さよなら採用ビジネス 第74回「eスポーツと車の未来」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第73回『外食上場企業のジレンマ』

 第74回「eスポーツと車の未来」 


安田

ここ数年ぜんぜん車を運転してません。

石塚

ポルシェを手放して以来ですか?

安田

ポルシェ懐かしいです(笑)お金があった時代。都内ではもう車は必要ないですし。

石塚

車いらないし、歩いて楽しいところがいっぱいあるし。

安田

タクシーのほうが安いし便利っていうのもあります。

石塚

バスも電車もいっぱい走ってますしね。

安田

マンションの下にレンタカー屋があるのでいつでも借りれますし。本当にもう車を持つ意味がないです。

石塚

安田さんみたいな人がどんどん増えてますよ。

安田

今回の東京モーターショーでトヨタの社長が言ってたんですけど。「クルマから人へ」って。あれ、どういう意味ですか?

石塚

言ってる本人もよくわかってないと思いますよ(笑)

安田

え!そうなんですか?

石塚

単に「こういう新しい車が出た」では、もう人が集まらないってことですよ。

安田

参加するメーカーさんも減りましたよね。

石塚

まずドイツの有名メーカーはほとんど出てない。

安田

ドイツ車が?意外ですね。

石塚

メルセデスもBMWも出てないですよ。

安田

来場者の数が減ってるからですか。

石塚

僕が初めて東京に出てきたのが1990年なんですけど。そのとき幕張でやってた東京モーターショーを見にいったんですよ。

安田

当時は凄かったでしょ。

石塚

すっごい人でしたね。あのときに比べたらもう閑古鳥が鳴いてるらしいです。

安田

私は行ったことないんですけど。カメラ小僧がいて、コンパニオンの写真を撮りまくって、すごく盛り上がってるイメージなんですけど。それってもう古いですか?

石塚

そんな人よっぽどレアなマニアですね。

安田

「家族で来る人を増やす」ってトヨタの社長は言ってました。小さい頃から「車って楽しいもんだ」っていうのを印象づけたいみたいです。

石塚

30年遅い。

安田

遅いですか。

石塚

でもモータリゼーションの未来って、たぶんトヨタの社長ですら読み切れないんじゃないですかね。

安田

どうなるか分かりませんよね。ホントに。

石塚

だから、いろんなことをやるっていう。ちなみに子どもの取り込みでいちばん成功してるのはマクドナルドです。

安田

へぇ、そうなんですか。

石塚

マクドナルドの3大強化ポイントというのがあって、そのひとつが「キッズ」なんですよ。

安田

たしかに昔からキッズスペースとかハッピーセットとかありますもんね。

石塚

はい。よく考えられてます。

安田

それに比べると車業界は30年遅れてると。

石塚

いまトヨタがやってる取り組みが成功したとして、結果が出るのは最短で20年後ですから。

安田

20年もたったら、そもそも車がどうなってるか分からないですよね。

石塚

分からないです。

安田

そういう意味で完全に手を打つのが遅れてると。

石塚

そういうことです。

安田

ドイツのメーカーは出ないのに、日本のメーカーが出続けるのはなぜですか?

石塚

東京モーターショーって新型車を出すだけじゃなく、「未来をこう創ります」っていうコンセプトを展示する場なので。

安田

じゃあドイツのメーカーが参加しないのはなぜですか?

石塚

「日本ではもうそれほど車は売れない」って見てるんでしょうね。

安田
なるほど。だけど日本のメーカーは日本で売るしかないと。
石塚

結局トヨタなんて黙ってても売れますからね。

安田

いまのところはそうですね。

石塚

ちょっと前までは若者が当たり前のように車を買ったんですけど。いまの20代で「車ものすごい好き」なんて逆に珍しいです。

安田

趣味で好きな人はいますけどね。

石塚

車を所有することにこだわる人は劇的に減ってます。

安田

地方に行くと必要不可欠なのでひとり1台って感じですけど。

石塚

だから今の主流はみんな軽ワゴン。あのホンダがですよ?僕とか安田さんがイメージするホンダってモータースポーツのイメージだったじゃないですか。

安田

カッコ良かったですよね。ホンダは。

石塚

だけど今の20代がホンダっていったら「N BOX」っていう軽ワゴンのメーカー。それだけ変わっちゃったってことですよ。

安田

じゃあ「クルマから人へ」というコンセプトはつくってみたものの、何やっていいのか分からないってことですか?

石塚

そう思いますよ。僕が見てても何をしたいのかよくわからないし。すごく必死になっていろんなことをやってる感じはしますけど。

安田

まずは子供を取り込みたいんでしょうね。

石塚

子どもを狙うんだったら「運転シミュレーションゲーム」みたいなものに、もっと力を入れるべきですよ。

安田

任天堂とかと組んで?

石塚

いや、あれだけの人がいれば自前でゲーム事業できます。

安田

出来ますか?

石塚

だってドライブシミュレーターをつくるためのデータとか、全部持ってるわけじゃないですか。

安田

確かに。

石塚

走行速度に応じてどう風景が変わるとか。世界のどこを走るとどんなふうに車窓が流れるとか。春夏秋冬、朝昼晩、雨風みたいなリアルをゲームに取り入れればいい。

安田

ゲームを入口にして車を買わせるってことですか?

石塚

そうです。じつは今F1ドライバーって、ソニーのプレステでグランツーリスモやっていてとか、そこがきっかけでなってるのが多いんですよ。

安田

へぇ。

石塚

ゲームで興味を持って、養成スクールもシミュレーションからスタートさせて。

安田

そうなんですか?

石塚

かなりの精度らしいですよ。シミュレーションがうまいと実車に乗せるっていう流れ。で、それが結構成功し始めてるんですよ、モーターレーシングの世界では。

安田

でもレースってかなり特殊な世界ですよね。何百キロという速度で競争することに人は興味を持ち続けるんでしょうか。

石塚

今はフォーミュラEっていうのがあって。知ってますか?電気で走るフォーミュラレース。

安田

いや、知りません。そんなの観たい人いるんですか?ぜんぜん迫力なさそうですけど。

石塚

興業としては成立してます。いまはF1も相当安全になりましたから。

安田

レース=危険はもう古いと。

石塚

我々世代はどうしてもアイルトン・セナの事故死イメージがありますけど。ドライブシミュレーターも発達して安全性はかなり高くなってます。

安田

でも安全性を優先するならeスポーツでもいいわけで。実際に車に乗って走らなくてもゲームでレーサーとして戦えば済むことじゃないですか。

石塚

だからこそCMで「誰々が乗ってるからかっこいい」みたいなプロモーションはもう古いわけです。

安田

CMよりもゲームやシミュレーションで囲い込めと。

石塚

そこってすごい白地ですから。小学校1年生でもVRとシミュレーションさえあれば車の運転ができるわけで。トヨタはそこにもっと経営資源を投入すべきです。


石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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