泉一也の『日本人の取扱説明書』第13回「ことだまの国」

日本語の醍醐味は日常会話にとどまらない。言葉が感覚的で身近な分、魂が宿りやすい。言霊というが、言葉に氣を入れることができるのだ。日本語は氣をコントロールできる言葉といっていい。もう少し説明すると、言葉には意味情報と感情情報という二つの情報があり、意味情報は辞書にかいているその言葉の定義のことである。一方、感情情報とは、その言葉に入っている氣である。「難しい」という言葉一つとっても、難しいから苦しい人もいるが、難しいからやりがいがある人もいる。つまり「陰気の難しい」と「陽気の難しい」があるのだ。この氣が入った言霊によってその場の空気を変えることができるように、自分にも人にも影響を与えることができる。

日本の書道と西洋のカリグラフィーを比べるとわかりやすい。日本の書道には書く人の魂が入る。その代表が相田みつをさんだ。書家の想いが主でそれにあった文字の形が書家の想いを増幅させる。カリグラフィーは違う。それぞれの文字の形が主でそこに芸術性のあるデザインが入り、シンボルとしての独特の世界観を生み出す。

英語が向いているビジネスの世界は、日本語の出る幕はないのか、というとそうではない。結局はやる気やその気といった「人の氣」でビジネスはなりたつ。つまり人を中心にした経営をするのであれば、日常会話に日本語を使い、もっと日常会話を活性化させればいいのだ。つまりは雑談である。ロジカルでも学術的でも討論的でもない、雑談である。その雑談の質を究極に高めていけば、互いに氣を引き出しあい、高めあい、言霊を交流する組織風土ができるのだ。

雑談の質を高めるには、お互いの感覚を伝え、聞き合うことがスタートである。間違っても「お前の主観など聞いてない!」などといってはならない。理想をいうと事実と提案は英語でレポートし、会話は日本語でオノマトペを最大限に使って話し合う。

「今日は、ぐだぐだな会議で、ヘトヘトやわ。上司はカリカリしているし。もっとワクワクした会議をしたくて、うずうずするで。さあ、キンキンに冷えたビールでグビっといこか!」「ええですね、今日はぐでんぐでんになるまで、ワクワクを聞きますよ!」

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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