泉一也の『日本人の取扱説明書』第40回「諫言の国」

独裁者がいなくても、独裁の風土というのがある。会社で決まったことには口出しできないという息苦しさ、口出しするなといった圧力を感じる風土である。この独裁風土は、従順な存在を求める。諫言は異物。邪であり魔であるのだ。独裁風土になってしまったら、内側から変わることは不可能に近い。そのまま滅びていくのか、外から風土を変えるプロに入ってもらうか。

独裁化を未然に防ぐには、諫言を言う、諫言を聞くという教育をすること。つまり、独裁風土を助長する一員にならないように、自分よりも権力がある存在に「違う」と感じたら、腹をくくって進言をすること。言われる側も、進言的な発信が自分に来たなら、たとえそれが不満に聞こえても耳を傾けることである。

諫言文化を何千年も続けると、それは美しい文化になる。天皇への進言を「奏上」というが、この言葉に美しさを感じるだろう。奏上のような美しい言葉がすでにある日本。トップを地検に告発せずとも、諫言を会社文化にすることの方がたやすいのである。

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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