マネタイズの本質

仕入れた商品を売って対価を受け取る。
何らかのサービスを提供して対価を受け取る。
お金を稼ぐ基本構造はこのふたつである。
たとえば月給を稼ぐサラリーマンも、
労働というサービスを提供してお金を稼いでいる。

あまりにもこのフォーマットが長く、
広く使われてきたため、
私たちの常識も固定化されてしまった。
稼ぐとは会社に勤めること。
何かを売って利益を得ること。
このフォーマットから抜け出せない人はとても多い。

もちろん、その基本構造は、
今後も社会のベースとなっていくだろう。
だがマネタイズはすでに、次の段階に進化しつつある。
たとえばGoogleのビジネスモデルでは、
情報検索というサービスを無償で提供している。
Googleの顧客は一体誰なのだろうか。

何らかの情報検索をした人間に、
そのワードに関連した広告を見せる。
それがGoogleのマネタイズ・フォーマットだ。
これまでの常識で考えるなら、
Googleの顧客は広告費を出した企業ということになる。

だがそれはあくまでも後づけのマネタイズである。
ミッションを見ても明らかなように
Googleの顧客は情報の検索者なのである。
検索者がもっとも必要とする情報を提示すること。
それがGoogleの提供する価値なのだ。
そこに広告を並べることは単なる副産物に過ぎない。

わたしは別にGoogleのミッションを
賞賛したいわけではない。
これからのマネタイズの基本は
「売らないこと」だと言いたいのだ。
Googleは広告を売っている会社ではなく、
広告が売れてしまう会社なのだ。

商品やサービスを提供するが、
その相手からは報酬を受け取らない。
価値を提供する相手と報酬を受け取る相手をズラす。
それがこれからの時代に最も適した
マネタイズ・フォーマットなのである。
Googleは超巨大企業であるが、
実はスモールビジネスにこそ、
このフォーマットは適している。

たとえば古美術や爬虫類に関する
情報サイトを立ち上げる。
よりニッチな研究をし、
マニアにとって欠かすことのできない情報源となる。
マニアが集まれば、
彼らに何かを売りたい人も集まってくる。
重要なのは顧客を間違えないことだ。

マニアのためのサービスに徹すること。
ここが最も重要なのである。
売ろうとすればするほど人は離れていく。
喜んでもらうことだけを考えれば、
人はどんどん集まってくる。
人が集まれば結果的に収益はあがる。
それが売らないマネタイズ。

 


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