泉一也の『日本人の取扱説明書』第64回「三方(さんぽう)の国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第64回「三方(さんぽう)の国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

裏表のある人は嫌がられる。表ではいい顔をしているのに、裏でイヤな面を見せる。人間、裏表があって普通だが、表で陽をアピールすると、裏の陰が際立って不快になる。逆に表が陰であれば、裏は陽になるので、陰陽のバランスがとれる。これが自然の法則である。

裏に表に、陰とか陽とかややこしい話になってきた。言いたいのは、表で陽が強い人と関わると、裏の面を知った時に失望し、自分を表で陽にしすぎると、裏で落ち込んだり怒ったりと陰に苦しむことになる。不自然のツケがくるのだ。

「正義」は陽であるが、正義が成り立つのは、不正義のお陰。不正、嘘、理不尽、暴力があるから正義は存在できる。怪獣が現れて街を破壊してくれないとウルトラマンの存在は消えてしまうのだ。

正義(陽)は不正義(陰)を強調すれば、白黒のコントラストが明確になり正義(白)がより目立つ。怪獣が凶悪で残忍であればあるほど、ウルトラマンはより輝く。つまり人氣が高まるのだ。これは空想の世界の話であって、日常の世界はこんなに単純化されていない。もっと陰陽混濁したややこしい世界である。

正義を極めようとするなら、陰を攻撃せねばならない。そう、NHKはぶっ壊さないといけない。闇の反社会とつながった芸人は抹消しなければならないのだ。

では、どこに豊かさがあるのか。それは正義と悪の二項対立といった平面ではなく、もう一つの軸を持ってきて立体にすればいい。3次元にすればいいのだ。平面から立体になると世界は一氣に広がる。

それが日本の文化にある「三方良し」であり「三方一両損」である。新しい軸を持ってきて、そこに全体が得(陽)になる道、全体が損をしても納得する道(陽転)を探し出すのだ。

「三方良し」は売り手よし、買い手よし、世間よし。売り手と買い手の二項対立ではなく、世間よしという新しい軸を持ってくると商売の世界観が変わる。近江商人はそれを知っていた。二項対立では「いかに儲けるか」という世界であるが、世間よしの3軸目を持ってくると自然に「儲かる」世界に入る。世間から目に見えない応援(氣)が後押しをしてくれるからだ。

「三方一両損」は落語の演目である。ネタバレとなるが、紹介しよう。左官の金太郎が財布を拾った。3両入った財布である。そこに書付が入っており持ち主は大工の吉五郎とわかり金太郎は届けにいく。しかし吉五郎は「もう諦めた財布だ、くれてやらあ」とがんと受け取らない。江戸っ子のプライドである。二人は大揉めになりついに奉行沙汰となった。そこで奉行の大岡越前が二人の対立の裁きに入るのである。大岡越前は自分も一両出すことで4両にし、二人に2両ずつ渡す。そして全員が一両損をする状態をつくり、納得させるのだ。

2項対立の民は「どっち側の人?」「あなたは敵なの、味方なの?」「どっちが正義なの悪なの」といった視点でしかモノが見えない。3軸目を持つと、そこに立体感を持った幸せの道が見えてくる。

お釈迦様の眉間には白毫があるが、まるで三つ目のように見える。賢者とは、三つ目が開いた人なのである。

あなたは、このコラムの内容に賛成の人?反対の人?

 

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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