第285回 スズキのカレー

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/スズキのカレー

 

自動車メーカーの「スズキ」さんが、なんと「レトルトカレー」の発売をはじめました。

「軽自動車やバイク」でおなじみのあのスズキが、「スパイスの世界」に乗り出したというのです。

ところが、その中身を知れば知るほど、「なるほど、スズキらしいなぁ」と唸らされるのです。

ラインナップは、「スイフト」「スペーシア」などの軽カーをモチーフにした5種類。

パッケージには車のイラストが可愛らしくあしらわれ、「道の駅やサービスエリア、オンラインストア」で手軽に購入できるのです。

つまりこれは、ショールームに行かなくてもスズキに出会える、「食卓からのブランディング」なのです。

車が売れにくくなってきた時代。

乗らなくても、触れなくても、「好きになるきっかけ」は作れる。それがスズキの狙いのようです。

カレーのベースとなっているのは、スズキ本社の「社員食堂」で提供されていた「本格インド料理」の給食メニュー。

開発に携わったインド出身の社員Aさんが、「母の味」として親しんできたベジタリアンレシピを、地元・静岡でレストランや仕出し弁当などを手がける「老舗企業・鳥善」の協力を得てレトルト用に再構築したものなのです。

Aさんは、「スズキはインドでも人気のブランド」「カレーという共通文化を通じて、『日本と世界をつなぐ』ことができたら嬉しい」と語っていらっしゃいます。

「軽くて、しっかりしてて、生活にちょうどいい」

そんなスズキらしさが、クルマではなく食の提案としても形になりつつあるのです。

社員食堂の味から生まれた「クルマとカレーの親しみ戦略」が、世界のテーブルに広がることも夢ではないかもしれませんね。

 

 

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高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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