欲しいをつくり出す

10年ほど前に、
「カワイイはつくれる」というCMが流れていたのを、
憶えておられるだろうか。
男性の多くは、キャッチフレーズは憶えているが、
何のCMだったのか憶えていない、という状態ではなかろうか。
私もそのひとりである。
これは花王が、エッセンシャル・ダメージケアという
シャンプーを販売するために、流したCMだ。

正確には、「毛先15cmのケアでカワイイはつくれる」
というCMなのだが、
その効果によって売上は実に70%も伸びたらしい。
その理由は、10〜20代の
若い女性顧客の獲得に成功したからである。
ダメージケアという機能ではなく、
「カワイイはつくれる」というアイデアが、
若い女性の心を掴んだのである。

キレイは生まれつきだが、
カワイイは努力でつくることが出来る。
これはかなり面白い提案である。
エッセンシャル・ダメージケアが売れたことによって、
世の中にカワイイ女性が増えたかどうかは定かではない。
だが新たな「欲しい」が生み出されたことは確かである。

まったく同じ商品、まったく同じ機能、まったく同じ値段。
にもかかわらず、売上は70%も伸びた。
それは、痛んだ髪をシャンプーでケアしたい女性が
増えたからではない。
カワイイをつくる、
という新たなマーケットを生み出したからである。

痛んだ髪をケアするという機能。
それそのものを必要としている人も、
もちろん一定数存在している。
だが「必要だから買う」というマーケットには限界がある。
なぜならば、生きていくために本当に必要なものなど、
たかが知れているからである。

さらに、そのマーケットには競合も多い。
機能は真似しやすいものなので、
必ず他社から似たような商品が販売され、
マーケットの奪い合いになってしまう。
だが「欲しい」には限界がない。
無くても困らないけど、欲しい。
そういうものは無限に存在する。
なぜなら人間の「欲しい」という欲求には、
限界がないからである。

欲しいに限界はない。
それは、私たちが強欲だからではない。
次から次へと、新しい「欲しい」がつくられるからである。
スティーブ・ジョブズがiPhoneをつくるまで、
スマホを欲しがる人は居なかった。
それはスマホが「未だつくられていない欲しい」だったから。

車やブランド品を欲しがらないからと言って、
若者の購買意欲が落ちたわけではない。
単にそれらが、
彼らにとっての「欲しい」ではない、というだけの話だ。
実際にiPhoneは売れたし、
ハンドスピナーのような訳の分からないものでも売れていく。
つくり出すべきは、新しい商品ではなく、
新しい「欲しい」なのだ。

もちろんそれは、アンケートから見つけ出すことは出来ない。
なぜなら、未だないものを「欲しい」とは
答えようがないからである。
合理的な考えからは、新しいマーケットは生まれない。
なぜなら人間の「欲しい」という感情は、
合理的なものではないからだ。
衝動買いという非合理的な購買行為。
それこそまさに「欲しい」を抑えきれない、
人間的行動なのである。

 


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