泉一也の『日本人の取扱説明書』第6回「陰の国、日本」

 

ここ20年ぐらいインターネットが世界中に通じ、世界中からアクセスできるという場ができた。その場で誰もが自分発信、つまりアピールできるweb2.0時代になり、twitterにfacebookにinstagramといったSNSサービスが一気に広まった。全て米国という陽を極めている社会から生まれたが、これは自然なことである。

また、米国が生んだ大ヒットのiPhoneは花形商品であるが、iPhoneを陰で支える部品の多くは日本企業が作ってきた。しかし最近は台湾や中国の企業に押されている。日本の陰の文化が廃れてきた現れかもしれない。

では、日本の会社はどう陰を極めていけばいいのか。陰を極めたモデル企業がある。それはコクヨである。ちなみに場活という言葉は、2006年当時のコクヨS&T社長、森川卓也さんから頂いた言葉だが、そのコクヨの創業者である黒田善太郎さんの残された言葉に「カスの商売」というのがある。カスとは超陰気な言葉だ。カスにこそ誰もが見向きもしない価値が隠されていて、そこを誠実に仕事にすることで人様に喜ばれる商売ができるのだ。その原点があったからこそ年間1億冊も売れるキャンパスノートをはじめコクヨの定番商品が生まれた。カスから価値が生まれコクヨは世界に広がっている。

W杯を見てもわかるように、日本のサポーターはゴミを拾う。その姿が美しい。偽善的でもアピールでもないからだ。つまりゴミやカスを大事にできるのが日本人なのである。会社経営では、ゴミやカスとなっているものの中に価値を探すのだ。使えないと言われている人材、過去にゴミ箱行きになった企画や商品。その陰に価値がある。その陰に飛び込んでみるのだ。

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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