vol.43【流域|忙しさと苦しさに負けそうなとき描いた絵】

 この記事について 

自分の絵を描いてもらう。そう聞くと肖像画しか思い浮かびませんよね。門間由佳は肖像画ではない“私の絵”を描いてくれる人。人はひとりひとり違います。違った長所があり、違った短所があり、違うテーマをもって生きています。でも人は自分のことがよく分かりません。だからせっかくの長所を活かせない。同じ失敗ばかり繰り返してしまう。いつの間にか目的からズレていってしまう。そんな時、私が立ち返る場所。私が私に向き合える時間。それが門間由佳の描く“私の絵”なのです。一体どうやってストーリーを掘り起こすのか。どのようにして絵を紡いでいくのか。そのプロセスをこのコンテンツで紹介していきます。

流域|忙しさと苦しさに負けそうなとき描いた絵

今回は、20年以上前の秘密を公開します。ひょっとしたら、苦しさを抱えた誰かの役に経つかもしれないと考えました。または、身近にそういう人がいるとか、苦しい環境になった時に、思い出してもらえたらと思います。

20年も前ですが、単なる昔話ではありません。記録があるからです。実はこの頃から、制作メモをつけていました。そこから、1997年夏は、落ち込むことが多かったのがわかります。8月5日は、「スケッチって何を描くの?今スケッチする対象なんてない。考えつかない、停滞」と、メモに書いています。ネガティブですね。

でも、たとえネガティブな言葉でも、書き出すといいのです。本当に素直な気持ちをつづると、書き出す言葉が変わってきます。8月11日のメモは、「半年あまり、いかに自分が締め切りに追われ、緊張してプレッシャーを感じ続けながら暮らしてきたのか、今日、しみじみ思い知った」と、気づきが生まれています。

今、これは書く瞑想【ジャーナリング】と言われています。書き出すことで、【思考力がアップデートされる】と、経営者のためのセミナーもあります。

実際、私もわずか1週間で内容が変わってきています。

12日には、「忙しさと苦しさに、希望や願望が、負けそうになっている。現実と夢との激しい綱引きに、自分の心が白旗をあげそうになっている。諦めたら楽だ、と、心の一部がささやき始めている」と、挫けそうな自分を客観的に書いています。

この頃は、会社員として働きながら絵を描いていました。営業だったので夜遅く帰る、土曜出勤することもありました。結婚したばかりで、慣れない家事にも奮闘。当時は女性が家事を引き受けるのが当たり前。夜9時に帰宅して料理を作り10時に食事。深夜に絵を描き始めて明け方まで描いたこともありました。

メチャクチャですね。さらに、絵の制作で悩んでもいました。

今は「哲学がある画家」と言われますが、当時のメモには「自分に哲学なし」と書いています。「ただ技術を追うのは手習い。哲学と手法が同時に発展するのが作品」なのに、自分は美大を出て数年たつけれど、手習いから抜け出せていない。どうしたら作品を作り上げることができるのだろう、と悩んでいました。

そして、忙しさと苦しさと、悩みの中で、ついに無気力になったと書いています。大変です。でも、その時、ボーっとしていいのだよ、サボってもいいのだよ、と、自分を許しました。

メモには嬉しそうに「作品を作るのを忘れたみたいに何もしない時間を楽しんでいる」と書いてあります。今振り返ると、心を病むか、体を壊すか‥‥、とにかく、病気になる一歩手前でした。自分で自分にサボる許可を出せて本当に良かったと思います。

だから、人生に大事なのは、戦いだけじゃない。あまりに苦しかったり忙しかったりする時、休むのも必要なのだ、と、心から伝えたいのです。

忙しさや苦しさに負けそうな時。プレッシャーで気力も湧かない時。どんなに動きたくても動けない時。自分が壊れそうな時。そんな時は、全力でさぼればいい。

さて、そうして何もせずにボーっとしていると、自分の原点が見えてきました。

「今は、心が枯れてきているけれど、心の奥を掘り出して、形に表すものとしての作品を描いていたのを思い出したい。私の作品は心を表すものでありたい。

血を流していても、苦しんでいても、人の心であるならば、きっと美しいはず。それを伝えるのが大切」

そして、原点を思い出すことができたことで、気がつきます。

「人は独りになる時間が必要だ。しかも、なにもしない。
テレビも本も何もなく、ノートとペンと静寂な時間。
何もごまかすものも、惑わすものもない。
自分自身の奥底をのぞきこむ。自分自身を満たす時間」

「それは、自分が自分以上のものに触れられる世界だ」

10代の頃に、憧れて読んだ哲学者ソローの名著『森の生活』に書かれていた「人間の精神世界には、自ら探検していない、幾つもの大陸があり、海がある」を心の底から実感したのでした。

独りになって自分自身が見えてくる体験から、1997年8月17日にこう書いています。

「長い目で見て、自分自身であったことは、人生にとってたしかにひびく、結び目になる」

 

今回完成した作品 ≫「テーマ:流域(1997)より」

 

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「門間さんに描いてもらい」とひそかに思いを育んておられた皆さま、是非ご確認くださいませ。

https://brand-farmers.jp/blog/monma_vision-paint/

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 著者の自己紹介 

ビジョンクリエイター/画家の門間由佳です。
私にはたまたま経営者のお客さんが多くいらっしゃいます。大好きな絵を仕事にしようと思ったら、自然にそうなりました。

今、画廊を通さないで直接お客様と出会い、つながるスタイルで【深層ビジョナリープログラム】というオーダー絵画を届けています。
そして絵を見続けたお客様から「収益が増えた」「支店を出せた」「事業の多角化に成功した」「夫婦仲が良くなった」「ずっと伝えられなかった気持ちを家族に伝えられた」「存在意義を噛み締められた」など声をいただいています。

人はテーマを意識することで強みをより生かせるようになります。でも多くの人は自分のテーマに気がついていません。ふと気づいても、すぐに忘れてしまいます。

人生

の節目には様々なテーマが訪れます。

経営に迷った時、ネガティブになりそうな時、新たなステージに向かう時などは、自分のテーマを意識することが大切です。
また、社会人として旅立つ我が子や、やがて大人になって壁にぶつかる孫に、想いと愛情を伝えると、その後の人生の指針となるでしょう。引退した父や母の今までを振り返ることは、ファミリーヒストリーの貴重な機会となります。そして、最も身近な夫や妻へずっと伝えられなかった感謝を伝えることは、絆を強めます。そしてまた、亡くなった親兄弟を、残された家族や友人と偲び語らうことでみなの気持ちが再生されます。

こういった人生の起点となる重要なテーマほど、大切に心の中にしまいこまれてカタチにしづらいものです。

でも、絵にしてあげることで立ち返る場所を手に入れることができます。

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