変と不変の取説 第22回「開国事情と中国のポテンシャル」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第22回 「開国事情と中国のポテンシャル」

前回第20回は「人間の境目、命の境目」

安田

ペリーが来て日本は開国したじゃないですか。

しましたね。

安田

中国もアヘン戦争で負けて、香港とか取られたじゃないですか。お金も取られた。

取られましたね。

安田

あれが、すごく不思議でしょうがないんですけど。

負けたことがですか?

安田

はい。言ってもペリーって、船3艘か4艘でしょ。そのときに日本人は何千万人っていたわけで。中国なんて億単位ですよ。

まあ数ではそうですね。

安田

いや、本気で全員で戦ったら、絶対負けないでしょ。海から砲撃するって言っても、無限に弾があるわけじゃないし。

補給もしないといけませんからね。

安田

そうでしょ?なぜ、あっさり開国しちゃったんですか?

当時の日本人は攘夷を唱えていて、「ぜんぶやっつけて勝てる」とほとんどの人が考えてたみたいです。

安田

なのになぜ?

徳川幕府が日和ってしまった。

安田

幕府は「勝てない」と思ったんですか?

勝てないというより、もし戦ったら「徳川幕府が弱体化する」って考えたんでしょうね。

安田

弱体化ですか?

戦争するには金もかかるし、弱体化したら政権が奪われるかもしれない。

安田

だから戦わなかったと?

「いまは外国と仲良くして力つけとこう」みたいな。

安田

でもかなりの不平等条約ですよ。

「不平等条約でもいいから、自分たちの仲間にしとこう」みたいな。

安田

じゃあ、保身ですか?

保身ですよ、たぶん。だから桜田門外の変とかが起こるわけですよ。

安田

弱腰だったから?

「何を日和ってんねん、ボケ!」みたいな感じで、浪士たちが斬りかかってくるわけですよ。

安田

たとえば、南米のアステカ文明とかも、大した人数じゃないスペイン人に支配されちゃったじゃないですか。

ですよね。

安田

植民地時代って、ほんの少数のヨーロッパ人に、ことごとく負けていく。みんな保身の王様だったってことですか?

入り込むのが上手かったんでしょうね。中国の場合は中華思想があったので、うまく入れなかった。

安田

でも、アヘン戦争で、あっという間にぶんどったじゃないですか。

アヘン漬けにしたからですね。

安田

アヘン漬け?

まずヤク中にしようってことで、インドでいっぱいアヘンつくって、中国人にアヘンを売りまくった。

安田

ひどいですね。

アヘンを売りまくると、中国の財がどんどん減っていくんですよね。

安田

で、弱ったところを、やられたんですか?

いえ、中国人が「アヘンばっかり売りつけやがって、ボケ!」みたいな感じでキレたんですよ。

安田

キレた?

アヘンが載ってる船を焼き払って、海にアヘンを捨てて、「二度ともってくんな!」みたいな。

安田

それで?

それで、「なにさらしてくれてんねん」っていうことで、戦争になったわけですよ。

安田

それがアヘン戦争?

はい。

安田

なぜ、あれほどの大国が、負けちゃったんでしょうね。

イギリスが強かった。

安田

でも、たった三十隻ぐらいの船じゃないですか。

それだけ海軍がすごかったってことじゃないですか。

安田

そんなに?

海沿いで戦ったところは、ぜんぶボロ負けしました。

安田

でも、海沿いだけじゃないですか。上陸させてしまえば、中国なんて奥から何億人って人間がドーっと攻めて来るわけで。

いや、もうそんな求心力は、なかったと思いますよ。

安田

じゃあ、沿岸で負けて「もうダメだ」みたいな感じ?

軍事もすごいですけど、彼らは政治を操るのがうまい。「うちと組むと、あとあと得するから」みたいに。

安田

じゃあ日本の場合も、政局を分かった上で、薩長に裏から武器を渡してたんですか?

もちろんそうですよ。中国で戦争して、結構イギリス大変だったんですよ。

安田

アヘン戦争が?

かなり人が死にましたんで。

安田

で、戦略を変えたと?

内乱してもらって、政権変わったとこに入ったほうが楽じゃないですか。

安田

なるほど。裏では、そんなふうになってたんですね。

と思いますね。

安田

明治維新って「日本人の意思で、自ら新しい時代を切り開いた」みたいに言われてますけど。違うかもしれない?

裏で手を引てる人は、確実にいたと思います。ただ、日本人がそれを活用したとも言える。どっちの視点から見るかですね。

安田

海外から見たら、うまいこと新政府を取り込んで、開国させたわけですよね?

そうですね。

安田

扱いやすい国にしたはずなのに、なぜ軍国化していくのを放置したんですか?

想像以上だったんでしょうね。

安田

想像以上?

想像以上に日本は成長するし、アジアに進出していくし、ロシアと対等に張り合っていくし。

安田

あんな海軍をつくるとは思ってなかった?

領土を広げていくとは思ってなかったでしょうね。東南アジアがそうだったんで。同じような国だと思ってたんじゃないですか。

安田

中国は、なぜ領土を広げなかったんですか?日本よりずっと大国だし、西洋の文化を吸収して「強い海軍をつくるぞ」とかって、なりそうですけど。

そのころの清朝って弱かったんですよ。力がなかった。

安田

じゃあ日本の場合は、明治政府がうまいこと「求心力をつくった」ってことですか?

そうでしょうね。

安田

じゃあ、もし当時の中国にそういう革命家がいたら、変わってたかもしれない?

秦の始皇帝みたいな、いまのキングダムみたいなのがいたら、ぜんぜん違ったんじゃないでしょうか。

安田

今はどうなんですか?共産党が支配してますけど。軍事力も経済力もすごいし、歴史上かなり強い国なんですか?

歴史上かなり強いし、世界的にも凄く影響力をもってる国ですね。

安田

影響力ありますか?

途上国の開発で、今中国の企業がすごいんですよ。新幹線を通したり、プラントつくったり、格安で中国がどんどん受注してます。

安田

途上国って、そんなお金払えるんですか?

中国が開発銀行みたいなのをつくって、どんどん貸してます。

安田

回収できるんですか?

返せなかったら「じゃあ、その空港は俺たちのもの」みたいな感じで、差し押さえてく。

安田

恐ろしい。

お金の力をもってるので、世界にどんどん広げてますね。

安田

ついこの間まで「眠れる獅子」って言われてましたよね?やっぱり共産党がすごいんですか?

やっぱ一番はマンパワーですよね。成長意欲もすごいし、世界中にエリートが散らばっているので。

安田

世界中に華僑っていますもんね。

はい。

安田

じゃあ、もともと中国は、それだけのポテンシャルをもっていたってことですか?

ポテンシャルは桁違いですね。

…次回へ続く…


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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