泉一也の『日本人の取扱説明書』第69回「火山の国」

そこで金を大量に得たアメリカ政府は、南北戦争の戦費として使い、経済的に豊かな南軍に勝利をする。さらにそのお金でアラスカも購入した。何度も日本と行き来することで交易が盛んになり、武器をも大量に販売した。もっと武器を売るために日本にいる内乱者にお金を渡し、けしかけて日本でも南北戦争をさせようとした。

氣づいたときには手遅れ。日本中の金の多くはアメリカにわたり、幕府は金貨がなくなったので、金含有率の低い小判を発行してしまう。経済は混乱し幕府の信頼が失墜。怒り頂点の商人は幕府転覆の志士たちを応援する。そのお陰で国内を二分する戦争が起こり、アメリカは武器を日本から大量受注。南北戦争で残ったお古の武器を売っちゃえ。在庫処分や。そのお金で最新の武器作ろう。めっちゃ儲かりまんがな。

未開拓で産業もないアメリカが世界の経済・軍事のリーダーとなったその大元の資金源は日本の金だった。そのアメリカと戦争をし、無条件降伏の敗戦をするという歴史の中で今にいたる。ゴールドラッシュを世界中に広げ世界の金脈を抑えたアメリカは、2位のドイツの倍以上の8千トン以上の金を持つ。その流れが金融資本主義を生み出し、世界のIT産業を牽引している。

金を失った日本。そのお陰で氣んづいたのは「人」という資産である。人が金を生み出す。人に眠るマグマが表出した時、新しい価値が生まれる。その日本人のマグマを表出させた傑物が桜島を見て育った西郷隆盛である。

日本にはマグマを表出させる人と環境とチャンスがあったことで、戦後も高度経済成長を果たした。しかし金本位体制をやめて弱っていたアメリカが主体となってプラザ合意をさせて、その後日本はバブル崩壊。そのショック体験から休火山となり、平成の30年間はマグマなき時代となる。その間、アメリカはGDPを2倍に成長させている。

この歴史を見て、燃えてこない日本人はいないだろう。そろそろ噴火の時期でごわすと、西郷さんなら言うだろう。

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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