第204回「NHKの存在意義」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第203回「二極化する都市」

 第204回「NHKの存在意義」 


安田

イギリスのBBCってご存知ですか。

石塚

はい。知ってます。

安田

日本で言うところのNHKみたいな会社ですけど。1,000人規模の人員削減を実施するそうです。

石塚

完全にデジタル優先にしていくみたいですね。まあ当然といえば当然だと思います。

安田

それに比べてNHKはすごく遅れてるように感じるんですけど。

石塚

NHKだけの話じゃないですから。

安田

なぜスクランブルにして「必要ない人には見せない」って、やらないんでしょう。

石塚

ネットではそういう意見が溢れてますね。

安田

石塚さんはNHKに対してどう思ってるんですか。

石塚

全国の主要都市すべてに放送局と記者を配置してるのって、NHKだけなんですよ。

安田

そうなんですか。

石塚

はい。やっぱりそこは強いですよ。各地に放送局があってスタッフがいるので。

安田

公共放送って、政治利用されるのを防ぐために、国民から受信料を集めてるんですよね。

石塚

おっしゃる通りです。

安田

だけど現状は政治と癒着しているように見えますけど。

石塚

癒着まではいかないですよ。

安田

でも国から「費用を削減しろ」って言われたらしなくちゃいけないし。お上の言うことには逆らえないでしょ。

石塚

そこは許認可のビジネスですから。

安田

民放となにが違うんだっていう。

石塚

さっきも言ったように「情報の地域格差がない」ってことですよ。

安田

今どき情報なんてネットで十分ですよ。そもそも大河ドラマや紅白歌合戦なんてやる意味があるのか。

石塚

今年の大河は視聴率いいですよ。

安田

じつは私も大河ドラマ好きなんですけど(笑)

石塚

何だかんだ言って紅白も見るでしょ。

安田

見ちゃいますね。でも一般的な若者からしたら「必要なニュースだけ配信してくれりゃいい」って感じじゃないですか。

石塚

絶対にそうはならないと思います。

安田

それはどうして。

石塚

理由は2つあって。まずNHKの主たる視聴者層って高齢者なので。高齢者が視聴者でいるうちは、つまりあと20年ぐらいは、NHKは路線を変えない。

安田

高齢者は今のやり方を支持してるってことですか。

石塚

実際、大河ドラマも紅白も見てますから。

安田

だけどいずれは視聴者層が変わりますよね。

石塚

もうひとつの理由は総務省から電波免許をもらってる事業だってこと。国の方針にそぐわないリストラは出来ないんですよ。

安田

やっぱり国の下請けみたいなもんじゃないですか。

石塚

むしろ民放より忖度してます。

安田

そんな公共放送だったら意味ないじゃないですか。

石塚

国民はそうは思ってないです。

安田

それは高齢者の人ですか。

石塚

もちろん高齢者の方々は圧倒的にNHKですよ。あとは緊急事態の時とか。地震が来たらテレビをつけて「まずNHKを見る」っていう。

安田

それはそうですけど。緊急事態なんて稀ですよ。

石塚

そんなことないですよ。最近は地震も多いし。異常気象も増えてるし。

安田

確かに。

石塚

とはいえNHKも足元が揺らいでる部分はあって。たとえば僕らが就職する頃って、NHKはすごく入るのが難しかったんですよ。

安田

今は違うんですか。

石塚

いまNHKは入りやすいです。

安田

え!そうなんですか。

石塚

なんでかっていうと全国に転勤しなきゃいけないから。

安田

なるほど。

石塚

それがいまの大学生に嫌われて。「全国どこでも行けます」って言うと、けっこう入れちゃうんですよ。

安田

地方限定職みたいなのはないんですか。

石塚

ありますけど雇用身分が違う。

安田

つまり出世できないと。

石塚

出世のキャップが決まってます。いわゆる頭打ちですね。

安田

出世するには転勤が必須ですか。

石塚

はい。3〜5年単位でいろんな部署をグルグル回って、仕事ができる方は最終的に渋谷の本局に上がる。そういう形ですね。

安田

給料はすごくいいんですよね。

石塚

いえ。ものすごく高くはない。

安田

そうなんですか。

石塚

はい。民放も下がってますし。もう格別高いってほどじゃない。

安田

でもネットには「世間一般にくらべて給料が高すぎる」って書いてますよ。

石塚

もちろん一般よりはちょっと高いですけど。

安田

社内留保も多いし。儲けすぎてるから値下げするんでしょ?

石塚

そこはちょっと疑問ですね。「あれだけの全国ネットワークを支える人材を維持できるんだろうか」って。

安田

そんなに余裕はないってことですか。

石塚

少子化になって、受信料収入も下がってきたときに、どうするのか。

安田

どうするんですか?

石塚

そういう問題はぜんぶ先送りしてるんですよ。

安田

なんと!

石塚

20年後にはBBCのように「デジタルに移行するので8,000人規模のリストラをします」って、なるかもしれません。

安田

だけど総務省の意向でリストラできないんですよね。

石塚

「これ以上の予算は認めない」って国会で決まれば削減せざるをえない。

安田

NHKは税金使ってないですけど。

石塚

違いますけど、必ず国会に予算承認もらわないと通らない仕組みなので。だって義務として受信料を徴収するわけだから。

安田

高齢者が抜けて若者主体になってくると、払わない人も増えていくでしょうね。

石塚

間違いなくそうなるでしょう。だけど維持し続けるしかない。

安田

それはどうして?

石塚

たとえば第一次産業の方はNHKなしではいられないです。気象情報にしてもNHKは自前のスタッフを張り付けてるから。

安田

スマホアプリで十分な気もしますけど。

石塚

そのスマホアプリはどこから1次情報を取ってくるのかってこと。NHKが全国に張り巡らせている定点カメラがあるわけですよ。あれを維持し続けないといけない。

安田

じゃあ受信料を払い続けるしかないと。

石塚

あとひとつは教育テレビですね。あれこそコンテンツ化してスクランブルしたらいいと思う。美術、演芸、食、いっぱいコンテンツを持ってるから。小学生や幼児向けの番組をつくれば稼ぎ頭になりますよ。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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