第164回 「オンライン資格確認導入でトラブルが増えた」
お医者さん
うーん、オンライン資格確認が入ってきてから、システム関係のトラブルが多くなったな。
お医者さん
システムっていうのはより簡単で便利にするためのものなのに……これじゃ本末転倒じゃないか。
国がどんどん仕組みを変えていっていますからね。いちいち対応しなきゃいけない現場は大変ですよね。
絹川
お医者さん
そうなんだよ。そうでなくても忙しいのに、やれマイナンバーカードだ、やれオンライン資格確認だとひっきりなしだ。……って、あなたは一体?
初めまして。ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
お医者さん
ふうん。ということは他の医師と話す機会も多いんだろうね。
ええ。そして先ほど先生が仰っていたような悩みを、皆さん同じようにお持ちです。オンライン資格確認と電子カルテが連携しているので、ネットワーク構成が複雑になっちゃうんですよね。
絹川
お医者さん
ああ、確かにそんなようなことを業者が言っていた。それだけトラブル対応も難しくなってるとかなんとか。
オンライン資格確認の専用端末がある場合は、仮にトラブルが起こっても他への影響はあまりないんですけどね。
絹川
お医者さん
いや、そう簡単に言うけど、専用端末を入れられるほどの余裕なんてないよ。うちみたいな小さなクリニックは、電子カルテ端末との相乗り構成でやるのがやっとさ。
実際、そういうクリニックの方が多いと思いますよ。ただ現実として、電カルと連携した分やはりトラブル時の影響範囲は広くなっちゃいますよね。
絹川
お医者さん
まぁ、それはしょうがないんだろうけど。まったく、電カルすらなかった時代が懐かしいな。むしろあの頃の方がいろいろスムーズだった気がするよ。
とはいえ、政府は完全に電カルのデータを共有する方向で動いちゃってますからね。各クリニックの電子カルテを繋いでデータを吸い上げる流れは止まらないでしょう。
絹川
お医者さん
まったく……年寄りには理解できないよ。本来医療は生身のものなのに、どんどん機械化されて自動化されて……
お察しします。とはいえ実際にシステムトラブルが起きてしまえば、スタッフだけじゃなく患者さんに迷惑がかかってしまうかもしれませんし。
絹川
お医者さん
もちろんそれはわかっているよ。だから何とか対応しようとしてるわけでさ。
これだけシステム化が進むと、トラブルはどうしても起きてきます。むしろ「トラブルが起こる前提」で保守していく必要があるんです。そのあたりについて、システム業者としっかり話し合っておくことをオススメします。
絹川
お医者さん
そうだね。トラブル時の対処法をスタッフに周知する必要もあるだろうし。……まったく、苦労が絶えないよ。
保険診療を行っている以上、国に従うしかありませんもんね。もっとも、自由診療という方法でそこから自由になっているクリニックも増えてきましたけど。
絹川
お医者さん
自由診療か……確かにそれなら国に振り回されることもない、か。
いきなり自由診療に全振りするのはリスクが高いので、物販をしたりワークショップを開催したりと、小さなことから始めてみるのもいいかもしれませんね。
絹川
お医者さん
なるほどねぇ。収益の大きさに関わらず、そういう意識を持つのが大事なのかもしれない。
仰るとおりだと思います。実際、保険医療制度は今後もどんどん変わっていくでしょう。それにただ従うだけでなく、ある程度の「選択肢」を得ておくことが重要なのかなと。
絹川
お医者さん
我々医者も、「自分たちで考えて稼ぐ」ということを考える時代になってきたんだな。自由診療の件、ちょっと真面目に検討してみるよ。
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。