小さなブルーオーシャンを追え
第3回『ともに豊かになるサイクル』

ほとんどの人が聞いたこともない木型というビジネス。シュリンクし続ける業界において、過去最高の利益・利益率を生み出し続ける株式会社ノダ。その秘密に迫ります。

小さなブルーオーシャンを追え
〜木型屋が見つけたブルーオーシャン〜

第3回『ともに豊かになるサイクル』

安田

「海外に出たことによって、成功した」って話でしたよね。

野田

はい、そうです。

安田

実は、東南アジアに進出した中小企業さん、他にも知ってるんですけど。

野田

はい。

安田

正直いって、成功してる会社をあまり見たことがなくて。

野田

そうなんですか?

安田

だって、海外行っただけで、そんなに儲かるんだったら「みんな行くだろ」って話ですよ。

野田

どうしてなんでしょうね。

安田

その秘密を突き止めたいです。そもそも海外進出しようと考えたのは、どんなきっかけだったんですか?

野田

中国で「手伝ってくれ」って話が12年前にあったんです。

安田

じゃあ、たまたま、そういう話になったと?

野田

そうです。それで「ロイヤリティーはいらないんで、データセンターを作らせてほしい」とお願いしました。

安田

データセンター?

野田

はい。木型作る時にはデータを書く必要があります。その作業を中国の方にやっていただこうと考えたんです。

安田

中国で木型を作るということですか?

野田

いえ、木型を作るのは日本にいる職人。データだけ中国で作ってもらって、日本に送ってもらう。

安田

それはコスト削減が狙いですか?

野田

それもあるんですけど、当時、日本の現場はかなりのハードワークだったんです。人を募集しても来ないし、何とかしたかった。

安田

で、やってみてどうだったんですか?

野田

1年半ぐらいで、それなりに手応えがつかめるようになりました。それで「どこかに進出しよう」となり、たまたま話があったベトナムに行きました。

安田

中国で、そのまま立ち上げる気は、なかったのですか?

野田

なかったです。

安田

なぜ?

野田

日本に好感をもっている国に行きたかったから。

安田

親日の国でやりたかったってことですか?

野田

はい。加えて、自分も行ってみたかった国だったので。

安田

順番でいくと、最初がベトナムで、次がタイでしたっけ?

野田

二番目はタイですね。

安田

で、その次がフィリピンという順番。

野田

はい、そうです。

安田

ベトナムでは、どういうことから始めたんですか?

野田

木型とデータセンターの二本柱でスタートしました。

安田

いきなり二本柱ですか?

野田

現地で木型が売れるかどうか、やってみないと分からなかったので。

安田

なるほど。リスクヘッジのために、二本柱体制にしたと。

野田

はい。データセンターは実績がありましたんで。

安田

で、木型は売れたんですか?

野田

結果的には、すごく売れるようになりました。

安田

そこに行き着くまでのプロセスを、教えて欲しいのですが。

野田

今ではもう、ウチの勝ちパターンになってるんですけど。

安田

はい。

野田

まずは日本人がひとりで行って、日系企業を回ります。

安田

まだその段階では、現地工場はないんですよね?

野田

はい。データ作成まで現地でやって、木型は日本で作っていました。

安田

なるほど。で、仕事がどんどん増えていく。

野田

いえ、日系企業だけでは、すぐに行き尽くしてしまいます。

安田

どうするんですか?

野田

日本から行ったスタッフは英語もベトナム語も話せませんので、現地採用します。

安田

採用しても言葉が通じないじゃないですか?

野田

はい。だから日本語が話せるベトナム人を、現地採用するわけです。

安田

日本語が話せるベトナム人は、たくさんいるんですか?

野田

勉強している人はたくさんいます。日本企業は人気があるので採用は難しくありません。

安田

それで、彼らにベトナム企業を回ってもらうと。

野田

ベトナムのローカル企業だけでなく、ベトナムに進出している外資系企業も全部回ってもらいます。

安田

なるほど。そうやって現地の仕事を増やしていくわけですね。製造はずっと日本のままですか?

野田

この段階になってくると、現地工場の立ち上げに入って行きます。

安田

現地工場を立ち上げて、そこで働く人は現地採用するんですか?

野田

もちろん現地採用です。

安田

教育はどうしたんですか?

野田

まずは日本から職人を送って、現地で仕事をしながら教育担当もやってもらう。

安田

大変ですね。職人さん嫌がりませんか?

野田

期間限定ですし、日本では教える若い子もいないので、楽しんでましたね。

安田

確かに。教える相手もいないと、張り合いないですもんね。

野田

今は、補助金の制度を使って、日本で研修を受けてもらってます。

安田

日本で育てているのですか?

野田

日本で職人が技術を教え、現地のノダの工場に戻って働いてもらってます。

安田

日本での研修期間はどのくらいですか?

野田

1年です。

安田

今では職人さんは、ほとんど現地には行かないんですか?

野田

今は、ほとんど行きません。現地の子が現地の子を教えるサイクルが、出来上がってます。

安田

今、ベトナムは営業も工場も、ほとんどベトナム人で回ってるんですか?

野田

トップの社長だけが日本人で、韓国人の営業がひとりと、あとは全部ベトナム人です。

安田

ベトナムだけで、年間どのぐらい利益が出るんですか?

野田

ベトナムだけで、今期は7,000万ぐらい。

安田

ベトナムのスタッフさんは、現地の企業さんに比べたら収入は高いんですか?

野田

現地の日系大手と比べて、遜色ないぐらいには高いです。

安田

現地のベトナム企業に比べたら?

野田

もちろん現地の企業と比べたら、報酬はすごくいいです。

安田

じゃあ、現地スタッフは、みんな喜んでますか?

野田

はい。報酬だけじゃなく労働環境も大きいです。ローカル企業になると、プレハブ工場でエアコンもないところが、いくらでもありますから。

安田

現地のスタッフは、労働環境が良くて、収入もいい。そして、日本の本体は現地からもたらされる利益で潤っていると。

野田

ベトナムに進出した際にかけたお金は、もうすでに回収しました。今は年間2,500万ぐらいの配当をいただいてます。

安田

じゃあ、その利益によって、国内で働いてる社員さんの収入も増え、ハードだった労働環境も改善されていると。

野田

そうです。

安田

これぞwin-winですね。

・・・第4回へ続く・・・


野田 隆昌 (のだ たかまさ)
株式会社ノダ 代表取締役
https://www.kigataya.com/
ノダの海外ノウハウをシェア!個社ごとに職場見学会を実施。

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