第197回「焼肉事業の未来」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第196回「焦る若手社員たちの本音」

 第197回「焼肉事業の未来」 


安田

うちの奥さん、ミライザカがワタミとは知らなかったみたいで。

石塚

「鳥メロ」とか(笑)

安田

いろいろ名前を変えてやってますよね。

石塚

最近は焼肉事業を増やしてます。

安田

焼き肉はコロナ禍でも強いそうですけど。ワタミも成功しますか。

石塚

焼肉っていわゆる「素材型業態」だから。要は切って焼くだけじゃないですか。

安田

まあそうですね。だからこそレッドオーシャンな気がするんですけど。

石塚

焼肉って結局「いかに安く、いい肉を調達するか」だけの勝負なんですよ。

安田

なるほど。

石塚

「安田さんの肉のカットはすごいぜ」なんて、あんまりないじゃないですか。

安田

個人の焼肉店だったら、こだわってそうですけど。

石塚

その違いがすごく影響するかっていうと、ほとんどの人は分からないわけですよ。

安田

確かに。カットの違いなんて分からない人のほうが多いでしょうね。

石塚

つまりオペレーション費用があまりかからない。シェフやコックを置かなくても焼肉ってやれるわけです。だから人件費を縮められる。

安田

自分で焼いてくれますからね。

石塚

そう。自分で焼いてくれる。だからワタミは焼肉をやるんだと思う。

安田

なるほど。ワタミさんが焼肉を始めたのはそういう理由があるんですね。

石塚

「いまごろ?」っていう感じですけど。まあ、しょうがないですよね。居酒屋業態が時代には合わなくなってきたので。

安田

居酒屋はもうだめですか。

石塚

むずかしいでしょ、このコロナで。

安田

焼肉もずいぶん前に牛角が出て、真似するところも増えて。安売り競争になってるイメージですけど。まだ利益が出るんですか。

石塚

やり方ですよね。とにかく調達をがんばって、おいしくて安い肉が調達できれば焼肉は儲かります。

安田

つまり規模ですか。

石塚

そう。

安田

じゃあ、一気に店を増やして調達力を上げれば、勝ち目はあると。

石塚

渡邊さんはそう考えてるんでしょうね。

安田

石塚さんはどう思います?勝てると思いますか。

石塚

いや、勝てないと思います。

安田

勝てないですか。

石塚

と思います。ワタミぐらいの店舗数だと。

安田

価格で勝負するには少なすぎると。

石塚

だから値段を2割引いてでも、たくさん売りたいんですよ。要するに「たくさん売るから、まけろ」って業者に言うはず。

安田

もっと店を増やすのはどうですか。

石塚

これからそんなに増やせるのか。焼肉を食べたい人がそんなにいるのか。

安田

調達力を上げるためにはどれぐらいの店舗数が必要なんですか。

石塚

まあ、少なくとも200・300ですよね。

安田

そこまで持っていくつもりじゃないですか。渡邊さんは。

石塚

社長は「居酒屋業態をぜんぶ焼肉に変える」ぐらいのことを考えてるでしょう。

安田

もう居酒屋はやめる?

石塚

やめるつもりなんでしょうね。

安田

居酒屋ってそんなに儲からないんですか。

石塚

居酒屋は宴会需要がないと、ぜんぜん儲からない。

安田

へえ〜。

石塚

いちばんおいしいのは焼酎とか。最初の1杯目が売れれば、あとはぜんぶ利益なので。

安田

一杯で元が取れるんですか。

石塚

だからお酒って儲かるんですよ。ところが今は飲酒しちゃいけないし。集まっちゃいけないから。酒を飲んでもらわないと居酒屋って利益が出ないんです。

安田

コロナもそろそろ落ち着いてきましたけど。元には戻りませんか。

石塚

家飲みもかなり定着したし。あと、ノンアルコールに振る人たちも出てきて。「お酒やめたらスゲー体調いい」って。

安田

確かにそうですね。

石塚

ましてや最近の若手は会社での飲み会をすごく嫌がるし。ますます宴会需要がなくなっていきますよ。

安田

焼肉屋の場合は酒がなくても儲かるんですか。

石塚

いや、やっぱり焼肉も同じですね。アルコールを伸ばしてもらわないと。

安田

単価が高い割にローテーション早そうですけど。

石塚

それはありますね。高いし高回転だし。

安田

生肉なので出されたら焼いちゃうし。焼いたら食べないといけないし。

石塚

安田さん、焼肉屋に3時間もいないでしょう?

安田

いないですね。下手したら1時間で終わっちゃいます。

石塚

カルビでビールとか、もう無理でしょ。

安田

無理です。

石塚

となると高齢化社会は、なかなか厳しいものがあるじゃないですか。

安田

たしかに。

石塚

だから食材の調達業者さんをたたいて、とにかく「量を売れ」「量を売れ」ってことだと思う。

安田

それが正しい戦略なんですか?

石塚

いや渡邊社長も飲食業のことがわからなくなってきてる。

安田

そうなんですか。

石塚

はい。社長のブランクというか、経営者の劣化を感じますよ。

安田

長い間やりすぎたんですか。

石塚

逆じゃないですかね。ずっと社長業をやってないじゃないですか。

安田

現場感がなくなってるということですか。

石塚

残念ながら。ああいうことをやっているようだと、もうむずかしいなって。

安田

安くしてもたくさん売れないってことですか。

石塚

と思います。

安田

安くしたらたくさん食べそうですけど。

石塚

それだったら自分の家で焼けばいいじゃないですか。

安田

外食はまた別じゃないですか?

石塚

寿司はわかるんです。寿司って、あれだけのバリエーションのネタを自宅でって、なかなかむずかしい。握るのも大変だし。

安田

焼肉は違うんですか。

石塚

焼肉は自分の家で焼けば十分ですよ。いろんな調理器具があるから家で焼いてもおいしいんです。アウトドアで焼いたっていいし。

安田

でも焼肉屋ってまだまだ人気ありますよ。

石塚

それは非日常性が高い焼肉屋です。「今日は焼肉行くぞ」「おお~!」ってなるような。

安田

家では食べられないワンランク上のお肉ってことですか。

石塚

そうです。だけど渡邊さんが考えているような店ではそうならない。それで「うまくいく」と思ってる渡邊さんは、発想がもう古いんです。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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