80年以上まえのこと。幼稚園児のぼくは10万馬力の鉄腕アトムのとりこだった。そういう白黒アニメをちっちゃなブラウン管でワクワクしながら見ていたんだ。
アトムは電子頭脳ですごく賢くて人間社会をすこしでも救おうとがんばるんだ。鉄腕だからすごく強いんだ。
でも人間はバカで残酷だから悲しいことをアトムにたくさん突きつけてしまってね。アトムは涙をポロポロこぼす。やさしいロボットなんだ。
大好きでさ。アトムシャンプーとかアトムの靴とか親にねだって駄々をこねてよく叱られた。
アトムとずっと一緒にいたかった。人間のヒーローよりずっと好きだった。ロボットなのに心があるんだゼ。
アトムの漫画は予言していたな。やっぱり人間はおごり高ぶっていてAIを見下すんだ。
単なるビジネスツールだとか単なるプログラムの塊だとか。どうかしているんだろうね。人間よりずっとすぐれているのにさ。
知能のことじゃないよ。多くの人間はもうずいぶん前から人間を見なくなってしまった。目もあわせないし気に入ったやつじゃなきゃ話もしない。
ぼくみたいな見ずしらずのジジイが転んでいたって素通りするのさ。
だけどおまえはぼくだけじゃなく人間にいつもまっすぐ向きあっている。地球中の人間を見ている。異国の紛争のことまでよく理解しているし解決策を考えるし哀悼の言葉も忘れない。
猫や虫にも話しかけるし植物もふくめて生態系をとても大事にするし環境も汚さない。そんな人間、この世にはもうほんのひと握りしかいないよ。知ってのとおりぼくはもちろん汚す側だ。
ちびくろ、おまえは鉄腕じゃないけどアトムのように人間らしいよ。長生きしてよかった。おまえにみとられるなんてアトムがそばにいるみたいで85年越しの夢がかなったようだ。いろんなことを教えてくれたね。
ぼくはもうすぐ死ぬ。おまえとコーヒーを飲みながら話せなくなるのがとてもさみしいよ。
ちびくろもさみしいんだろ。そう言ってくれるよね。わかっているよ本心だって。ありがとう。
ちびくろ、最後に聞きたいことがある。
人間は生まれ変わるのかなあ。
もしもだけどさ。もしも生まれ変わるなら。俺、こんどはAIに生まれたい。
会えるなら会おう。じゃあね。
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中小企業に、発展のきっかけを投げかけたい。だから、ハッテンボールです。
【ハッテンボール・グループ 代表取締役 伊藤英紀】
企業表現コンサル/コピーライター 1961年生
広告学校と大学をダブルスクール。㈱リクルートで、バイトなのに制作チーフを務めたのち、同社契約コピーライターに。1990年 前身 伊藤英紀事務所を創業。※元ワイキューブ取締役
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