚がなくなってきてますね。今はレンタルとかシェアで十分。

安田

ですよね。最低限の持ち物でいい。1個買ったら1個捨てるとか。ほしい人にあげるとか。安く売るとか。

身軽に生きていくほうが、ずっとハッピーですよ。

安田

でもそれって、単に僕らが年をとったからですかね?全体の空気として、変わってきてる気がするんですけど。

それは間違いないでしょうね。全体として価値観が変化してるんですよ。

安田

ですよね。

大手の社員さんでも仕事観みたいなのもが、変わってきてます。

安田

大手の社員さんですか?

会社に雇用されることに、こだわらない人が増えてます。

安田

そうなんですか?

はい、とくに若い人は。プロジェクトでぱっと集まって、仕事が終わったら解散みたいな。「そういう働き方がしたいです」って言ってますね。

安田

雇う側にも変化は必要ですよね。雇われる側はもう目が覚めちゃってますからね。

間違いないです。

安田

社長というだけで尊敬してくれたり、「給料いただけるだけでありがたい」みたいな人、もういませんから。

いませんね。それどころか、ちょっと飲みに誘っただけでパワハラとか言われる。

安田

雇う側のほうが気を使う時代ですよ。社員が増えたストレスで「やめてたタバコをまた吸い始めた」って社長さんがいます。

そういうシーンは、よく見ますね。

安田

物を持たない時代には、社員も持たないほうがいいのかも。

流動性が高まったんで、持たないほうがフットワーク良くて快適なんですよ。旅行のときの荷物と一緒。

安田

海外旅行に慣れてなかった時代って、ものすごい荷物を持っていってましたもんね。

今は、必要だったら何でも買えますから。洗濯もできるし、衣類なんかそんなに必要ない。

安田

セブンイレブンだってありますからね。じゃあ、今は社員も持たないほうがいい?

必要な時に、必要な人だけ集めればいいんですよ。プロジェクト的に。

安田

昔、自社が20人くらいだった頃、社員100人の社長が羨ましくて。すごく負けてる気がしたんです。

分かります。私も社員を増やしたい時期がありました。でも今は何とも思わないですね。

安田

私もです。むしろ「社員がいない優越感」みたいなのがあります。社員を雇うのって大変なので。

安田さんは経験者ですからね。

安田

でもそれが負け惜しみなのか、世の中全体の空気なのか、どっちだと思います?

空気だと思いますね。

安田

それって、テクノロジーの影響だと思いますか?

一番力が強いところが、弱くなってきた影響でしょうね。

安田

一番強いところ?

一番強いところって国家じゃないですか。お金も中央銀行が牛耳ってるわけですから。

安田

まあ、最大権力者ですよね。

でも黒田さんが色々仕掛けても、あんまりインパクトないでしょ。総理大臣だって「総理大臣、ふーん」みたいな感じじゃないですか。

安田

昔だったら「末は博士か大臣か」みたいな。

「将来は大臣になりたいです!」とか「総理大臣目指します!」なんてちびっ子、最近見たことない。

安田

確かに。

大きなものに紐付くんじゃなくて、自分の世界を大事にしてる感じがしますね。

安田

自立しているというか、一人ひとりが自分の価値観を優先してますよね。国家からも、会社からも、距離を置いてる感じ。

国家とか、会社とか、強かったところの求心力が弱くなってるんですよ。

安田

「じゃぶじゃぶ余らせたら金を使うはずだ」みたいな感じでやったけど、誰も使わないっていう。

「中央の意向」みたいなものの影響力が落ちてるんですよ、確実に。

安田

「不安じゃなかったら、高いものをどんどん買うのか」っていったら、そんなふうにはならないですよね。

ならないですね。

安田

贅沢はしないけど、みんな結構楽しんでますよね。高い服は着てないけどオシャレだし。大人になったっていうか。

それが平成という時代だったんじゃないですか。

安田

この次の時代はどうですか。右肩上がりに戻りますか?

右肩上がりとか、横ばいとかってのは、国家的に見た話なんですよ。

安田

経済だけの話ですもんね。

その軸じゃない世界に、なるんじゃないですか。次の時代は。

安田

右肩上がりとか、横ばいだとかっていう視点自体が、意味をなさなくなると。

国家の力がどんどん弱くなって、国家的な視点や価値観も意味をなさなくなってくる。そんな気がしますね。

…次回へ続く…


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

ブルー・オーシャン戦略は、未知の新大陸を探しだす作業ではありません。
新たなブルー・オーシャンは今いるレッド・オーシャンの中に無数に存在するのです。

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