コミュ障経営者のギモン その6「ロマンス採用」

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なぜこんなツマラナイものにこだわるのだろう。そういう「ちょっと変わった人」っていますよね。市川さんはまさにそういう人。でもそういう人が今の時代にはとても大事。なぜなら一見ビジネスになんの関係もなさそうな、絶対にお金にならなそうなものが、価値を生み出す時代だから。凝り固まった自分の頭をほぐすために、ぜひ一度(騙されたと思って)市川ワールドへ足を踏み入れてみてください。

ロマンス採用

僕、一応、会社やってまして、会長って立場なんですね。
この前、コンビニ行こう立ち上がったら・・・

スタッフ:会長、もしかしてコンビニ行きます?
僕:うん、行くよ♪
スタッフ:コーラ・ゼロ買ってきてもらっていいですか?

・・・って言われて、ちゃんと買ってきましたよ。
「小銭ないから後で良いですか?」って言われてね。
良く言えば、壁がない。
悪く言えば、大して尊敬されてない。
まぁ、そんな感じなので、会社でもスタッフと他愛もない話をよくするんですよね。

ある女性スタッフは外国人に狙いを定めているのか、語学の勉強なのかわかりませんが、外国人の何人かとチャットしてるんですよね。
日本人女性って割と人気あるみたいなんですね。
男性とのやり取りのとき、僕も男性ですから、たまに男性として意見を求められたりするんです。
そんなときは、もっともらしく答えたりしてね。
多分、そのとき、結構なドヤ顔だと思います。

で、この前、その子が出社するなり、「関税で30万以上払わないといけない、どうしよう」って言ってるんですよ。
関税で30万って何買ったの?って思いますよね。
業者か、お前はッ?みたいな。
聞けば、知り合った外国人男性とチャットしてて、その人からプレゼントが届くってことらしいんです。
彼が転職するときに、「頑張って」って言ってくれて嬉しかったのでお礼にプレゼント送るって。
その関税が30万ちょっとかかる、と。
ちなみに、彼女は彼と会ったことはないんですけどね。
彼はシンガポール人でマイケルだか何とかってベタな名前(ニックネームかも)、現在はアメリカかイギリスだかで海洋汚染に関する仕事をしているとか。
プレゼントには、最新のiPhoneや金のネックレスとかが入ってるんだって。
そして、中には関税支払用の現金も入れてあるから、って。
おいおい、それなら、僕も「頑張って」って言っておけばよかったなってマジで思いましたよ。
「応援メッセージ、まだ間に合うか?」って彼女に聞きましたからね。

まぁ、皆で彼女の話を聞いて、「怪しいから受け取り拒否したら良いじゃん」「お金入ってなかったらどうするの」って言ったんですよね。
でも、彼女は気性はちょっと荒めなんだけど、根が真面目な子でね、会ったこともないやつと律儀にやりとりしてるです。
こんな記事を仕事もせずに書いてる僕に言われたくないでしょうけど、その間、彼女は仕事してませんからね。
万一、彼女が担当している経理の仕事が遅れたら、そのマイケルだかのせいだって日本法人の社長にチクらないとって思ってましたよ。

結局、「30万なんてすぐに払えないし・・・」ってことで、悶々と悩んだ末、仕事もせずにお昼をむかえたわけです。
よく考えたら、出社して2、3時間仕事もせずにマイケルのことを考えてたことになりますよね。
僕も同じようなもんですよ。
マイケルめ・・・

仕事はしなくても、お腹は減るもんですね。
彼女と一緒にランチにでかけたとき、詳しく話を聞いてみたんです。

そしたら・・・

・関税30万以上
マイケルが使ったという物流サービスの会社があって、そこから発行されたというトラッキングナンバーを彼から教えてもらった。
彼女はWebサイトを開いて、そこに設置されたチャットボットで確認したところ、荷物はすでに預かってて30万必要だとここで伝えられたそうです。
そして、ここに振り込んでくれと口座(セブン銀行)を教えられた。

・荷物の中に立替用の現金
マイケルに関税の件を伝えると、「30万であってる」と。
立替用の現金150万近くを入れてあるから大丈夫、お釣りはあげる、と。

・・・皆さん、この時点でお気付きでしょう?
ギモンありありですよね。

そもそも関税って結構複雑だから、マイケルだかが精確に算出できないって思うんですよ。
日本だと通関士って国家資格があるくらいですから。
また、「この口座に関税を振り込んでくれ」ってのはまずありえない。
商品と引き換えに現金で支払う、もしくは請求書が来て振り込みって流れだから。
さらに荷物と一緒に150万もの現金を入れるって・・・
そもそも荷物の中に現金を入れて運び出す(運び入れる)のは駄目だから(苦笑)

※会ったこともない男性から贈り物が届くことなんてあり得ないという「そもそもの前のそもそも」は置いておきましょう。

彼女からよくよく話を聞くと、その辺の情報が随分端折られてたわけです。
だって、
・マイケルからプレゼントが届く
・30万もの関税がかかる
・プレゼントの中に現金が入っている
ってことしか話してませんでしたからね。

で、正直に伝えましたよ。

僕:それ、詐欺やで。
彼女:えーーっ!
じゃあ、セブン銀行とかって日本人を狙ってるんですかね・・・
僕:っていうか、そいつも日本人だから。
彼女:えーーっ!

でも、なんでそう思わなかったのかギモンです。
あろうことか振り込みまでしようとしてたみたいで。
でも、彼女は振り込み額に制限をかけてたので、すんでのところで振り込まずに済んでましたが。

典型的な「国際ロマンス詐欺」です。

ロマンスって聞いた彼女は、「別に好きとかじゃないですしッ!」ってムキになるんですね。
端から見てると完全にのぼせ上がってる状態だったのに。
仮に好きとかそういうのを除いても、外国人男性が海外から贈り物を送ってくれるって非日常があったわけです。
こんな事態が発覚する前、「なんか送ってくれるみたいなんで、お返しをしないと♪誕生日が近いみたいなんです。ぬいぐるみってどう思います?」って聞いてきたくらいですからね。

僕:男にプレゼントで、ぬいぐるみはないやろ〜www
彼女:えー、そうですかねぇ。
男性スタッフ:僕、動物園でキーウィ(鳥)のぬいぐるみ買いましたよ♪結構好きなんですよねッ♪
彼女:キーウィのくちばしって一本なんですかね?これどうなってるんです!?
僕:・・・(キーウィって面白すぎてズルいわ)
ってやりとりしましたからね。

・・・話それちゃいましたが、前述のように変なところいっぱいあるのに、何のギモンも持っていなかったわけです。
と言うかですよ、午前中仕事してませんからッ!
経営者の端くれとして言わせていただきたい、キミは完全にのぼせ上がってた、と。

その日の彼女は優しくて、一緒に行ったうどん屋さんで、自分のうどんをちょっとおすそ分けしてくれたり、汁を飛び散らかしながら食べる僕にティッシュを取ってくれたりしました。

そのうどん屋さんに漫画『クロサギ』が置いてあったよ・・・
(詐欺被害にあった人に変わって、詐欺師を騙すクロサギを主人公にした漫画)

そんな弊社、現在、スタッフ募集中です。
うちに入社すれば、国際ロマンス詐欺には引っかからないと思います。
ロマンス採用です。

 

著者/市川 厚(いちかわ あつし)

株式会社ライオンハート 代表取締役会長
https://www.lionheart.co.jp/

LH&creatives Inc.(フィリピン法人) CEO
https://lionheart.asia/

<経歴>
三重県の陶芸家の家に生まれる。
(僕が継がなかったので、父の代で終焉を迎えることになる…)
大学時代、遅めの中二病を発症。経済学部に入ったのに、何を思ったか「ファッションデザイナーになるんや!」と思い立ち、大学を中退。アパレル企業に就職。
ところが、現実は甘くなく、全く使えない僕に業を煮やした社長から、「Webサイト作れないとクビだからな!」と言われ、泣く(T_T)パソコンの電源の付け方も知らなかったけど、気合でWebサイト制作を習得。しかし、実際のところは、言い訳ばかりで全く成長できず・・・怒られて、毎日泣く(T_T)そんな頃、「デザインにも色々ある」と改めて気づいて、広告業界へ転職、広告制作会社のデザイナーとしてのキャリアをスタート。
「今度は言い訳をしない!」と決めて仕事に没頭し、四六時中仕事していたら、黒目がめくれ上がってきて、眼科医から「失明するよ」と言われ、ビビる。2004年勤務先で出会った同僚や友人を誘って起業、有限会社ライオンハートを設立(現 株式会社ライオンハート)。ところが、創業メンバーとあっさり分裂、人間不信に。残ったメンバーと再スタート。
2014年、設立10周年を機に、創業メンバーで唯一残っていた人間を日本法人の社長にし、自身は会長になり動きやすい状態を創る。この頃からブランディングエージェンシーを名乗り始める。
2016年、フィリピン(マニラ)にITアウトソーシング企業(LH&creatives Inc.)を設立。設立準備期間から家族とともに移り住み、フィリピンで3年半を過ごす。
フィリピン人マネジメントを通して、猜疑心の塊になり、性悪説に変わる。
2019年6月、日本に帰国し、日本法人のマネジメントに復帰。社内コミュニケーションを充実させるために席替えしたり、誰も掃除しない椅子をきれいにしたり、「眠いときはしゃべった方が良いよねッ」ってスタッフに話しかけながら仕事をするなど、独自のインナー・ブランディングの理論を実験していたところ、会社の調子が上がった。そもそもブランディングってなんだ?と思っていたところに、BFIの安田さんと出会い、勝手にご縁を感じてコンサルを受けてみる。そしたら安田さんに誘われ、2020年、anote konoteに参加することに。

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