泉一也の『日本人の取扱説明書』第30回「小粒の国」

大柄インパクトは自分を大きく見せる「主張」が軸にある。権利の主張、自己アピール、広告マーケティング、ブランディングが得意分野である。これらの領域は日本人が苦手であるので、その専門家たちは価値が際立つ、いや謙虚さにつけ込んで幅を効かせている。幅を効かせられているのは、小粒の価値をわかっていないからだ。イチロー選手がマスコミにふりまわされないのは、小粒の価値をよーく知っているからだろう。地方創生に真面目に取り組む地方の自治体ほど、広告マーケティング会社に高いお金を払って、彼らにいいように振り回されている。小粒の価値を知らないとこうなる。

小ささと柔らかさと芯は三位一体である。その一つでもかけると、崩れてしまう。小ささにある美しさ、柔らかさの中にある強さ、芯による安定感を感じてみる。体は小粒、家は小粒、小粒な料理を食べ、小粒に囲まれているから身体はわかっている。頭だけが欧米化しているので、小粒思考ができていないだけだ。

冬はこたつで小さくなって、みかんを食べながら小粒の価値を感じる。その小粒の価値に気づいたら、その感覚のまま、自分のスタイルを作っていけばいい。ちなみに、今号で30本目になったが、一番小粒な文章となった。ピリリときただろうか。

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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