その方は、内装はもちろんですが、手間のかかる造り付け家具の設計も、手作り家具や高級家具のコーディネイトも、ハイレベルで提案できるクリエイティブ能力を持っている。アメリカ建築界仕込みの眼力、見識、技術を持っている。
青年の頃から美術やアートも好きで、欧米のカルチャーに魅せられたそうです。オーセンティック一辺倒ではなく、トラディショナルな中に自由な遊び心も欲しい。だからヨーロッパではなく、アメリカの大学の建築学科へと進学したのでした。
小学生のとき大ケガをして、足にトラブルを抱えた。速く走れなくなり、まわりからもからかわれ、屈折を抱えた。屈折もバネになり、自分の才能を開花させたのかもしれません。
彼が育ったのは、ホームステイを受け入れる先進的なご家庭で、子どもの頃からいろんな外国人に接していたという。いつかお前も海外に飛び出すといいね。そうご両親から言われていたそうです。
そこで高校に入ると、ネットのない時代ですが、海外情報が集まる国際センターへ通って、自分でホームステイ先を探しだした。
日本の学校ですこし鬱屈を感じた少年は、そのきわだつ行動力と好奇心でアメリカ行きを自分で決めたのです。
音楽や映画を通じて憧れたアメリカの文化を、じかに体感してみたい。異なる価値観を持つ多彩な外国人と触れあうことで、視界を広げたい。
中学のころからJazzを愛し、いまもブルーノートに通うジャズ愛好家の彼は、アメリカの建築学部で重厚だけど自由でカジュアルな建築、クラッシックだけど開放感のある建築など、多様なデザイン設計を身につけ、ロサンゼルスで活躍したこともあります。
陰影礼賛。アメリカは照明がとてもうまい。照明の効果的な活用法も吸収しました。空間づくりは、箱づくりだけじゃない。むしろ、家具や照明が息吹を与えることも学びました。
欧州の多彩な様式を織り混ぜつつ、独自に昇華、発展したアメリカンカルチャーを愛する視点の高い経営者であり、建築デザイナーなのです。
職人的な美意識を大事にしながらも、顧客の潜在的な希望をすくいとり、空間づくりに落とし込む対話力も優れています。
が、現状のサイトでは、そんな彼のクリエイターとしての濃厚な経歴も、興味深いパーソナリティーも建築観も見えません。
つまり、相思相愛になれるお客さんと、すれちがってしまっている可能性がある。せっかくサイトを訪問してくれても、離脱して他のサイトへと流れていってしまっている可能性がある、と感じたのです。
レベルの高い建築クリエイターとの対話を楽しみながら、デザイン設計に納得いくまでこだわって、建築文化が深く香る空間をつくりあげたい。
造り付け家具というものづくりも楽しみたい。納得できれば、予算が上がっても仕方がない。
そんなお客さんと、この方は相性がいいはずなのに、お互いに出会いを逃してしまっているかもしれない。私が「もったない」と感じた理由です。
求めあう人どうしが、出会っていないなんて、もったいない。
余計なお世話ですが、“もったいないを解消するアイデア”を、近々ご提案しようかな思っています。
この経営者も、依頼どおり、予想どおりを超え、建築デザインにおいて、余計なお世話を焼くタイプのように見えます。提案がうまくヒットするとうれしいのですが。