自分を編集する力

私はいったい何者なのか。
これが分からないことには、どう生きていいのか分からない。
どんな仕事をして、どういう環境で暮らし、
誰と一緒に生きていけばいいのか。
その答えは外側にはない。
答えが知りたければ、自分自身に問いかけるしかない。

自分の中から、自分の本質を見つけ出し、
自分の手によって、自分の人生を編集するのだ。
まずは自分に質問してみる。
私は何が得意なのか。
私は何が苦手なのか。
どういう作業が好きで、どういう作業が嫌いで、
その理由は何なのか。

自分で自分に質問をぶつけ、自分自身でその質問に答えていく。
そうすることによって、自分の中から素材が現れて来る。
それは、自分自身を構成する素材。
ネコの絵を描くことがとても上手であるとか、
人混みが死ぬほど嫌いだとか、
好きな図鑑があれば何時間でも見ていられるとか、
一度食べれば同じ味を再現出来るとか。

素材が現れてきたら、そこを更に深堀していく。
なぜ、ネコの絵だけが、上手いのか。
なぜ、人混みが嫌いなのか。
なぜ、その図鑑は飽きないのか。
なぜ、味を再現出来るのか。
深堀することによって、素材の本質が見えてくる。

どういう時に、自分はやる気になるのか。
どういう対象に、自分は興味を惹かれるのか。
自分を構成する要素が明確になれば、
自分の扱い方も明確になる。
何をやらせてあげれば、自分は能力を発揮するのか。
どういう人と組めば、楽しく仕事が出来るのか。
絶対にやらせてはならない事は、何なのか。

素材をじっくりと眺め、自分の扱い方を考える。
そして更に、自分の見せ方を考える。
この人(自分)の良さは、どうやったら伝わるのか。
どういう服を着せ、どういう場面に登場させ、
どういうメッセージを発信させるのか。
自分という素材を上手く使い、
自分の人生を魅力あるストーリーに変えていく。

人は、一人ひとり違う。
それは、構成している要素が違うからである。
要素の優劣を他人と比較することには意味がない。
それは単なる素材に過ぎないからだ。
砂糖と、小麦粉と、苺と、牛乳。
それ自体に良いも悪いもない。
その素材を、中華料理に変えようとするのか、
あるいはデザートに変えようとするのか、
それは料理人次第なのである。

自分の料理人は、自分自身であるべきだ。
だがそれを、他人の手に委ねてしまう人は多い。
あるいは、常識という見えない力に囚われてしまう。
小麦粉と苺で中華料理を作ってもいい。
和食にしてもいい。
それを美味しいと言ってくれる人がいれば、
それは素晴らしい料理なのである。

私はどういう人間なのか。
どのように活動すれば、楽しく生きていけるのか。
どのように加工すれば、人の役に立てるのか。
どのように見せれば、良さが伝わるのか。
人生には、編集力が必要なのである。
私という素材を使い、私の人生を編集していく力。
素材を変える事は出来ないし、変えることには意味がない。
人生において最も重要なのは、
自分という素材を生かす力なのである。


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