変と不変の取説 第61回「誰が日本の男をダメにした?」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第61回「誰が日本の男をダメにした?」

前回、第60回は「日本は多民族国家?」

安田

小学生のときって、足が速い男の子がモテるじゃないですか。

運動神経のいい子はモテますね。

安田

でも中学、高校ぐらいになると勉強できる子がモテ始める。

確かにそういう傾向はあります。

安田

でもアメリカでは全然違うんですよ。勉強できる人って全然モテない。スポーツできる人がモテ続ける。

そっちの方が健全ですけどね。

安田

ですよね。なぜ日本は勉強できる人がモテるんでしょう。

テレビで東大王とかやってるじゃないですか。

安田

やってますね。やっぱ東大生はすごいです。

クイズに頭の良さそうな人が出てくると、やっぱりリスペクトされる。

安田

クイズと勉強ってちょっと違いますけど。勉強できる人がリスペクトされるってどうなんでしょう。

違和感ありますか?

安田

だって勉強できる子が、学級委員長とか生徒会長になるじゃないですか。

頭のいい子=リーダーみたいな図式になってますから。

安田

でしょ。でも勉強ができるのとリーダーシップって関係あるんですか?

いや、ぜんぜん関係ないと思います。

安田

ですよね。

やっぱり勉強ができる=エリートというイメージが定着してるんですよ。

安田

だから「勉強ができる=カッコいい」というイメージが出来上がると。

親も「あの子は勉強ができて立派だよね」って言うだろうし。親の評価軸は子供に大きく影響しますから。

安田

確かに。

段々とその図式が変わりつつあるんですけど。

安田

勉強できるエリート人よりも、外れちゃった人の方が稼いでるとか。

そういう事例はめちゃくちゃ増えてます。

安田

大企業の中での評価も変わってきてますか?

「言われたことしか出来ない人」はもう評価されないです。

安田

つまり勉強のゴールが変わっちゃうということですよね。

そういうことです。

安田

そうなったら中学生、高校生ぐらいのモテる対象も変わるんでしょうか?

変わってくるんじゃないですか。

安田

どんな風に変わるんでしょう?

たとえばお笑い芸人の社会的地位が上がったので、みんなを笑わせられる人とか面白い人とかがリスペクトされる。

安田

関西では確かに面白い人がモテます。

それはやっぱり関西の方が「面白い人」の地位が高いから。

安田

なるほど。じゃあ地域性によってモテる要素も違うと。

それは絶対ありますよ。

安田

国によっても違いますよね。アメリカではマッチョがモテるし。

そうなんですか?

安田

はい。だから高校生になったらウェイトトレーニングしまくる。ベンチプレス100kg上げれば彼女ができるぞみたいな。

単純やな(笑)

安田

ほんとに単純で分かりやすいです。実際にマッチョだとモテるんですよ。

へえ。

安田

イタリアだとお洒落じゃないとモテないんで、男はみんなお洒落になっていく。

ドイツ人が勤勉なのも、そこから来てるのかもしれませんね。

安田

絶対にそうですよ。勤勉な男がモテるからみんな勤勉になっていくんです

まあオスのサガでしょう。メスに選ばれてナンボなので。

安田

やっぱり女性の好みが男を作っていくんでしょうか。

そうなりますね。

安田

でも日本人の男性って、世界的にはまったく人気がないんですけど。それって日本の女性が作ってるわけでしょ。

日本の男はお母ちゃんが作ってきたんです。

安田

お母ちゃんですか。

はい。

安田

じゃあ彼女の理想とする男じゃなく、お母ちゃんが理想とする息子をずっと目指して来たと。

そういうことです。お母ちゃんは子供に勉強できてほしいから、みんな勉強する。

安田

なるほど。ということは「お母さんが息子に求めるもの」が変われば、日本の男も大きく変わる可能性がありますね。

理論的にはそうです。でもそれは無理なので早く引き離した方がいい。

安田

お母さんはどういう時代になっても、勉強できる子が好きだと。

好きですね。エリート好き。たぶん韓国とか中国もそうだと思います。

安田

確かに韓国も中国も凄い学歴社会ですもんね。

はい。

安田

ちなみに学級委員長って生徒の投票で決めますけど、「先生の無言の推薦」みたいなのがあるじゃないですか。

ありますよ。勉強できる子って従順な子が多いので。先生も言うこと聞かせやすい。

安田

なるほど。言われた通りにやる子は成績いいですもんね。

そう。だから日本では「先生が言うことを聞かせやすい子」がエリートになっていく。

安田

だけどその出口が変わりつつあるってことですよね。

はい。今は勉強と社会での評価が繋がってない。

安田

途中で断絶してますよ。ヘタするともう就職することすら危うい。

人事の人は「大卒男子があまりにも酷い」ってみんな言ってます。

安田

男子が酷いんですか?

女子はまあいいんだけど男子が酷すぎるって。

安田

どう酷いんですか。

喋れない。自己表現できない。人の話聞けない。仕事ができる感じが全くしない。ストレスがかかったらすぐ折れそう。

安田

そんなに酷いんですか?

はい。だから普通の男子がめっちゃよく見える。

安田

普通のレベルが下がってるってことですか?

下がってますね。

安田

でもそういう子達って学校の勉強はできるわけでしょ。

ほどほどです。大学受験してちゃんと受かる程度の勉強はできる。

安田

トップの大学にはいい人材もいそうですけど。

もちろんいますよ。リーダーシップがあってコミュニケーションもできて勉強もできる。三拍子揃ったイチローみたいな人材。

安田

でも数は少ない?

めちゃくちゃ少ない。だから取り合いですよ。企業は。

安田

じゃあ残りは数合わせみたいになってる?

はい。なってます。

安田

これはやっぱり教育の弊害なんですか?

いや、お母ちゃんの弊害でしょう。

安田

お母ちゃんに厳しいですね(笑)。お父ちゃんは?

お父ちゃんは現場を見てるから気づいてる。

安田

じゃあお母ちゃんに言えばいいのに。

日本のお父ちゃんはお母ちゃんに逆らえないから。

安田

なるほど。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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