アイデアの流儀

私のところにはアイデアを求める人が
たくさんやって来る。
そして私はアイデアを出す人だと自認している。
だから求められればアイデアを出す。
だが金銭は受け取らない。

アイデアを出す代わりに食事を奢ってもらう、
お土産を持ってきてもらう、
というサービスをやっているが、
それは洒落であってビジネスではない。
アイデアを出すことは仕事の一環であるが、
アイデアそのものには商品的価値がない
と思っているからである。

アイデアとは単なる着眼点に過ぎない。
言うなれば「ここに目を付ければ面白い」
というアドバイスだ。
もちろん、アドバイスによって
ビジネスが根底から変わることもある。
だがそれは、アドバイスをビジネスモデルにまで
昇華させた人の成果なのである。

アイデアをビジネスモデルに昇華させる。
これはなかなか大変な作業であり、
かなりの時間を要する労働でもある。
私がこの作業を行う場合には、
金銭としての報酬を頂いている。
それは単なる思い付きではない、
時間と労力を要する知的生産労働だからだ。

だがアイデアは違う。
アイデアは単なる思い付きに過ぎない。
だから、いくらでも無償で提供する。
受け取る側がどれだけ儲けようが、
後で見返りを要求したりもしない。
アイデア出しはスキルアップの一環でもあり、
私にとっての日常のようなものだ。

ただし、アイデアを求める時には
それなりの流儀があることを理解しておいて欲しい。
アイデアを得る為に必要なもの。
それは返礼や感謝ではなく、
アイデアの元になるアイデアである。

どんな仕事をすればいいのか。
どういう物が売れるのか。
どうやったら儲かるのか。
残念ながら、こういう質問には答えようがない。
何故なら、そこにはアイデアの元になる
アイデアが無いからである。

アイデアとは、現状のアイデアに
変化を加える行為である。
元になるアイデアがなければ、
そこには変化を加えようがない。

「こういうやり方で、この商品を売ろうと思っている」
という元のアイデアがあれば
「だったら、こういう商品もありだよね。
こういう売り方も考えられるね」という
変化を加えることが出来る。

「私はここまで考えた。
その次の一手にアイデアが欲しい」
これは流儀に適った正しいアイデアの求め方。
「私は全く何も考えていない。
こんな私にアドバイスが欲しい」
それは流儀に反したアイデアの求め方。
そんな質問に答えられるのは占い師だけである。

 


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