泉一也の『日本人の取扱説明書』第75回「外向きの国」

江戸時代の鬱憤が爆発し、大東亜共栄圏にまで勢力を拡大したものの、国を占領されるまでの大失敗に終わり大きな傷となった。戦後再起を図り、交易を盛んにして高度経済成長の成功体験を得たが、その先にあったバブル崩壊でさらにショックを受けてしまった。

度重なるショック体験で内向き文化が定着した日本。100万人の引きこもりがその現れである。

日本は本来外向きの国である。外から学び、内に活かす。未知との遭遇にワクワクし、枠の外に出る。経済の活性化(価値の交換)、文化交流、人材交流のメッカであったはずだ。

外向きなのに内向きの国に至った大元を辿ってみると、それはカトリックへの恐れである。一体何が怖かったのだろう。命がけで布教する宣教師なのだろうか。拷問をしても根をあげないキリシタンなのだろうか。規制をすると反乱を起こす集団なのだろうか。

おそらく絶対的なゴッド(正しさ)を肯定する教義が怖かったのだ。その完成された教義はお金や権力を超えた魅力がある。武士の忠義を凌駕する正義がある。そう武家社会を崩壊させる教義。怖かったに違いない。この教義を恐れる心が発端となり内向きになったのなら、その恐れを克服すれば大元の原因を取り除くことができる。

恐れとは正体不明だから怖いのであって、正体を解き明かせばたいしたことはない。

絶対的な教え、真理の教えに魅了されてしまう人間の心理とは何か。人は絶対的な正しさを求める。なぜなら自分が存在しているのにその根拠がないからだ。誰かの夢の中に出てきた空想かもしれない。もし絶対的正しさがあれば自我は肯定され究極の安心が得られる。

しかしこの根拠を探すのだが見つからず迷える子羊ちゃんとなる。もし子羊ちゃんに絶対を説く教義があるとすれば、自分の命と同じ、いやそれ以上に重要になる。健康を害してでも健康になろうと必死になる意識とさほど変わらない。

この心のあり方を観察できたら、アホに見えてくる。恐れが消えて本来の外向きに戻れるだろう。外にある絶対的正義っぽいものが怖くて、内向きになっていただけの話。

これこそが絶対的真理!我を信じよ、迷える子羊たちよ。

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

著者ページへ

 

感想・著者への質問はこちらから