変と不変の取説 第30回「リセットすべきタイミング」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第30回「リセットすべきタイミング」

前回、第29回は「改善の達人という自覚」

安田

60過ぎて再雇用されても、現役時代の半分とかに給料が減っちゃうらしいですよ。

半分から三分の一と言われてますね。

安田

かつては60代で亡くなる人が多かったので、60歳定年で問題なかったらしいです。

今は長いですからね。そこから。

安田

すでに80を超えてまずけど、100歳時代になると言われてます。

ですよね。

安田

再雇用されたとしても65歳でしょ。そこからが、まだまだ長い。

長いですね〜。

安田

60とか65歳で「いまから起業しますわ」とか言っても、なかなか難しい。

無理ですね。

安田

今までは働く期間が、だいたい40年ぐらいだったんですけど。

これからは60〜70年になりますから。

安田

それだったら、もう最初から「“二毛作”を前提にした方がいいんじゃないか」と言われてます。

二毛作ですか。

安田

60〜65歳でゼロからやり直すんだったら、45歳ぐらいで折り返した方がいいんじゃないかと。

「1社で最後まで勤め上げる」みたいなのが、今はなくなってきてますからね。

安田

もはや1社で勤め上げるなんて不可能ですよ。

企業側も「無理だ」と認めちゃってますからね。

安田

そもそも一生勤め上げるっていうのは、昔からの風習なんですか?

昔は藩に所属すると「御恩と奉公」の関係なので、一生モンになるわけです。地縁・血縁関係もあって、すごく安定してるので。

安田

そうですよね。お家のために命を捨てるというイメージです。

そういう世界の延長に会社があったので、就職は「どこかの藩に所属する」みたいなイメージがあった。殿がいて、その恩義の中で生きるみたいな。

安田

でも、藩がお取り潰しになったら、みんな浪人になっちゃうわけじゃないですか。そういう状態になってきてますよね。

もうなってます。

安田

ですよね。だから大企業に入ったとしても、そこから先のことも考えておかなくちゃいけない

ただ日本は、部活なんかも1個しか入れないじゃないですか。そういう文化なんですよ。

安田

確かに、そうですね。

大学なんかも、学部ひとつしか行けなかったりとか。

安田

何かひとつに集中することが、正しいことだと思い込んでますよね。

2つ行ける余裕があったら、行ったらいいじゃんって思います。なんで1個だけなん?ていう。

安田

泉さんの場合はどうなんですか。会社員だった時代もあるわけでしょ?

はい。ありますよ。安田さんはずっと社長ですよね。

安田

私は、会社員をやったのは2年だけです。

じゃあ、ほとんど社長人生ですから、次の仕事とか考えたことなかったでしょうね。

安田

もう一生社長でやっていこうと思ってたんですけど、会社が潰れちゃいました。くしくも46歳で第二の人生になっちゃいました。

安田さんの場合は余裕だったでしょう?

安田

いや、ぜんぜん。大変でした。社長って人に頼らず実力で生きてるみたいですけど、会社とか社員に結構依存してるんですよ。

へえ。そうなんですか。

安田

今から考えたら46歳でよかったと思いますね。55歳からだったら結構しんどかった。

実感こもってますね。

安田

はい。経験者ですから。なので、会社員とか経営者とか関係なく、40~45歳ぐらいで1回見直したほうがいいと思います。

まあ、そうですよね。社長だって明日が分からない時代ですから。

安田

泉さんは、何歳ぐらいでターニングポイントがあったんですか?

私は30歳のときですね。

安田

早いですね。

私は「社長になろう」とか考えてなくて、どちらかというと恩義タイプなので、会社に恩を返そうと思ってました。

安田

じゃあ一応、“ご奉公”はしてたんですか?

ご奉公してるんだけど、目の敵にされるみたいな(笑)

安田

なるほど(笑)。ご奉公になってなかったと。

私は組織を改革するタイプなので。改善じゃなくて。

安田

社長はそこまで求めてなかった?

社長は「改善してくれ」って言うんですけど、私は改革しようとするので、めちゃくちゃ嫌がられてました。

安田

坂本龍馬みたいな感じですね。

はい。だから結局「出て行け」みたいな。

安田

で、出て行ったんですか?おとなしく。

「これだけ会社のためを思ってやってるのに、なんやその言い方は!」みたいな感じでブチ切れて辞めました。

安田

社長にブチ切れたんですか?

はい。で、もう行くところがないので「自分で会社つくろう」と思って、つくったのが30歳のとき。

安田

いま何歳でしたっけ?

もうすぐ46です。

安田

100年時代を想定したら、そろそろ新しい仕事を考える時期ですね。

もちろん考えてますね。ベースの能力は使うけど、仕事の種類は変わると思います。

安田

会社員の人って、基本的に22歳ぐらいで就職するじゃないですか。

はい。

安田

人生を見つめ直す「ターニングポイント」を聞かれたら、何歳ぐらいって答えますか?

私は30歳で1回リセットしたほうがいいと思います。

安田

けっこう早いですね。

だって、世の中のことがだいたいわかるじゃないですか。30歳になると。

安田

確かに。

それに30歳を超えてしまうと、結婚したり、ローンがあったり、子どもができたりして、身動きが取れなくなる。

安田

子どもいても、まだ金かからない頃ですもんね。30歳だったら。

そうです。だからそこで1回リセットしたほうがいいです。

安田

でも、なかなか思い切れないですよね。とくに大企業に入った人は。

だから会社も30歳で1回定年にして、そこから自分で選ばせたほうがいい。「30歳でみなさん卒業です」と。

安田

でも会社にしてみたら、30~40って結構稼ぎ頭で、手放したくはないですよ。

ただ、40歳になったときに大変なんですよ。

安田

まあ大変ですけどね。

いやぁ、大変ですよ。30歳で1回リセットして自分の人生を歩んでる人と、そのまま流されて10年過ごした人と、えらい違いが出ますから。

安田

でも会社側から見たら、いちばん理想的なのは40ぐらいで1回リリースして、いい人材だけ帰ってきてもらうこと。

(笑)まあ、会社側からしたらそうですよね。たしかに。

安田

30だと、まだ給料が安いし、十分黒字で利益もたらしてくれそうな感じ。

だからこそ、そこで決断しないといけない。

安田

会社から「そろそろ1回リセット」って言われる前に、自分から見切りつけたほうがいいと。

お勧めは30歳ですね。見える世界を1回変える。視座を変えることで、社会を見る目も広がりますから。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


| 第1回目の取説はこちら |
第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

2件のコメントがあります

  1. 大変面白い対談です。
    私は何度も社会人生活を何度もリセットしてきたので、リセット後の大変さはよく理解できます。今の日本はかなりリセットしやすくなってきましたあまだまたの面も多々ありますが、私の時代はリセットイコール減給、社会の目は長続きしない、会社の改革なんぞもってのほかでした。最後は40代で独立したのですが、無茶苦茶大変でした。色々と教えてもらっても、まだまだ足りませんでした。現在65歳、これから、まだまだ働かなくてはならない!

  2. 正木さん、コメントありがとうございます。
    リセット&修羅場から作ってこられた正木さんの「道」がこれから後進たちに大きな糧になるに違いないです。
    定年GO!というコンセプトもやっと時代が追いついてきましたね。最初は損な役割が多いですが、先陣をいつまでも進んでください。正木さんの背中を見ながら私も進みます。どこかでバカ2合流できるに違いないです。

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