「ハッテンボールを、投げる。」vol.68 執筆/伊藤英紀
当社のキャッチフレーズです。今回は、なぜこんなキャッチを掲げるようになったか、お話させてください。
20代、30代は、求人広告をたくさん作りました。大学新卒の広告も作りましたが、転職者を募る中途採用の広告を何倍も作りました。かなりの本数を作ったと思います。大手より中堅・中小が多かったです。
そういうわけで、いろんな社長と話す機会に恵まれました。商品じゃなく、人を採る広告なんで話はどんどん広がります。
商品広告だったら、商品の特性・機能・優位点とか、開発上の力点や想定購入者像、競合状況とか。そのあたりに話はフォーカスするんですけど、なんせ人ですからね。
聞き込んでいくと、話題は会社の全体どころか、過去や未来をワープし、公私かまわずぐんぐんふくらんでいくこともありました。
事業戦略について。業界やユーザー動向について。犬の散歩は18時に決めているについて。組織の問題点について。年に3回はオーストラリアに行くんだよ好きなんだオーストラリアについて。
社風やマインド変革の必要性について。娘さんと大ゲンカして彼女の部屋をぶっ壊した件について。得意なポークシチューはトマト味強めについて。2年後の事業ビジョンについて。若い頃、先輩にド叱られた思い出について。
生い立ちや親の人柄について。そこを話すとなぜ涙があふれてしまうのかについて。社員をキャンプに連れていってホスピタリティー教育を施すんだけどその効果がすごいについて。
社員の期待の星が突然辞めてしまったのはあいつが悪いについて。息子が4人いるんだけど会社継承はこいつに決めているんだ女房には内緒だけどについて。僕のシャツのガラについて。戦略実践をまかせ切れない人材不足の危機感について。
役員が横領して人間不信に陥ってしまったことについて。海外旅行でひどい下痢になって現地の人に大迷惑をかけてしまったクサイ修羅場について。自分の実家は名家だったんだけど没落してその悔しさからの巻き返しが今のモチベーションになっているんだについて。
ときには、レストランで話の続きを聞くことになって出向くと、社長がキャバ嬢を連れてきていてなんだかわからない会話になってしまったり。どう考えたってこの女性は愛人じゃないかという人と酒席を共にすることになったり。
夫婦経営者それぞれ別々で話を聞くと2人の間にピューピュー吹くすきま風というか木枯らしの冷気に震え、思わず襟を立ててしまったり。私立中学受験に合格した息子さんをなぜか紹介されておめでとうとは言ったけど2人の間に共通の話題なんか当然なく困ってしまってワンワンワワンだったり。
オフィスのキッチンで手料理を振舞われながら、日本の未来を嘆く長〜い憂国談義にヘトヘトになったり。まだ誰にも話していない会社の将来ビジョンを小声で打ち明けられたり。
とにかく、必要な情報も、まったく必要じゃない情報どころか、あまり聞きたくない情報まで、ドバ〜っと話してくれた社長のエピソードはまだまだたくさんあります。
加えて、人の採用なので、社員の声を発信したり現場感を伝えたりするために、中間管理職や社員にも話を聞くこともあるんです。すると経営と現場、企業戦略や事業方針と社員の意識やアクションの間の「ズレ」とか「乖離」とか「反発」とか「不協和」とか「不共有」とかに気づくんです。
社長も人間ですから、言っている内容に矛盾や分かりにくさもあって、第三者としてそのあたりにも気づきやすいんです。
というわけで、そんな若い頃からの経験で「会社ってのはバラバラになるもんだ」が、僕の会社観になり、現在の当社のキャッチフレーズになっているわけです。キャッチに続くコピーはこんなです。
社長、組織がバラバラですね。
これでは部門ではなく、部族の集まりです。
経営理念と、事業戦略と、将来ビジョンと、成長計画と、ブランディング&マーケティング策と、PR表現と、社員のマネジメント方針と、行動指針と、育成や採用方法が、バラバラ。
こういうのを、『アイデンティティ(CI)の崩壊』と呼びます。
経営理念は、顧客不在で優位点も不明。戦略もわかりにくい。必然的に、部課長の理念と戦略理解も、モヤモヤとぼやけている。だから、部課長から部下のタスクへの落とし込みや浸透も、あいまい。社員のがんばりは場当たり的で、空回り。組織に統治感も、戦略性も、役割ごとの連動感もなく、バラバラ。
こういうのを、『社員の戦略連動の分断』と呼びます。
いろんな意識変革や共有、方針浸透に取り組んでいるが、いずれも経営テーマへのひもづきが弱い。しかも連続的なプランはなく、どれも一瞬の打ち上げ花火。すべての取り組みが点のように、バラバラ。
こういうのを、『変革創造の細切れ化』と呼びます。
ハッテンボールは、
すべてを一本の軸でつなぎ、
連動性の高いCI戦略を確立します。
ご相談ください。
はいそうです。宣伝でした!たまにはこのコラムから仕事来ないかなあ。