ストイックの種類

自分に厳しく欲望に流されない人。
それをストイックな人と呼ぶ。
見たいテレビをぐっと我慢して勉強する受験生や、
彼女とのデートをぐっと我慢して練習に励む甲子園球児。
まさにストイックの鏡である。

ストイックな人は決して短期的な楽を選ばない。
目の前の欲望に流されない。
自分を律してやるべきことをコツコツと続けていける人。
子供の頃の私は、こういう人々を驚嘆の目で眺めていた。
そして自分のことを怠惰な人間であると結論づけていた。

あまりにも勉強が出来ない私に
教師がかける言葉はいつも同じ。
それは、勉強というものは努力すれば
誰にでも出来る、というもの。
まさにその通り。
だが、その努力が出来ることを、才能と言うのだ。
私はいつも心の中でそう反論していた。

ストイックとは持って生まれた才能である。
それが出来ないから苦労しているのだ。
若い頃の私と同じように、
この壁に悩んでいる人は多いのではないか。
だがそのような悩みは不要である。

私は15年間スポーツジムに通い続けている。
メルマガは20年間も書き続けている。
そういう私に対して、
何とストイックな人なのだと驚嘆する人がいる。
だが私は別にストイックになったわけではない。
単に努力するコツを掴んだだけである。

才能がなくても努力できる、とっておきの方法。
それは、努力が出来る分野を見つけ出すことである。
例えば私は資格を取ることが出来ない。
満員電車で通勤し続けることも出来ない。
暗記という努力や人混みに耐えるという努力が、
まったく出来ないからだ。

毎日コツコツ参考書を暗記し、きちんと資格を取る。
毎日同じ電車に乗り、きちんと出社する。
これは私から見れば超人的な努力である。
絶対に出来ないし、無理にやれば
ストレスでおかしくなってしまうだろう。
だがその代りに別の努力が出来る。

毎朝仕事のアイデアを考える努力。
毎週番組を配信し続ける努力。
つまり、ストイックな人間と
ストイックでない人間が居るわけではない、ということ。
単にストイックの種類が違うだけなのである。

勉強する。走り込む。孤独に耐える。
アイデアを練る。同じ絵を描き続ける。
人生には様々なストイックシーンが存在する。
その中から、自分に合ったストイックを見つけ出す。
そこが重要なポイントなのだ。
自分に合わないストイックを続けると人は病んでいく。
努力が実らない人は、選ぶ努力を間違えているのである。

 


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