変と不変の取説 第75回「絶滅危惧種は誰?」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第75回「絶滅危惧種は誰?」

前回、第74回は「タメ口の境目」

安田

泉さんってゴルフとか見ます?

まったく見ません。

安田

やっぱ見ないですか。

はい。

安田

じつは最近、日本では男子ゴルフの試合数がどんどん減ってまして。

へぇ。

安田

でも女子ゴルフの試合数は増えてるんですよ。女子ゴルフのほうが人気がある。

確かに言われてみればそうですね。

安田

ジャンボ尾崎さんの頃は男子ゴルフの人気がすごかったんですけど。

そうでした。

安田

宮里藍さんぐらいから、若くてかわいい女子選手がたくさん出てきて。ギャラリーさんに対するサービスもよくて。どんどん人気が出てきました。

なんかハイタッチとかしてますよね。

安田

はい。ギャラリーさんとハイタッチしたり。とにかくサービス精神が旺盛。

男子はそれがないと。

安田

男子プロはあんまりサービス精神がないらしくて。

強けりゃいいみたいな。

安田

はい。まさにそんな感じです。女子プロは「スポンサーのおかげで成り立ってる」という教育が徹底されているらしくて。

スポンサーとファンあってのプロですからね。

安田

そうなんですよ。さらに女子プロでは期待の新人がどんどん登場してくる。

海外で優勝した女子プロがいましたね。

安田

はい。渋野さん。彼女も新人です。さすがに泉さんも知ってるんですね。

はい。たしか岡山出身でしたよね。それで覚えてます。

安田

全英オープンという世界で最高峰の大会でいきなり優勝しちゃったんです。日本人で初めて。しかも新人。

ミラクルですね。

安田

本当にミラクルなんですよ。やたらとプレッシャーに強くて。しかも渋野さんだけじゃないんです。続々と有望な新人が出てきてる。

いいことじゃないですか。

安田

これって、どういう現象なんですか?いきなり女子だけが強くなっちゃって。

日本女子が本来持っているものでしょうね。メンタルタフネス。

安田

もともと持っていたものが、ここにきて出てきたってことですか?

なでしこもそうですよ。サッカーの。

安田

ああ、たしかにそうですね。

体がちっちゃくてもメンタルが強い。日本の場合は男性より女性のほうがメンタリティーが強い。

安田

へえ。そうですか。

「やろう」という意思決定の早さも女性のほうが上ですね。男のほうがモジモジして決められない。

安田

日本って男文化のイメージですけど。「女は黙っとけ」みたいな。

じつは昔から女性が裏で操ってたと思います。男は基本ダメなので。

安田

そうなんですか。

女性が「あんた、腹くくりなさいよ」みたいに裏から言って。今で言うコーチング。

安田

明治維新とか男のイメージしかないですけど。

そんなことないですよ。坂本龍馬も乙女姉さんにしごかれてたし。ああいう構図がたくさんあった気がします。

安田

なるほど。でもたしかに「お父さんが働きに出て、お母さんが専業主婦」なんて、つい最近ですもんね。

そうですよ。

安田

じゃあ日本は、お母さんが生活を仕切ってた文化?

生活費を稼いで、ご飯もつくって、お父さんのことも手のひらでうまく転がしてた。

安田

もともと日本女性は強いと。

はい。男子はダメです。

安田

ダメですか。

ダメですねえ。

安田

武家の時代から続く「精神力の強さ」みたいなイメージがあるんですが。

いや、弱いからやってたんですよ。精神力が弱いから武士道が必要だった。強かったら、やらなくていいじゃないですか。

安田

なるほど。

男はすぐに内弁慶になったり、弱い者いじめしたり、偉そうにしたり、自暴自棄になったり。基本的にメンタリティーが弱い。

安田

だから武士道が必要だったと。

はい。弱いから強くなるために、ああいうものを学習しながら育ってきた。

安田

いまだに「女の子は赤いランドセル」みたいな風習もありますけど。

うちの娘は茶色のランドセルですよ。

安田

泉家らしいですね(笑)じゃあ「女子は一歩下がって」みたいなのは、もうなくなっていくと。

もうすでに無くなりつつあります。

安田

男子同様にやってみたら、女子は世界的に活躍できるぐらい強かったと。

そういうことですね。

安田

政治の世界にも、女子がどんどん出てくる可能性はありますか?

どんどん出てきたほうがいい。どう見ても男ばかりの国会のレベルは低いですから。

安田

ただ世界的に見ても、まだまだ政治家のトップは男が多いですよ。

ドイツは女性首相だし、イギリスもそうだったし。確かにまだ少ないですけどね。

安田

それはどうしてだと思います?

やっぱり経済合理性みたいなものを追求すると「男性社会のシンボル」みたいなのが選ばれるんですよ。

安田

トランプみたいな?

はい。「強いアメリカの親分」って感じなので。父性的なシンボル。

安田

国のトップって父性じゃないとダメなんですかね。

いや、そうじゃないと思います。母性を表に出す国があってもぜんぜんいい。日本から出てくるのが一番いい。

安田

え!日本から出てくる可能性ありますか?

“肝っ玉母ちゃん”みたいなのに出てきて欲しい。

安田

たとえば?蓮舫さんとか。

やっぱマツコ・デラックスでしょ。

安田

マツコ・デラックスは男じゃないですか(笑)

でもあれが母性なんですよ。

安田

確かに。包容力ありますもんね。

もうみんな父性のマネジメントには飽き飽きしてる。

安田

波平さんみたいなお父さんって最近いませんもんね。

波平はもう絶滅危惧種です。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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