第142回「採用ビジネスで食える人数」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第141回「小さくまとまるススメ」

 第142回「採用ビジネスで食える人数」 


安田

個人で採用ビジネスをやってる方が、私の周りには多くて。

石塚

私の周りも多いですよ。

安田

個人レベルの小さなビジネスなら、まだまだ採用で食べていけますよね。

石塚

はい。いくらでも仕事がつくり出せます。

安田

今はコロナもあって大変でしょうけどね。

石塚

いやいや。採用業界はぜんぜんしんどくないですよ。

安田

え!しんどくないんですか?

石塚

ぜんぜん。まあ、僕はいわゆる採用業界とはちょっと違うフィールドにいますけど。

安田

石塚さんは“さよなら採用ビジネス”ですもんね。

石塚

はい。採用業界の周辺居住者なので(笑)だから事情はちょっと違うけど、採用業界の本線もべつに下火じゃないですよ。

安田

コロナで「採用の仕事が減った」とか「合説ができなくなった」とか、言われてましたけど。

石塚

それはコロナ初期の話ですね。

安田

確かに最近はリアルイベントも行われてるみたいですね。じゃあ採用マーケット自体は好調なんですか?

石塚

リクルートもマイナビも不振だって話は聞いてないです。少なくとも僕レベルの仕事で受注が落ちるってことは、まったくないですね。

安田

なるほど。じっさい影響があったのは最初の何か月ぐらいですか?

石塚

去年の連休明けから6月ぐらいまでじゃないですかね。

安田

それ以降は普通に戻ってきている?

石塚

はい。外食、飲食、旅行代理店、ホテルぐらいですから。食らってるのって。

安田

それ以外の業種に関していうと、あまり影響はない?

石塚

むしろ積極採用しているところが、どんどん増えてますね。

安田

へぇ~。じゃあ業績もいいってことですか?

石塚

おっしゃる通りです。

安田

飲食業界の採用に特化してる人は、かなりしんどいみたいですけど。

石塚

そこはしんどいでしょうね。ちょっと違う方向に舵を切った方がいいと思います。

安田

ですよね。面接の代行に特化するとか。もしくは人事部を丸ごとひとりで引き受けちゃうとか。

石塚

それはいわゆる「採用プロセスを切る」という方向ですね。新卒であればエントリーシートを書くとか。

安田

エントリーシートでも飯は食えますか。

石塚

はい。これだけでもたぶん100人ぐらい、すぐにビジネスになると思う。

安田

100人も?

石塚

エントリーシートのプロが100人ぐらい登場しても、全員が食えるだけのマーケットはあります。

安田

ということは「エントリーシートに特化した100人の会社」でも成り立つってことですか?

石塚

それだと100人食わすための管理コストが乗っちゃうじゃないですか。

安田

そうですね。

石塚

それをひとりずつバラして、新卒学生の目線で「いちばんやってほしいサービス」に絞り込む。

安田

たとえばどんな?

石塚

学生をプロの視点で客観的に見て「マッチする業界に向けてエントリーシートを書く」というニーズとか。

安田

学生からお金取れますかね?

石塚

取れます。だって親に請求して払ってもらえばいいから。

安田

なるほど。

石塚

ひとり20万でも払いますよ。

安田

ほんとですか?

石塚

払います、払います。

安田

それはエントリーシートを書くだけで?

石塚

エントリーシートを書いてあげて、もろもろのアドバイスもして。20〜25万は余裕で払う親の層があります。

安田

へえ〜

石塚

10人で250万じゃないですか。いくら欲しいのかによりますけど、仮に年収1,000万だったら40人ですよね。

安田

ですね。

石塚

そんなにしんどい仕事でもないですよ。

安田

なるほど。他にはどうですか?小さな採用ビジネス。

石塚

たとえば人材紹介で「ここが専門」という人は、給料が高いほうにばかり行くじゃないですか。

安田

手数料も高いですからね。

石塚

もう少し年収の低いゾーンに絞る。400万〜500万の採用支援を企業側に立ってやる。まさに僕がやってるところですけど、ライバルいないですからね。

安田

そうなんですか。

石塚

競合したことないですよ。

安田

へえ〜

石塚

みんな年収が高い方にばっかり行くので。 “相見積もり”になったことないです。

安田

石塚さんはハローワークを切り口にやってますけど、いろんな切り口で無数にできるってことですか?

石塚

そうです。たとえば、これからだと「移住と仕事を組み合わせる仕事」とか。いくらでもできるじゃないですか。

安田

なるほど。

石塚

あるいは「リモートワーク専門の紹介会社」も出てもおかしくないですよね。

安田

いくらでも出てきますね。

石塚

じっさい、個人が食べていける採用の仕事なんて、いくらでもありますよ。

安田

今後いろんな業界でビジネスが個人化していきそうですよね。

石塚

間違いなくその方向でしょう。

安田

業界経験者が独立していくのか。それとも他業界から入ってくるのか。採用業界ではどちらですか?

石塚

どちらもあると思います。採用業界出身者は「その領域を知ってる」という強みがある。だけど「大きな設備装置がないと仕事ができない」という最大の弱みも抱えてる。

安田

採用インフラがないと応募者を集められないってことですか?

石塚

そうです。リクナビやマイナビがないとダメだとか。巨大な紹介登録システムがないとダメだとか。

安田

 Indeedやハローワークを活用するっていうのはどうなんですか?

石塚

私ごときでもできることなので(笑)十分可能です。

安田

石塚さんは「採用ビジネスのスクール」をやってますよね。ICUでしたっけ?

石塚

はい。石塚求人大学。略してICU(笑)

安田

そこではハローワーク以外のノウハウも教えてもらえるんですか?

石塚

もちろん。ご自身の強みをベースに考えれば、立ち位置は無数にあるので。

安田

それを一緒に考えてくれる。

石塚

ヒントやアイデアを差し上げます。プロセス特化型よし、領域特化型よし、あるいは人の移動に着目するもよし。まだまだ無数にチャンスは転がってますよ。

\ これまでの対談を見る /

石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

感想・著者への質問はこちらから