vol.59【『Mの像(2006)元牧郷小学校校庭展示』|美術ってなんだろうという問いが廃校になった小学校での展示につながった話】

 この記事について 

自分の絵を描いてもらう。そう聞くと肖像画しか思い浮かびませんよね。門間由佳は肖像画ではない“私の絵”を描いてくれる人。人はひとりひとり違います。違った長所があり、違った短所があり、違うテーマをもって生きています。でも人は自分のことがよく分かりません。だからせっかくの長所を活かせない。同じ失敗ばかり繰り返してしまう。いつの間にか目的からズレていってしまう。そんな時、私が立ち返る場所。私が私に向き合える時間。それが門間由佳の描く“私の絵”なのです。一体どうやってストーリーを掘り起こすのか。どのようにして絵を紡いでいくのか。そのプロセスをこのコンテンツで紹介していきます。

『Mの像(2006)元牧郷小学校校庭展示』|美術ってなんだろうという問いが廃校になった小学校での展示につながった話

美術って、絵って、なんだろう。
美術大学で学んだのは、<美術の考え方の一つ>では?と疑いを持ったのは、美大を出て10年以上経ってからでした。

そして疑いへの答えが、オーダー絵画へとつながっていきました。

もちろん、美大を出てからも学びを続けていました。絵を描き続け、美術館に足を運んだり、本を読んだりしていました。画廊で友人や先輩とディスカッションもしました。しかし、この時は、「美術とは?」と根源的な問いをしませんでした。

今振り返れば、その理由はよくわかります。美大や画廊、美術館は、つながり合って美術を普及させる役割です。学校で美術教育をして、学校を出た人が作品を販売したり、美術を学んだり発表したりする。さまざまな場にいる、年齢や立場の違う人がスムーズにやりとりできるように、暗黙のルールがあるのです。

それは、主に一つの視点で美術をみること。西洋的な美術の考え方をベースに持つことです。では、西洋的な美術の考え方は?というと、西洋の視点に基づき、男性の支配する社会や文化が「こんなふうに作品を読みとりたい、見たい」と望んだ価値観に重点を置いた考え方です。

例えば、1960年台に始まった、フェミニズムアート。これは、上記の視点が前提だからこそ、女性の生活と経験を反映した芸術を作ろう!芸術の歴史と実践での女性の知名度をあげよう!とした運動です。これはわかりやすいですが、もっと重要なのは、私たちが気がつかないようなところまで暗黙のルールの影響があることです。

このことを、美術史を研究する本で知り「やはり、美大で学んだことは、美術の考え方の一つに過ぎなかったのだ」と腑に落ちました。

疑問を持つきっかけは、当時の作品づくりにありました。その頃、インタビューをして創るという方法をとっていました。インタビュー相手は、第二次世界大戦を兵士として戦い、捕虜になり、シベリアで抑留された画家でした。その方は、戦争前、戦争中、戦後で【見え方、感じ方、考え方】が大きく変わることで、強く揺さぶられたと語りました。

そこから、<私たちはいつもある時代、地域、集団の中にいて、それが見方や感じ方、考え方をきめている。自由に自分で選んでいるというよりも、ほとんどの場合、自分の属するものが受けいれたものだけを【見て、感じて、考えて】いる>ことを知った時、私は「美術ってなんだろう?」と、思ったのです。

そして、美術業界のベースとなるのが、西洋の視点に基づき、男性の支配する社会や文化が「こんなふうに作品を読みとりたい、見たい」と望んだ価値観に重点を置いた考え方だと知った時、「自分は日本人だし、女性だし、自分で自分の見方を決めよう。美術を自分の価値観で読み解いていこう」と決めました。

その頃はまだ、オーダー絵画を描けるとは思っていませんでした。私にできたのは、画廊から出たところで絵を展示することでした。

とにかく、画廊以外の場所で、発表できないか。いろんな情報を探しては足を運びました。そして、たどり着いたのが、廃校になった小学校で活動する芸術集団でした。

そこは、地元の方と交流しながら芸術の在り方を1から模索していました。地元の方はいわば、地元の専門家です。一方、芸術集団は音楽や写真、現代アートの専門家。場所が元小学校で、地元の方が大切に手入れして年間行事を行なっている場ですから、地元の専門家が格上です。だから、皆でディスカッションをした時は美大や画廊、美術館の常識とは違う考え方に満ちていました。

話し合っていると、美術業界が排除してしまったものは、私の視界にも入ってなくて、感じることも、考えることもなかったのだ、美術ってもっと広い可能性があるのだ、と、身体で感じ取ることができました。

そして、その時発表したのが、この元小学校の校庭での作品です。地元の収穫祭に合わせて展示しました。収穫祭を楽しむ人だけの展示。それは、ハプニングに満ちていました。作品に興味を持って近寄ってきた子供たちが、最後に作品空間を完成させてくれました。

こうして、自分で考えて美術を読み解いていこうという姿勢が、数年かけて、オーダーというカタチにつながっていくことになります。

それはまた別の物語です。

 

今回完成した作品 ≫「Mの像(2006)」(牧郷小学校校庭での展示)

 

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「門間さんに描いてもらい」とひそかに思いを育んておられた皆さま、是非ご確認くださいませ。

https://brand-farmers.jp/blog/monma_vision-paint/

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 著者の自己紹介 

ビジョンクリエイター/画家の門間由佳です。
私にはたまたま経営者のお客さんが多くいらっしゃいます。大好きな絵を仕事にしようと思ったら、自然にそうなりました。

今、画廊を通さないで直接お客様と出会い、つながるスタイルで【深層ビジョナリープログラム】というオーダー絵画を届けています。
そして絵を見続けたお客様から「収益が増えた」「支店を出せた」「事業の多角化に成功した」「夫婦仲が良くなった」「ずっと伝えられなかった気持ちを家族に伝えられた」「存在意義を噛み締められた」など声をいただいています。

人はテーマを意識することで強みをより生かせるようになります。でも多くの人は自分のテーマに気がついていません。ふと気づいても、すぐに忘れてしまいます。

人生

の節目には様々なテーマが訪れます。

経営に迷った時、ネガティブになりそうな時、新たなステージに向かう時などは、自分のテーマを意識することが大切です。
また、社会人として旅立つ我が子や、やがて大人になって壁にぶつかる孫に、想いと愛情を伝えると、その後の人生の指針となるでしょう。引退した父や母の今までを振り返ることは、ファミリーヒストリーの貴重な機会となります。そして、最も身近な夫や妻へずっと伝えられなかった感謝を伝えることは、絆を強めます。そしてまた、亡くなった親兄弟を、残された家族や友人と偲び語らうことでみなの気持ちが再生されます。

こういった人生の起点となる重要なテーマほど、大切に心の中にしまいこまれてカタチにしづらいものです。

でも、絵にしてあげることで立ち返る場所を手に入れることができます。

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