小さなブルーオーシャンに出会う旅 第5回「コンビニの6.6倍もある市場の中で見つけた小さなブルーオーシャン。」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

第5回「コンビニの6.6倍もある市場の中で見つけた小さなブルーオーシャン。


コンビニエンスストアというのは便利ですね。ちょっと買い物したい時や困った時、身近にある存在です。日本フランチャイズチェーン協会の発表によると、2019年10月段階でのコンビニエンスストアの店舗数は全国で5万5,688店舗だそうです。さて、その4.5倍以上も店舗数がある業界をご存知でしょうか?

コンビニの6.6倍以上の店舗数がある業界

全国のコンビニエンスストア店舗数5万5,688店舗の6.6倍以上、つまり全国に35万軒以上の店舗施設がある業界とは、理美容業界です。2019年10月段階で全国の理容室が「11万9,053施設」、美容室が「25万1,140施設」、合計37万193施設。こんなにあるんですね。確かに歩いていると、大小関わらずいたるところで理美容室に出合います。日本の総人口が1億3,000万人弱。平均すると1施設あたりの顧客数は340人。一回あたりの利用で平均約5,000円の支払いだとすると、170万円。仮に毎月1回の利用してもらえると、170万円×12=2,040万円。つまり理美容室の平均年商は2,040万円くらい。あくまで1施設平均なので、大手チェーン店や人気理美容室はしっかりと売上を確保できているかもしれません。しかし、逆に売上を確保できていないところもあるのではないでしょうか?現に倒産している数もかなりあるそうで…。かなりのレッドオーシャンなのではないかと想像できます。

月平均340人利用の業界で、月1,000人近くの人が利用する

株式会社C&Pという会社が関東を中心に全国で56店舗を展開している「チョキペタ」。一見するといわゆる「低価格理容チェーン」のようにも思えます。しかし、ただ安いというだけで、月に1店舗施設あたり1,000人もの人が理容するでしょうか?(つまり全店舗で月5万人以上が利用している?!)低価格理容チェーンは、たくさんあります。あちこちで見かける理美容施設です。どこでもいいじゃないですか?でも、この「チョキペタ」が利用される。なぜでしょう?どうしてでしょう?「安い」「低価格」というだけが選ばれる理由ではないようです。

小さなブルーオーシャンを生み出しているものは何なのか?

多くの理美容施設は「スタイリング」をメインとして、綺麗にすること、素敵にすることが主目的です。当然、利用客も綺麗になること、素敵になることを期待して訪問します(期待通りでなければ、顧客は離れて行くということですね)。このチョキペタさんは「メンテナンスサロン」がメインです。伸びた前髪をカットしたい、傷んできた毛先だけでもカットしたい、根元の白髪が気になるなどなど、気になってきたらすぐにメンテナンスをして、気軽にヘアスタイルをキープするということをコンセプトにしています。

さらに、施術(髪を切る)という行為の他に、髪を洗ったり、乾かしたり、セットしたり、と綺麗、素敵にするための行為が理美容施設ですが、チョキピタさんは最低限のことしか行ないません。それ以外は、セルフサービスです。世の中には、いろいろなサービスを付けても低価格という商品・サービスはたくさんあります。チョキピタさんは必要ないもの、あるいは自分でできることはやってもらう、いわゆる「引き算」で低価格のサービスを行なっているように見えます。

メンテナンス、低価格、セルフサービスによって運営しているチョキピタさんを支持した層は、なんと女性たちでした。「綺麗」や「素敵」に敏感な女性に支持されたのでしょうか?女性と言っても「育児」をしている女性たちに支持されたのです。育児に追われる女性は美容室に行く暇などありません。お金も自分への投資よりも、まずお子さんへ。これが母親の心理です。そうした育児をしている世の女性たちが、メンテナンス、低価格、セルフサービスのチョキピタさんを支持しているのです。

株式会社C&Pさんの出店もそれを意識してなのか、スーパーマーケットやホームセンターの一角に店舗を出しています。育児をしながら、買い物に行く母親が、買い物ついでに、気軽に、低価格で、ヘアメンテナンスだけをして帰る。さまざまな仕掛けが小さなブルーオーシャンを生み出していると思います。

 


佐藤洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。
中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

 

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