さよなら採用ビジネス 第90回「確信犯は誰?」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第89回『自覚がないのは誰?』

 第90回「確信犯は誰?」 


安田

あの「超ブラック」と言われたワタミが、ホワイト企業として表彰されました。

石塚

はいはい(笑)

安田

「ついにワタミもホワイト企業になったか」みたいな記事で。でも実は、お金払えば審査が受けられるみたいで「タイトルを金で買ってるだけ」とも言われてます。

石塚

じつは僕、昔ワタミさんを担当してたんですよ。

安田

え!どんな会社なんですか?

石塚

もう時効だから言っていいと思いますけど、“遠くで見る富士山”ですね。

安田

遠くで見る富士山?遠くから見たら美しいってことですか?

石塚

遠くから見たら美しいけど、近くに寄ったら“がれきの山”です。

安田

ゴミだらけってことですか。

石塚

目を覆いたくなるような。

安田

でもそれは昔の話ですよね?変わる前の。

石塚

僕は会社って、そんなに変わらないと思います。

安田

昔は「365日、死ぬまで働け」みたいな行動指針があったとか。

石塚

ありましたね。

安田

「働くこと自体が報酬だ」っていう価値観で。

石塚

多くの企業にとってそれが普通の価値観でしたから。

安田

確かに。「24時間働けますか?」ってリゲインのCMが普通に流れてましたもんね。

石塚

はい。それ聞いて我々も頑張ったじゃないですか。

安田

そんな雰囲気でしたね。私は苦手でしたけど。

石塚

時代は変わりましたよ。安田さんが住みやすい時代になりました。

安田

ワタミも変わったんじゃないですか?

石塚

う〜ん。そもそも時代が変わる前から、現場はかなり疲弊してましたから。

安田

じゃあ、現場のモチベーションは当時から低かった?

石塚

まあ、疲れますよね。あの会社に勤めてると。

安田

なぜそんなに疲れるんですか?

石塚

だって、お店閉めて帰ると2時とか3時ですよ。それでも朝7時からの店長会議に行かなくちゃいけない。

安田

それはちょっと大変ですね。

石塚

また厳しいんですよ。この店長会議が。

安田

どんな風に?

石塚

「お客様からの声」というカードが、渡邉会長のところに集められていて。

安田

お客様カード?

石塚

たとえば僕がA店の店長で「A店にこの間行ったけど、チョコレートパフェ頼んで2時間も出てこなかった」って書いてある。

安田

で、怒られる。

石塚

ネチネチと。「おい石塚。チョコレートパフェって2時間もかかるのか?」「なあ、2時間ってどうしてかかるんだ?」みたいな。

安田

うわあ。キツイですね。

石塚

それを朝からやるんですよ。傍目で見てるだけで「しんどいな」と思いました。

安田

睡眠不足でそれはしんどい。

石塚

会議は7階でやってるんですけど「おまえ、そこからすぐ飛び降りろ!」とか言うんですよ。

安田

恐ろしい。

石塚

いまだったら全部アウトな話です。でも新卒の社員ばかりだったので、みんなそれが普通の感覚になってて。

安田

洗脳ですね。

石塚

はい。そういう長い社歴の中で洗脳されてきた人たちが、簡単に変わるとは思えない。

安田

今でもそれを「当たり前だ」と思ってる人が幹部になってると?

石塚

染まれない人は途中で辞めちゃいますから。それがスタンダードになってる人が上に行く。

安田

なるほど。しかも会長まで戻ってきちゃいましたし。

石塚

そうなんです。みんなが「居酒屋事業をなんとかしよう」って必死に支えてたところに。

安田

自分は政治活動やってて、気楽なもんですよね。

石塚

「おまえら居酒屋事業にこだわってるからダメなんだ!」って。

安田

いきなりですか?

石塚

「ワタミは創業精神で柔軟にいろんな事業をやってきたんだ」って。

安田

自分が散々評判を落としておいて酷いですね。

石塚

いつもテレビ映りばっかり気にしてる。

安田

「絶対に戻らない」って言ってましたよね?

石塚

「仕方がなく戻ってやった」みたいな感じです。

安田

インタビューでは「俺がいると甘えが出るから」「戻らないと断言しなくちゃいけなかった」って言ってました。

石塚

「どっちが甘えてんだ」って感じですよ。社員からしたら。

安田

ですよね。でも社内では相変わらずカリスマなんでしょ?

石塚

かつてのカリスマ性はそれはすごかったですよ。

安田

カリスマというより恐怖だったんじゃ?

石塚

昔は恐怖というより憧れっていう部分が強かったです。

安田

へえ。そうなんですか。

石塚

はい。会うとやられますよ。直筆の手紙来るし。人の心をバッとつかむのは天才的に上手。ただ、ずっと働くのは厳しいです。

安田

それは今でも?

石塚

そんなに体制が変わってるとは思えませんね。昔から飲酒運転死亡事故とか、過労死とか、労務問題が山積してる会社なので。

安田

私はべつに外食という事業を否定するつもりはないんですけど。居酒屋チェーンって安さを売りにしてるわけですよね。

石塚

もちろん。

安田

「いずれ本部に引き上げる」とか言ったって現場はなくならないわけで。出世してもせいぜい店長って人を量産せざるをえない。

石塚

おっしゃるとおり。

安田

店長の給料ってたかが知れてるじゃないですか。「仕事が報酬だ」って言いますけど、じゃあ渡邉さん自身はどうなんだって思っちゃいます。

石塚

本人は億万長者ですからね。

安田

そうですよね。自分も同じ給料でやるんだったら説得力あるんですけど。自分はぜんぜん違うわけじゃないですか。

石塚

ほんとその通りだと思います。

安田

単なる兵隊ですもんね。社員は。

石塚

しかも息子さんを入れたじゃないですか。「昔なんて言ってたんだ、あなたは」って感じ。

安田

「同族はやらない」って言ってたんですか?

石塚

そうです。いやもう、僕が見た中でもベスト3に入る搾取企業ですよ、ワタミは。それをどう美しく見せるかっていう。

安田

近くに行ったら死人だらけみたいな(笑)

石塚

いやもう、「二百三高地」か「ワタミフードサービス」かっていう感じ。

安田

渡邉さんは自分で「搾取モデルだ」と分かってやってるんですか?

石塚

確信犯だと思います。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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