変と不変の取説 第43回「目的のないゲーム」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第43回「目的のないゲーム」

前回、第42回は「今ある呪縛をリセットする」

安田

「マネタイズ」っていう言葉なんですけど。

はい。

安田

どうも違和感があるんです。

私もちょっと違和感ありますね。

安田

すごく近視眼的な感じがするんですよね。

お金ばっかり見てる感じ。

安田

私はマネタイズという言葉を使わないようにしています。使った時点で、そういう世界に組み込まれちゃう気がして。

私も使いませんね。

安田

あと「スケール」という言葉。

ああ。分かります。

安田

スケールメリットは否定しませんけど。やたらとみんな「スケールしたい」「スケールしたい」って言うじゃないですか。

言いますね。「どうやったらスケールしますか?」って、すぐ聞いてくる。

安田

言ってる意味がよくわかんなくて。「なんなの?スケール」って思っちゃいます。マネタイズという言葉と何か共通点がある。

似てますね。あと「上場」とか「IPO」とか。

安田

大きくするメリットもありますけど、「その事業で大きくしてどうするの?」って事業もあるじゃないですか。

いっぱいありますね。

安田

小さいことが価値の中に含まれてる。それなのに「うちの事業スケールしないんです」って言うんですよ。

「ビジネスはでかく、スケールするほどいい」っていう先入観でしょうね。

安田

「大きくしないと儲からない」ということなら分かるんですけど。「儲かってるけど、スケールしないんです」って。

「儲かってるならそれでいいやん」って思いますけどね。

安田

「何のために会社大きくするか」というのを考えないまま、大きくしようとしてる。

テストの点数と一緒ですね。点数が上がること自体が素晴らしいっていう。

安田

売上30億で2,000万しか利益出ないより、売上3億で5,000万利益出るほうがいいじゃないですか、どう考えたって。

大企業をつくった経営者ってすごく評価されるから。稲盛さんとか、松下幸之助もそうだし、孫さんとか、柳井さんとか。「それこそが真の経営者だ」みたいな。

安田

「歴史に名前を残したい」みたいな。

やっぱりそこに憧れや野望があるんじゃないですかね。

安田

ただ単に売上や従業員数を拡大していっても、その延長線上に松下幸之助はいないと思いますけど。

いないですね。

安田

そもそも大企業ってそんなに憧れるもんですかね。

大企業って、皆さんが思ってるよりずっと不自由なんですよ。制約条件がありすぎて自由に発想できないですから。

安田

そうですよね。

はい。可哀そうですよ。開発の人とか。

安田

尖った企画とか、絶対に通りませんもんね。

マーケティングして顕在ニーズに合わせて商品を作りますから。自分の感性なんか完全に消えちゃうわけですよ。

安田

3億の事業とか立ち上げても、まったく評価されないんでしょうね。

ダメですね。最低でも100億はないと。

安田

小さいからこそ「魅力的かつ高収益」なビジネスってあるんですけどね。それこそ売上3億で5,000万利益が出るビジネスとか。

ありますよね。

安田

そういうビジネスを10人ぐらいでやったら、みんなハッピーだと思うんですけど。お客さんにも喜ばれて。

私もそう思いますよ。でも大企業では通用しない。

安田

「たった3億?」みたいな。

「そんなんで食えるわけないやろ」って感じなんで。

安田

大きくなっていくことって、今の時代にはかなりリスキーだと思うんですけど。

時代には合ってないですよね。どこかで拡大を止める決断が必要。

安田

ですよね。でも「スケール」ってみんな言いますよ。

やっぱり「大企業信仰」みたいなのが、まだ残ってるんじゃないですか。

安田

そんなもの、まだあるんですか?これだけリストラとか、外資に身売りしたりとか、ニュースになってるのに。

だって人気企業ランキングも大企業ばかりじゃないですか。

安田

単に知名度が高いからじゃないんですか?

大企業に入るとローンも借りやすいとか、結婚もしやすいとか、親とか親戚の評価もいいとか、世間体もいいとか。そういうのが潜在意識に組み込まれてるんですよ。

安田

なるほど。社会に出る頃にはもう刷り込まれてると。

そう思います。

安田

大きな会社に入りたい、大きな会社を作りたい、大きいことはいいことだって。

はい。手段が目的化してるんですよ。

安田

手段が目的化ですか。

「何のために」という目的がないのに、「大きくする」という手段が目的になってしまってる。

安田

会社の中に目的意識なんてないですもんね。あるのは目標だけ。

売上目標とか、利益目標とか、納品目標とか。

安田

はい。「そもそも何のためにその数字達成するのか?」という目的がない。

目的を語れる人がいなくなったんでしょうね。特に大企業には。

安田

存続が目的になってますよね。

存続と拡大のみですね。

安田

松下幸之助は「日本人の生活を豊かにする」って言ってましたけど。いまやパナソニックだって収益上げて生き残ることが目的なわけですよ。

そうですね。

安田

「日本の家庭をいまより豊かに」なんて絶対に思ってないですよ。

そんな余裕ないでしょうね。

安田

ほとんどすべての大企業が、手段が目的化しちゃってるってことですよね。

そうです。完全に手段が目的化してる。

安田

昔はもうちょっとまともだったんですか。

目的意識はありましたね。日本全体が貧しかったから。

安田

「アメリカに追いついて豊かになるぞ」みたいな。

はい。

安田

「目的を達成しちゃったということですか。

達成したというより、見失ったんでしょうね。

安田

見失った?

数字を追い求めてる間に、何が豊かさなのか分からなくなったんでしょうね。

安田

豊かさを追い求めてるはずが、売上や規模だけを追い求めるようになったと。

手段が目的化したんですよ。

安田

じゃあ完全にもう、目的を見失った「拡大と生き残りのゲーム」ってことですか。

そう。目的のないゲームですよ(笑)


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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