【読むPodcast | マネトレ80-後半】「純資産2000万の企業を1億で買収しちゃう」第199回

「M&Aで純資産2,000万の会社を1億で買うことを検討しています。何か税務上メリットがある買い方はありますか?」とのご質問。M&Aにも種類があります。引き継ぐもの、回避するものを正確に把握しないとですね。
(音声はこちらから。)
大久保
出ていくキャッシュって1億じゃん。ってなると、8,000万は「のれん」になるんだよね。
円道
はあ。
大久保

のれんって、昔でいう営業権か。8,000万の簿外の価値を認めて買ってるんで。

円道

ああ、そういう意味ですね。

大久保

そうそうそう。

円道

あ、この概念を「のれん」と呼ぶんですね。

大久保
そう、「のれん」と呼ぶ。これが5年で償却なんで。
円道

あ、なるほど。そういうことですね。

大久保
そう。そうすると8,000万損金取れるっていう意味では、吸収合併するか、まあ、あとは……
円道
「のれん」が固定資産になるんですか?
大久保

「のれん」が固定資産になる。

円道

で、5年償却なんですね。

大久保
そうそうそうそう。それで損金取れるので。逆に財務をよく見せようと……まあ、でも連結で見られちゃうからなんとも言えないけど、連結で見ないなら1億円のまま置いておくっていう手もあるだろうけど、ただ、そんだけ収益出るんだろうから取り込んで、償却して、その利益を消していくみたいな。
円道
なるほど。
大久保

たとえば年間……そっか、2,000万ぐらい利益出てるんだろうからね、そうするとほとんど消せるじゃない?

円道
うんうん。
大久保

っていうので落としていくっていうのがあるけど。あとは税務だけじゃなくて、子会社のまま置いとけば、たとえばデューデリをちゃんとしてればいいんだけど、この子会社に関する簿外債務、隠れた債務っていうのは、ちゃんと調査しないと、吸収合併しちゃうとその会社にくっついちゃうから。そうすると、もともと持ってた会社の債務になっちゃうっていうリスクもあるので、そこを避けたいんだったら事業譲渡、サーバー保守の会社の事業の中身、法人という箱は置いといて、事業だけを……

円道
ああ、そういう意味。
大久保
そうそうそう。
円道
M&Aじゃないっていうことですか?
大久保

M&Aだよ。

円道

M&Aのやり方のひとつですね。

大久保

そうそうそう。M&Aって幅広いんで、分割とか組織再編みたいなのを含……どうやって取得するか。まあ、基本は株式取得、合併、事業譲渡ぐらいだろうけど。で、事業譲渡をすればその負債を引き継がないで、単純にさっき言った「サーバーの5,000万と負債3,000万を1億で買ったよ」って仕訳になるから、営業権がついてくるというね。

円道

営業権というのは?

大久保

ああ、のれん。

円道

のれんのことですか。

大久保

のれんが結局ついてきて、うん。

円道
え、いまのは何が違ったんですか?事業譲渡で買った場合って何が違う?
大久保

事業譲渡で買った場合は、買収先の会社に簿外債務があった場合に置いてこれるっていう。置いてこれるというか、リスクを負わない。

円道

え、B/S上でいうとどうなるんですか?

大久保
B/Sは変わんない。
円道
変わんないんだ。
大久保
簿外の債務があったときに、承継してないのでリスクを回避できるっていう。
円道

ちょっといいですか、聞いて。

大久保

はい。

円道

「簿外債務」っていうのは?

大久保

簿外債務っていうのは、たとえばよくあるのは未払い残業とか。

円道

ほぉほぉほぉほぉ。

大久保

あとは「ほんとは連帯保証してる」とか。で、その連帯保証先が飛んじゃって、みたいなので。

円道

ああ、なるほど。そういう意味ね。

大久保
そうそうそう。求償権とかが出てきちゃうっていう可能性はあるので。まあ、ちゃんとデューデリすれば……
円道

そういうことっすね。デューデリしないで「くっついてきたぞ」の、よくあるパターンの話です?

大久保
まあ、あんまりないけど、意外に、この間も何かの案件で、契約したあとに「実は保証してるのが1,000万あるんだよね、ハハ」みたいな。「“ハハ”じゃねえだろ!」みたいな話聞いたけど(笑)
円道

それって詐欺的な話にはならないんですか?

大久保
いや、「なんか言い出せなかった」みたいな、「ほんと!?それ」みたいな話したんだけどさ(笑)小規模ディールだと意外に……
円道
あるんだ。
大久保

そうそう。「いや、実はハンコ押しちゃってるのがあるんだよね」みたいな(笑)

円道
なるほど。わかりやすい。簿外債務ですね。
大久保

まあ、あんまりないとは思うけど。

円道
あった場合に、置いてくるときに、それを譲渡でやると。
大久保

そう。譲渡でやると契約をぜんぶ書かなきゃいけないから、すげー大変は大変だよね。

円道

ああ、そういうこと。実務的な話ですか。

大久保

実務的。だって、社員も解雇じゃないけど転籍みたいな形で。

円道

なるほど。で、先方との契約もぜんぶ巻き直しか。

大久保

そう、契約変えんのがね。そのときにOK出るかどうかとかもあるから。

円道

たしかに。

大久保
あと、事業譲渡でやると向こう側が8,000万の利益出ちゃうから。
円道

「向こう側」っていうのは売る側?

大久保

売る側。要は2,000万しかないものを1億で売ってるから、8,000万は法人税かかるんで。

円道
なるほど。
大久保
株だったら20パーで済むけど。っていうデメリットがあるから、たぶん事業譲渡は想定しづらいけど。ま、吸収合併でのれんを償却する感じじゃない。
円道

そういうことですか。これ、事業譲渡じゃない場合は、売却益はどういう計算になりますか?

大久保

株の売却だから個人で20パー。まあ、個人が持ってるか知らないけど。

円道
あ、そっかそっか、そういうことね。法人として事業譲渡してるので、8,000万が法人の利益になるんで、オーナーとして売却するので……
大久保

そうそうそうそう、利益になるっていう、それで変わってくるっていう。

円道

I See.

大久保
得意げに(笑)
円道

あ~今日は難しぃ~っ!

大久保
たしかに(笑)
円道
今日は難しっ。
大久保

与太長かったから(笑)。伝わるかドキドキしながらしゃべってた(笑)

円道

いや、勉強になりましたね。なるほど。でも、素人しては、M&Aにも売り方がいくつかあって、株式譲渡もあれば事業譲渡みたいなのもあったり。

大久保

そうだね。そのへんはやっぱスキームをちゃんと、税務も入れて考えないといけない。それこそ、再生とかM&Aのときは税務で大きく差が出る可能性があるんだよ。

円道
税務ですか。
大久保

うん。

円道

じゃあ、まさにこの方がおっしゃってるとおり、「こういうディールなんだけど、じゃあ税務上メリットがある方法はあるのか」っていうのは、プロからすると「はいはい、そういう質問ね」っていう感じだったんですね。

大久保

っていうか、それ、仲介ちゃんとつくらせろよと思って(笑)

円道
ああ、なるほど。ぜひColorzでご相談ください。
大久保

いえいえ(笑)

円道

というわけで大久保先生、ありがとうございました。

大久保
ありがとうございまーす。

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