三つの生き方

オーナー、経営者、従業員。
金を出す人と、経営を担う人と、現場で働く人。
この三つが綺麗に分離して機能しているのが、
近現代の資本主義経済だ。

ビジネスモデルと経営者の力量を見極め、
最大のリスクを背負って自分の金を投資する。
それがオーナー。
成功すれば莫大な不労所得を得るが、
失敗すれば大金を失う。
まさにハイリスクハイリターンな生き方である。

出資された金を使い、
自ら陣頭指揮をとってビジネスを成長させる。
それが経営者。
オーナーへの利益分配を最優先事項とし、
それを実現するために従業員を雇う。
成功すれば莫大な報酬を得ることができるが、
失敗すればあっという間に解雇される。
自ら出資してオーナー経営者になるパターンもある。
ただし資金力は大きくない。

多くのオーナー経営者は資金力に乏しいため、
自ら現場もこなす。
成功すれば数千万の報酬を得ることもできるが、
従業員以下の報酬であるケースも多い。
億単位の報酬にたどり着く確率は極めて低く、
失敗すれば全財産を失うこともある。

決められた報酬を毎月受け取り、
指示された業務を忠実にこなす。
それが従業員。
会社の業績に関係なく、
所定の休みと報酬は確実に得ることができる。
正社員になれば(日本では)
一方的に解雇されることもない。

ただし、どんなに会社が儲かっても、
わずかな利益しか分配されず、
固定された報酬で働き続けることになる。
ローリスクローリターンな生き方である。
オーナー、経営者、従業員。
それぞれの生き方にメリットがあり、
またデメリットもある。

従業員から経営者になり、
最終的にはオーナーに成り上がる。
それが資本主義社会における成功物語。
だがその物語は変化を迎えつつある。
三権分立が進み過ぎて、
余りにもバランスが悪くなってしまったのである。

成功者はひたすら不労所得を増やし続け、
従業員は保守的になって権利ばかりを主張する。
もはや崩壊寸前の組織がそこら中に溢れている。
陰極まって陽となり、陽極まって陰となる。
極に達すればベクトルは真逆に変わる。
オーナー、経営者、従業員。
この三つが再び一つに向かう。

適切な投資を行い、自ら事業を生み出し、
現場の仕事もこなす。
リスクを背負い、経営にも責任を持ち、
その分適正な報酬を得る働き方。
それがこの先どんどん増えていくだろう。
オーナー、経営者、従業員。
その思考の枠組みから抜けられない人は、
時代に取り残されていく。

 


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