泉一也の『日本人の取扱説明書』第83回「節の国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第83回「節の国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

あけましておめでとうございます。令和2年もどうぞよろしくお願いします。

正月は自宅前に門松を置いて招福を願う。門松には竹がよく使われるが、
日本では昔から日常に竹があふれていた。

子供のおもちゃでは、竹とんぼに竹馬。
生活用品では、箸、楊枝、ざる、籠、うちわ、耳かき、孫の手、物干し竿に釣竿。武道では竹刀に弓。健康では青竹踏み。文具では筆の軸と物差し。楽器では尺八、篠笛に能管。食べ物では、タケノコにシナチク。

竹は軽くしなやかで丈夫。超優れた「素材」である。

この日常にあふれている竹が、日本人の心に影響を与えないわけがない。凛と空に伸びていく竹。「竹を割ったような性格」という言葉があるぐらい、日本人は竹を模範にしているところがある。

竹は中が空洞となった円筒構造であるが、筋が通ったようにピンと伸び育っていく。この安定感ある構造を生み出しているのは「節」である。円筒だけだと弱くて、ぐにゃりと曲がってしまうのだ。大学の研究チームが調べた結果、この節がしなやかで丈夫な構造を生み出すのにベストの間隔で配置されているとわかった。

日本古来の音楽は竹のように節がある。ソーラン節によさこい節。「節」を中心とした音楽。節はコブシのフシであり、その節に氣が入って力強い音曲を生み出す。運動会で恒例のソーラン節ダンスは、小さな体の子供達から力強さを感じるが、この「節」があるからだ。

そして1年の節は「節分」。節分は冬から春に変わる大きな節目。無から有が始まるターニングポイントである。その節目を感じ、祝い、春に向けて氣を入れる。

本来は正月より節分の方が大切な祝日だったが、今は節分が軽くなった。子供の頃は、学校でも家でも豆まきをし、恵方巻きを口にしながら「来福」を願っていた。今は恵方巻きの廃棄の方が氣になる節分である。一方、中国は今も「春節」に盛大なお祝いをする。中国の破竹の発展を築いてきた大きな節になっているのだろう。

今の日本は「節」が消えかかっている。昨年は元号が変わり、新しい節が生まれたがそれでも節が弱く、ぐにゃりと曲がりやすい。軽くてしなやかで丈夫な人と組織を作るには「節となる場」をどのように作り出すのか。大昔の人が節分を始めたように、ここに発明の余地がある筈だ。

発明といえばエジソンだが、彼を範にしたい。エジソンが電球のフィラメントを6千種以上の失敗を経て見つけたそうだ。それが竹のフィラメントだったのは周知であろう。エジソンは失敗をしても「これがフィラメントに適さないとわかった!」と喜んだという。まさに竹を割ったマインドで、次々とチャレンジをしていったのだ。

2020年はオリンピック・パラリンピックという節がある。この節が終わった時が、試され時である。日本成長の万策が尽きる時でもあるが、そこから次の節となる場を発明すれば、成長の機を作り出せる。

今年も場活師は忙しくなりそうである(笑)

<新年おまけクイズ>
さて今回のコラムには竹冠の漢字は何種類あったでしょう?
答えは、16種類。

箸、籠、竿、筆、笛、菅、範、筒、筋、節、築、筈、策、笑
そして第と答も!

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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