小さなブルーオーシャンに出会う旅 第3回「2㌔のデニムを誰が履くのか?」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

第3回「2㌔のデニムを誰が履くのか?」


ゴールドラッシュに湧く1870年の北米で生まれたのがジーンズの始まり。もともとは鉱夫の作業着だったジーンズは、いまや、年齢は性別を問わず、世界中で履かれているファッション衣料ですね。生地や裁縫、部材はほぼ同じにも関わらず、デザイナーブランドの高級品なジーンズもあれば、一般向けの廉価なジーンズもあり、愛好家はかなりの金額を出してコレクションをしている人もいれば、ただただ履きつぶしていく人もいる…。こう言うとなんだか不思議なファッションアイテムですね。
ちなみに、「デニム」「ジーンズ」「ジーパン」と呼称もさまざまですが、「デニム」はそもそも「生地」のことを指します。一方、「ジーンズ」は、「デニムなどの厚手素材の生地を使ったパンツ」のことを指します。「ジーンズ(Jeans)」は海外でも通じるれっきとした英単語ですが、「ジーパン」は、「ジーンズ」+「パンツ」の和製英語なので、日本以外では通じませんのでご注意ください。

愛好家やライダーに大絶賛!重さは一般的なジーンズの倍あるジーンズ

厚手の生地を使い、重さは一般的なジーンズの約2倍の約2kg、分厚い生地が柔らかくなるまで、履いたり、脱いだりも一苦労、留め金を止めるのも大変なためフロントボタンの開閉は相当なパワープレイなんだとか(指の怪我に注意してください、との呼びかけがあるとか)。
伸縮性のある素材だとか、薄手の生地で履き心地のが主流である中、こんなに面倒なジーンズが売れるのだろうか?と思うのですが、価格3万4,650円という高価格でありながら、
品薄状態を超え、品切れ状態になるのだそうです。このジーンズを製造、販売しているのが、千葉県市川市にある株式会社サカイさん。「ジーパンセンターサカイ」を千葉と東京に1店舗ずつ経営するジーンズ専門店です。店舗には約30種類8,000本のジーンズの中に、この重さ2kgの分厚いジーンズが置いてあるんだそうです。

小さなブルーオーシャンを生み出しているもの

このなんとも面倒くさそうなジーンズは販売し始めると口コミでじわじわと広がっていったんだそうです。大量生産ができないため生産量は月に20本ほどだそうですが、すぐに売れてしまうとのこと。どんな人がこのジーンズを買うのか、というと、30、40代のジーンズ愛好家やバイクにのるいわゆるライダーの人たち。特にバイク好きの人たちは、季節に関わらずバイクに乗り続けます。冬になれば当然、寒い中、風を切ってバイクに乗る。そんな時にこのジーンズがいいというわけです。
これを生み出した酒井会長は、「『いかにもジーパン』というものを目指した。こだわりを求めてくれる顧客に履いてもらえれば」と話しているらしいですが、まさに「時代を逆行している」ということが小さなブルーオーシャンを生み出しているでしょう。
更に、愛好家の人からすれば、これだけのジーンズですから、職人さんの苦労も手にとるようにわかるのでしょう。これも小さなブルーオーシャンを生み出して要因だと思います。

 


佐藤洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。
中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

 

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