原因はいつも後付け 第11回 「大きくしない、という選択」

崩れゆく多店舗モデル

安定した事業モデルをベースに店舗を拡大し、収益の増加を図る。
計画自体に問題はなかったはずですが、3店舗を出店した2006年の結果は、私の想像とは全く異なるものとなりました。

店舗が増えるに連れ、全体的に各店舗の売上が減少。
売上の減少に連動する形で利益も下がり、店舗が増えたはずなのに利益が増えていかないのです。

原因はすぐ分かりました。
完成したと思っていた事業モデルが機能しなくなっていたのです。

3店舗までは強みだったはずのお店の自家製商品や接客するスタッフの個性と言った売りが弱みに替わり、それまで否定していたマニュアル化が必要になっていました。
店舗の拡大と共に、強みと弱みが真逆になっていたのです。

そして当時の私には、少数店舗経営と多店舗経営では利益の作り方が全く違うという事が分かっていなかったのです。

振り返れば、私が開業した2002年。
当時は事業を拡大しないという選択肢を考える人はほとんどいなかった様に思います。

あれから17年経った2019年の現在。
雇用環境の変化や、人口減少により多店舗化をするメリットが減る一方、多店舗化のデメリットは確実に増えてきているように感じます。

環境の変化に伴い、企業の選択すべき戦略も変わります。

重要なのは、少数店舗の経営と多店舗展開を前提とした経営のやり方は全く異なるということ。
そして、それを途中で変更するのは強みと弱みが逆転するため、非常に危険が伴うということ。

だから、店舗を増やす前にどちらのモデルで経営するのかを考える。

これまでの拡大思考だけの価値観を捨てて、必要以上には「大きくしない」という選択肢を持つこと。
お店を増やすことより、今あるお店の利益を最大化することの方が報酬を増やしやすくなっている可能性があること。

これからの時代は「大きくしない」という決断をする事も、重要な経営戦略1つなのだと思います。

著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計28店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。

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