泉一也の『日本人の取扱説明書』第7回「卑弥呼に学ぶ」

 

人類はその日暮らしの狩猟採集から、蓄積ができる農耕に変わった時、貧富の差がうまれ、富める者は権力という人を支配する力を手にした。権力を持った富める者は、他の権力者や略奪者から富を奪われないように軍隊を持ち、その軍隊でより大きな富と権力を手にしていった。これが人類史の底流にある。つまり表舞台では目標設定と戦略思考と解決型行動が得意な男性がいつも前面に立った。

その歴史の中で、なぜ倭国は女性がリーダーになれたのか。そして大きな和の国をなぜ作ることができたのか。そのヒントはドラマ西遊記の玄奘を演じた夏目雅子さんに見える。戦いと権力が大好きな悟空を玄奘(三蔵法師)が諭し、導いていく。卑弥呼とは夏目雅子さんが演じた玄奘のようだったのではないか。卑弥呼は鬼道といって占いを用いて天のお告げを聞いたという。聖なる力を司ったということは、仏僧である玄奘も同じである。

日本では卑弥呼以降、天皇という存在が女性的リーダーとして和の国の底流を作ってきた。しかし、江戸末期は世界的な富と権力の闘争が日本にも押し寄せ、天皇が男性的リーダーつまり軍のトップとなり、日本を一つにして男性的西洋と立ち向かった。国民軍と家制度を中心に、明治時代に一気に男性社会を作ったのだが、その名残が今も強く残っている。

女性的リーダーが底流をつくり、その表層を男性的リーダーが担う。玄奘と悟空の関係、このバランス。日本はこの関係が国のルーツにある。会社組織もこの関係がある企業はうまくいっている。逆に男性的リーダーしかいない組織は、目標と競争に追われ、硬直し疲弊している。

これからは、目標設定、戦略思考、解決型行動という3点セットは、人工知能とロボットがほとんど代替してくれるだろう。ということは、女性的リーダーの人材を探し育てることが組織作りに欠かせない。聖なる感性をもち、共感と受容と支援のコミュニケーションができる人材。草食男子はポテンシャルに溢れている。もし世界中でもそういったリーダーが必要となるなら、日本はその人材の宝庫となり、女性的リーダーを育てる教育産業も活況を浴びるだろう。

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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