「ハッテンボールを、投げる。」vol.51 執筆/伊藤英紀
余計なお世話は、楽しい。
余計なこと言わないでくれ、とイヤがられたら、そりゃ楽しいわけないです。でも、余計なお世話が、「なるほどねえ。それいいかもしれない」とうれしいお世話になって、喜んでもらえたりすることがけっこう多いから、やめられないのです。
先日、建築デザイナーでもある経営者に出会った。マンションのデザインリフォームや、店舗やオフィスのデザインを手掛ける会社を経営されています。
その会社のwebサイトは、よくできています。検索すると、上位表示される。情報コンテンツもわかりやすく整理されています。
予算も平均相場をベースに、相談にのってくれる柔らかさが醸し出されている。設計~施工の流れも明瞭です。
デザイン性と工務店機能が両立し、家具や照明などのインテリアコーディネイトまで、一貫してやれる総合力もわかりやすい。
この会社が誠実で、仕組化され、デザインも安定していること。施主の要望も大事にしてくれることが、伝わってきます。数字の上でも、集客力のあるサイトとして、有効に機能しているようです。
しかし、有効に機能しているがゆえに、こぼれ落ちる顧客ゾーンがありそうですねと、私は余計なお世話をクチにしました。
現状のサイトが伝えているポイントから逆算して、顧客が抱くだろう印象を伝えました。
●建築デザイナーの事務所というより、しっかりと組織だった会社に見える。
●クリエイターのこだわりというよりも、顧客サービスの高さに自信があるようだ。
●仕組み化されていて、工期とか施工品質も安心できる。不透明・不明瞭がなさそうだ。
次に、この3点から、現状の中心顧客像を予想しました。
●建築デザイナーととことん話して夢をふくらませたい、デザインと部材にこだわりぬきたい、とまでは望んでいない。
●予算内で堅実にオシャレな空間づくりを実現したい。びっくりするような感動や発見、意外性は求めない。
●それよりもやはり、コストダウンを求めたい。工期と施工の確実性を求めたい。
どこまで正確に当たっているかはわかりませんが、その経営者もその場ではうなずいてくれました。
なぜ、こんな余計なお世話をわざわざ申し上げたかというと、サイトの印象とその方の印象にへだたりを感じたからです。
上記の顧客ゾーンで安定的に集客し、建築実績をたくさん積み上げていることはすばらしい成功です。
でも、その経営者とあれこれ話すうち、「それだけではなんだかもったいないな」と感じたのでした。