【コラムvol.13】
2018年のあなたの隣には、
産業革命と共産革命の亡霊がいる。

「ハッテンボールを、投げる。」vol.13  執筆/伊藤英紀


18世紀、19世紀。
産業の機械化という大革新がおこった。

機械化、いいねえ!これからは、資源と人手を手に入れれば入れるだけ、
生産と製造現場を動かせば動かすだけ、儲かりまくるってことじゃん。」

「働き手も職工とか小作とか狩猟とかしなくても食っていけるから、
ハッピーじゃん。世界がましになるじゃん。」

こうして、資本家(経営者)が増えると同時に、産業労働者もどんどん増えた。
侵略により植民地や奴隷貿易も、どんどん広がった。
国家と資本家はどんどん潤った。

20世紀初頭~半ば、産業労働者(民衆)が蜂起した。
「冗談じゃねーぞ。死んでしまうような、過酷な重労働と低賃金はもうごめんだゼ!
おい、国家や資本家、なめんじゃねえ!」

「俺たちから搾取するな。もっと豊かに暮らせる権利をよこせ!」

社会革命、共産革命がおこった。
ソビエト連邦や中華人民共和国を筆頭とする社会主義、共産主義国家が生まれた。

「バカ言うんじゃねえ!国や経済の発展は“働く者”だけがになうんじゃないだろ!
“働く場をつくる者”、つまり事業を立ち上げ育てる経営者がいなければ、
そもそも“働く者”たちが給料を得る場所が、生まれないじゃないか!」

「そんなことになれば、経済は低迷し、労働者は餓死するだけだぞ。
わかんねーのか、アホタレどもが!」

社会主義や共産体制は、すべて国有となり経営者をつぶす。つまり、経済をつぶす。
いわゆる資本主義国家では、共産圏を敵視し、労働運動は抑圧された。

平等という理想郷をめざしたソ連、中国では、反革命分子は残虐に大粛清された。
権力は一極化され、民衆の自由は奪われ(起業の自由も)、
国家経済はどんどん悪化した。貧乏がきわまった。
悲惨なことに、おびただしい餓死者が出た。

「理想郷は幻であった」と世界中が理解した。
ソ連は白旗をあげ、解体、という結末を迎えた。

冷戦に、アメリカをボスとする西側(資本主義経済圏)が勝った。
「アホタレどもめ。ほらみたことか!私たちが正しかっただろ」
経営者(資本家)たちはそう胸をはり、鼻を広げた。

「やばいぞ!このままでは中国もソ連の二の舞だ。
1国2制度もこの際しょーがないだろ。解放経済でいこう。
半分、資本主義を入れるしかない!」

中国はそう転換を決意し、経営者の誕生と会社経済推進の自由を、
共産党監視のもとで認めた。

ソ連をはじめとする東側はつぶれたが、東側と西側の真ん中を選んだ中国は
どんどん台頭しつづけている。「世界覇権争いの勝者になってやる」という
強烈な意志をにじませる。中国は資本主義国家の一員へと変貌し、
世界の覇権国になる日も遠くない。そんな論評・分析もある。

人類の歴史は、このように闘争の繰り返しだ。

西側の世界大戦の戦勝国を中心とした国連では、
反植民地と『人権』という意識が育っていった。
敗戦国である日本も、あとを追った。

「いくら経済のためとはいえ、国家や経営はムチャするんじゃないよ。
世界の働き手はあなたたちの手駒じゃないよ。すべての人間は奴隷じゃないよ。
給料と休暇をちゃんと整えなきゃ。人間として幸せに生きる権利を認めなきゃ。」

「消費者である働き手にちゃんと給料払わなきゃ、消費は伸びない。
世界経済が伸びない。こんなことわからないのは、バカタレだ。
あらゆる差別も許されない!自由な価値観を共有する
経済中進国がもっと増えれば、世界経済はもっと豊かになるし。」

先進諸国は民主制のもと、近代の歴史があまりにも多くの人間を殺しすぎたので
その反省に立った面もあったのか、表面上は反侵略戦争とともに、法治、差別撤廃、
公平という概念を世界規模ですこしでも浸透させようとした。

だが、2018年の今は、新興国が台頭するグローバル経済の中で、貧富が広がり、
経済は頭打ちになり、先進諸国にも、もう以前のような余裕がない。
日本でも、いろんなものが揺らいでいる。

僕には細かい知識がないので、乱暴かつ雑にしか書けないが、
だいたいこんな流れだろうと、個人的にものすごく粗く理解している。

というわけで、経済と産業というフィールドにおける世界の争点は、
産業革命以降も、そんなに大きくは変わっていないんじゃないか、と思う。

『経営の幸せ』 対 『働き手の幸せ』。『経済効率』 対 『人権(特に戦後)』。

2件のコメントがあります

    1. 会社からは転職できるけど、国からは転職できない。だから、施政者は法治で、国民全体を安心させ、信頼を獲得しなければ国は瓦解する。なのに、人治で経済成長をめざすなんて、国家と会社の境目の区別がついていないアホタレですね。

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