「ハッテンボールを、投げる。」vol.37 執筆/伊藤英紀
働き始めて部長や先輩に
怒られたり、注意されたり、
指導されたりしても、
申し訳ないが、
あんまり身に沁みない
20代前半でした。
ちゃんと耳は聞いているんですよ。
そうだなあ、って
反省したりもするんです。
こういってはなんですが、
そこまで畏敬心を抱いていないので、
頭には入るのですが、
身に沁み入らないんですね。
不遜な言い方かもしれないけど、
たまたま出会った部長や先輩に
畏敬心を抱くほうが、
ちょっとフツーじゃない。
それが僕の常識です。礼儀は
わきまえているんですけどね。
広告制作の
主任みたいな立場だったので、
営業部長なんかと話す機会は
わりとありました。
部長の言うことは
よくわかっていたと思う。
売上げは大事だから、
深夜残業もバンバンして
(バブル経済まっただ中)
売上貢献度で抜けた
コピーライターをめざすけど、
だからって、
あなたのおっしゃるように
チームの売上げを
達成したからって
そんな一面的なことで
なんで僕が喜びを
大爆発させなきゃ
ならんのですか。恥ずかしい。
そんな羞恥心のない
作り手を集めたって
ロクな組織はできませんよ。
そんな内心でした。
売上こそが所員みんなの
喜びなんだよ!と
その部長さんはそんなことばっかり
僕にすりこもうとするので、
単細胞はヤダなあって
心中うんざりしていたんです。
売上達成プラス、
なんかあるでしょ?
もしかしてないの?
という気分ですね。
僕は素直でありながら、
一方で馬耳東風的な
耳の持ち主でした。
こういう奴は珍しくないと思うが、
上からの強制や苦言も、
ちょっと疑問を感じると
ガチンコで聞かないので、
さほど気にしないのですね。
ガッチリ受け止め、
ガチガチに向き合いすぎて、
苦悩している人を見ると、
あーあ、と思います。
ホントに関係あるのか
ないのかわからないけど、
そのあたりの感受性に
関係がありそうな
気がする話をします。